道教委 6年度教育行政執行方針 持続可能な社会の創り手を
(道・道教委 2024-02-26付)

 21日の1定道議会で道教委の倉本博史教育長が説明した6年度教育行政執行方針はつぎのとおり(22日付1面既報)。

【教育行政に臨む基本姿勢】

 新型コロナウイルス感染症は、3年以上にわたり人々の生活に大きな影響を与えてきた。教育の分野では、子どもたちの学びを止めないため、デジタル化を加速しながら学びの在り方の変容に対応してきた。

 そして今、地球規模で進む気候変動やDX・GXの進展など社会が加速度的に変化し、従来の知識や経験のみでは将来を見通すことが難しい時代を迎えている。

 こうした中で、私たちは、予測できない未来に向けて自ら社会を創り出していく「持続可能な社会の創り手」を育むため、本道の未来を担う子どもたち一人ひとりの力を最大限引き出す、令和の時代に即した教育行政を推進していく。

【重点政策の展開】

▼子どもたち一人一人の可能性を引き出す教育の推進

 つぎに6年度において、重点的に取り組む三つの柱の政策を申し上げる。

 一つ目は、子どもたち一人ひとりの可能性を引き出す教育の推進である。

 急激に変化する時代の中で、子どもたち一人ひとりが自分の良さや可能性を認識し、様々な社会的変化を乗り越えることができる資質・能力を育成することが重要である。

 このため、まず、幼児教育においては、保育者への研修や助言を通じ、幼児期の子どもの発達の特性や個々の課題に応じた質の高い教育の提供を目指すとともに、幼児教育施設と小学校が連携・接続した取組の充実等、幼児期からの学びの基盤づくりを推進する。

 義務教育においては、ICTを活用した「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な推進に向けて、家庭・地域と連携した望ましい学習・生活習慣の確立や少人数学級編制の拡大、小学校高学年における教科担任制の推進のほか、コミュニケーション能力を重視した英語教育の充実や外国人児童生徒等への支援に取り組む。

 また、アイヌの人たちの歴史・文化や、北方領土をはじめ各地域の歴史等を学ぶふるさと教育を推進するとともに、規範意識や協調性、思いやりや生命を尊重する心を育む道徳教育の充実を図るほか、貧困や気候変動といった世界共通の課題解決目標であるSDGsの達成に向け、教科等横断的な教育活動を推進していく。

 さらに、子どもたちの体力・運動能力の向上を図るため、教員の資質向上や運動習慣の定着に向けた取組を推進するとともに、多様化する健康課題へ対応するための養護教諭等の資質向上、望ましい食習慣の定着等健康教育の充実を図る。

 高校教育においては、小・中学校での学習の成果や課題を十分踏まえながら、ICTの活用や主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善、実社会での問題発見・解決に生かしていくための教科等横断的な学習の充実を図る。

 また、自治体や産業界と連携した専門高校での実践的な職業教育や、インターンシップによるキャリア教育の充実、交換留学や姉妹提携地域との交流を通したグローバル人材の育成、学校の活性化や特色ある教育活動への支援等を行うクラウドファンディング事業に取り組む。

 特別支援教育においては、子どもたちの自立や社会参加に向けて、教員の専門性の向上に努め、子ども一人ひとりの教育的ニーズに応じた校内支援体制の充実を図るほか、適切な就学先決定に向けた教育相談や就労に向けたキャリア教育の充実、保護者の負担軽減も含めた医療的ケア実施体制の整備に取り組む。

▼学びの機会を保障し質を高める環境の確立

 二つ目は、学びの機会を保障し質を高める環境の確立である。

 様々なニーズを有する子どもたちを誰一人取り残さない多様な学びの機会を確保するとともに、全ての人々が経済や地域の状況等にかかわらず質の高い教育を受けることのできる環境の整備が重要である。

 このため、これからの学校教育の基盤的ツールであるICTのさらなる活用に向け、教員のICT活用指導力の向上やオンライン学習への支援に取り組むとともに、学習端末の計画的な更新、十分な通信環境の確保、ICT支援員を活用した学校DXの推進、遠隔授業配信センターの充実等、小学校から高校まで12年間を見通した学習の基盤となる情報活用能力のさらなる育成に取り組む。

 いじめや不登校への対応については、いじめの未然防止に向けて望ましい人間関係を築く力を育むとともに、積極的な認知による「いじめ見逃しゼロ」の取組等の徹底を図るほか、不登校児童生徒への多様で適切な教育機会の確保を図るなど、全ての児童生徒が安心して学べる魅力ある学校づくりに取り組む。

 スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーの派遣や、子ども相談支援センターの24時間対応、1人1台端末の活用等、教育相談体制の充実を図る。

 教員の確保については、大学等と連携し、大学生を対象に、教員に求められる資質・能力等を啓発する出前講座、特色ある学校教育活動を体験する「草の根教育実習」、高校生に教職の魅力を伝える「教員養成セミナー」を実施するほか、教育実習生受け入れ校への支援、ペーパーティーチャー等を対象とした説明会の開催、教員採用選考検査の受検資格の拡大等、教員志望者の裾野を広げる取組を進める。

 また、教員の資質向上については、教員育成指標に基づき整備した北海道教職員研修計画を着実に実施しつつ、オンラインの活用や多様なコンテンツの提供、大学等との連携によって、教員研修の充実を図る。

 さらに、教職員の不祥事根絶に向け、校内体制の整備や意識啓発に取り組む不祥事防止対策官の学校への派遣等により教職員一人ひとりに強い自覚を促す指導を徹底するとともに、コンプライアンスの確立に向けた校内研修等に取り組む。

 学校における働き方改革については、教職員の働き方改革の意識を高める取組や保護者・地域等との連携・協働を推進するほか、教員業務支援員の配置や弁護士による法律相談に加え、副校長・教頭マネジメント支援員を試行的に配置するなど、学校サポート体制の充実に努め、学校が生き生きとやりがいを持って働くことができる魅力ある職場となるよう取り組む。

 また、子どもたちの教育環境が経済的理由に左右されることのないよう、高校の授業料や学校給食費などの負担軽減、地域における学習支援の充実、ヤングケアラーと考えられる子どもたちを適切な支援につなげる体制の構築等を進める。

 さらに、様々な理由により義務教育を修了していない方々等の教育機会を確保するため、夜間中学の在り方の検討や、ICTを活用し年齢や居住地域等にとらわれない学び直しの支援に取り組む。

▼地域と歩む持続可能な教育の実現

 三つ目は、地域と歩む持続可能な教育の実現です。

 持続可能な地域づくりに当たっては、学校と地域がパートナーとして、地域への愛着・誇りを持ち、仕事を通じて経済的に自立し、地域の課題解決に主体的に参画する人材を育成することが重要である。

 このため、自治体や企業・団体等と学校が連携するとともに、探究型の学習活動を支援するコーディネート機能を担う人材を活用した地学協働体制の構築や、公民館等社会教育機能を生かした地域課題解決に向けた取組を進める。

 また、部活動の地域移行に向けては、中学校を対象に、休日の部活動から段階的に推進するため、アドバイザーの派遣による市町村支援やサポーターバンクの充実、道立施設の活用検討のほか、関係部署等と連携し、地域の実情に応じた持続可能なスポーツ・文化芸術環境の整備に取り組む。

 さらに、高校へのコミュニティ・スクール導入促進のほか、将来を見据えた高校づくりを地域と共に考える仕組みを構築するなど、生徒の学習ニーズや地方創生の観点に立った教育機能の維持向上を図る高校づくりを進める。

 子どもたちの安全・安心の確保について、地震や津波等自然災害から命を守る防災教育や、被災地域に対する教育面での支援体制の充実に取り組むほか、学校の暑さ対策について、ソフトおよびハードの対策を効果的に行うなど、引き続き、子どもたちの快適な教育環境の整備に取り組む。

 生涯学習の推進については、道民の皆さまが豊かな人生を送ることができるよう、道民カレッジを通じて、学びの機会の充実に取り組むほか、障がいのある方々の生涯学習の充実、家庭・地域・学校等における読書活動の推進と環境整備に取り組む。

 文化の振興については、文化財の保存・活用を支援するとともに、歴史・文化への理解と北海道への愛着の醸成を図るため、文化財の魅力発信の充実、縄文遺跡群を活用した出前授業や世界遺産子どもサミットを実施する。

 また、道立美術館において、美術品購入サポーター制度の導入やアートギャラリー北海道を通じた道内の美術館とのネットワーク充実等の機能強化、デジタル技術を活用した鑑賞機会の充実のほか、近代美術館のリニューアルに向けた構想の策定に取り組む。

【むすび】

 これからの社会を展望した時、人の英知や創造力を最大限に引き出し、一人ひとりの人生を幸せで豊かなものにしていくために、教育は極めて重要な役割を有している。

 道教委としては、教育の大きな柱である学校教育と社会教育が、分野横断的に相互の連携を深め、全ての人が自分らしさを大切にしながら自己肯定感を持って、分かる喜び・学ぶ楽しさを実感し、生涯にわたって学び続ける意欲を持てる環境を実現することができるよう、本道教育の発展に全力で取り組む。

(道・道教委 2024-02-26付)

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