CS活用の学校運営重点 「学校地域の相互貢献」最多 道特長調査 教育資源活用で成果(関係団体 2024-03-01付)
道特別支援学校長会(須見千慶会長)は「特別支援学校におけるコミュニティ・スクールを活用した学校運営の活性化に関する調査研究」をまとめた。道内特別支援学校の校長がコミュニティ・スクール(CS)導入で最も重視していることは「学校、地域の相互貢献」が44%で最も多く、CSを実施する上では、職員の理解度や関心の深まりに苦慮している学校が多い実態が分かった。また、学校運営協議会における熟議において「地域の教育資源の活用が図られるようになった」などの成果が見られた一方、外部人材の活用による教員の授業づくりに必要な時間の創出など、CSの取組の成果が表れるまでに一定程度の時間を要することが課題として挙がった。
平成30年度から全国で設置が始まった特別支援学校におけるCS。令和5年度には、全ての道立特別支援学校に導入され、国公立の特別支援学校においても今後の導入に向けた検討が進められている。
調査研究では、全国・道内におけるCSの取組状況を踏まえ、道内の特別支援学校の校長63人にアンケート調査を実施した。本校・分校別による回答のため、回答数は73校として集計。3年目以内と4年目以降の導入年別で調査した。
学校運営協議会を導入した経緯をみると「数年後に全ての学校に導入されるから」が73%で最多。次いで「特色ある学校づくりに必要」が59%、「保護者や地域と一体となった学校づくりに必要」が38%となった。
CS制度で各学校が重視していることについて「学校、地域の双方が互いに貢献し合うこと」が44%で最多。次いで「学校教育の質の向上」が21%、「学校運営の改善および質的向上」が18%などとなった。
CS実施上の課題をみると「職員の理解度や関心」が64%で最も多く、次いで「担当職員の負担」が52%、「事前準備」50%、「情報発信」47%などと続く。
学校運営協議会における熟議(協議)における成果では「地域の教育資源(地域人材)の活用が図られるようになった」が55%、「教育課程や授業改善、教育活動の創意工夫につながった」が36%、「特色ある学校づくりにつながった」が33%で上位を占めた。
時間創出等課題に
一方で、施設・設備、校内外の環境整備などの予算が関係してくる課題や、外部人材の活用による教員の授業づくりに必要な時間の創出、学校に対する地域の関心の高まりなど、成果が表れるまでに一定の程度時間を要することが課題として挙がった。
CS導入後の成果として「地域との連携・協働した取組が組織的になった」との声もあり、各学校で具体的な取組が進みつつある実態が明らかになった。
考察の概要はつぎのとおり(グループA=CS導入後1~3年目の56校、グループB=導入後4年目以降の10校)。
【学校運営協議会を効果的に活用した「学校運営の活性化」】
▼学校運営協議会の導入
各校の回答から「特色のある学校づくり」や「保護者や地域と一体となった学校づくり」を推進するため、学校運営協議会の設置が不可欠であるという意識が高いことが分かる。導入前の事前準備として、校長によるロードマップの提示や関係者への丁寧な説明、学校運営協議会を推進する校内組織の整備等がグループAで82%、グループBで70%の学校で行われている。
学校運営協議会を推進する校内組織の設置については「既存組織の活用」と「新規組織の編成」に分かれている状況が確認できた。
「働き方改革」や「個々の教職員の新たな取組に対する不安感の解消・CSに対する意識の向上」といった視点を持ちながら、各校の実情に応じた組織で効果的・効率的に運営することが大切であると考える。
特別支援学校の場合、CSのほかにもセンター的機能の発揮、交流・共同学習の推進、現場実習をはじめとする進路指導の充実、医療・福祉・労働といった関係機関との連携など求められる役割が多岐にわたる。
また、CSを進めるスタンスとして「今ある取組を基本に地域の協力を得られるか、持続可能なのか等の視点からゆっくりと創り上げていくことが重要」との意見が複数上げられた。
今回、導入年別に調査を行ったが、双方の回答内容に大きな差が見られなかったのは、そうしたことが反映していると推測される。「CSの在り方等に関する検討会議 最終まとめ」においても「CSは導入すればすぐに結果が出るものでは必ずしもなく、多様な関係者が不断の努力のもと、そのプロセスを共有し、時間をかけて段階的に育んでいくことも重要となる」とされており、道内各校でも、ステップを踏みながら取組を進めている現状であることが明らかになった。
また、委員の選定について「2年の任期ごとに、学校運営協議会の内容や方向性に応じて選定する」との回答が約70%と最も多く、これは各校がグランド・デザインや学校経営計画を踏まえながら学校運営協議会を推進し、その具体化を図っていくことを目指していること、加えて「特別支援学校におけるCSの地域の捉え」にも深く関係しているものと推察される。
▼学校運営の活性化
各校では「学校支援部会」における学校課題や将来のビジョンを踏まえた熟議や、学校評議員会の機能を移行した「学校評価部会」で、学校運営の活性化に向けた取組を具体的に進めていることが分かる。
特に、地域の教育資源の活用を図りながら教育課程や授業改善、教育活動の創意工夫に取り組みながら地域と共に特色のある学校づくりに取り組んでいる。
一方、自校や地域における課題を明確にし、協働で課題解決に向けた取組を進める中で、試行錯誤している実態も見られた。
協議内容を具体化するために分掌業務として位置付けながら推進している学校が多かったが、教職員全体への周知や理解・関心の高まりという点ではグループAもグループBも高くはなかった。この点については、CS通信の発行などを行い、校内外の関係者と情報を共有していこうと取り組んでいることが分かる。
反対に校数は少ないものの、教職員のCSへの関心が高まったという学校の回答から①熟議が教職員の関心や日頃から課題として感じている内容である(町との連携・防災等)②会議内容の報告を受けて教職員が、授業との関連や協議委員への質問を考えるようになった③年度の中間評価で、協議会に対する期待が上げられるようになった④熟議の内容を踏まえ、教育活動の充実が図られた―などの成果があり、教職員が共通の意識を持ちながら学校運営協議会を運営し、学校経営の活性化を図るためには、学校運営協議会の意義や自校CSのビジョンの共有に加え、学校や地域の課題や成果、課題解決に向けた方策についての理解を深めるために、CS通信等のツールと学校運営協議会後の報告、意見交換といった時間の両面から教職員へ働きかけることが必要と考える。
道特別支援学校長会(須見千慶会長)の「特別支援学校におけるコミュニティ・スクールを活用した学校運営の活性化に関する調査研究」では、成果と課題を踏まえた今後の方向性の考察についてまとめている。調査では、各校で課題はあるものの、CSの意義を理解し、保護者や地域と連携・協働を深め、一体的に学校・地域づくりに取り組んでいることが明らかになった。
【学校運営協議会を効果的に活用した「地域とともにある学校づくり」】
▼学校運営協議会における「地域の定義」
各校の地域の定義・捉えに関して、特別支援学校の場合、小・中学校、高校と比べると通学区域が広域で関係する地域の状況も多様であることから調査前から興味深かった点である。
回答で最も多かったのはグループA、グループB共に「主に学校所在地」であったが、各障がい種別の意見からはいわゆるエリア・コミュニティに加え、テーマ・コミュニティが重要であるとの考えが複数あげられ、今後のCSの方向性を支える一つの柱と考える。
自校所在地を「核」としながら、解決すべき課題やテーマ、地域と共に育てたい児童生徒の姿を学校と地域が共有し、それぞれが役割を担い、協働で取り組んで行くと考えることで、そのために必要な地域や人、関係機関との連携の在り方が明確となっていき、必要なユニットが構成されるものと思われる。
▼地域と共にある学校づくり
▽熟議の結果、実現や改善が図られた取組
回答結果から、学校運営協議会での熟議の内容を踏まえ、地域の教育資源の活用を図りながら、教育課程の見直しや授業改善、教育活動の創意工夫、特色ある学校づくりにつながったといった成果が見られた。
一方で施設・設備、校内外の環境整備といった予算が関係してくる課題や外部人材の活用による教員の授業づくりに必要な時間の創出等、働き方改革に関係する課題、学校に対する地域の関心の高まり、学校課題の共有と目指す子ども像に向けた取組への課題等、成果が現れるまでには一定程度時間がかかる課題があるということを再確認する結果となった。
▽学校評価の熟議(学校評価部会)による教育活動の見直し
73%が学校評価の熟議を実施、うちグループBでは、10校全てで実施している。一方、学校評価について熟議をしている学校においても46%が「教育活動の見直し」には至っていないとの結果となった。各校共に学校運営協議会での熟議に基づき教育活動の充実に向けた取組を行っている。
教職員の参画意識、組織的な推進、校内外に対する発信の弱さ等が自校CSの課題とされており、こうした背景から学校運営協議会の実施に向けた計画、実施後の評価について、学校全体での実施に至っていないことが推察される。
また、学校運営協議会の具体的な取組をみると、新たな学校運営の基本方針や方策の創造、児童生徒指導上の課題解決、地域との連携の深まりといった成果も多く見られた。その中には、学校運営協議会で新たに創造された取組のほか、これまで各校で積み上げてきた実践の発展型としての取組もあったと推察する。
CSの活動全てを一から構築するのではなく、現在までの自校の取組を基礎としながらそれを整理し、発展・充実へつなげていくという視点も必要と考える。
【学校運営協議会の充実に向けた今後の方向性】
▼基本方針と連動した北海道の特別支援教育の在り方
インクルーシブ教育システムに向けたビジョンを道教委と共有しながら本制度を進めて行くことの重要性、高校における学校運営協議会設置の促進等の意見が上げられた。
今回新たに策定された道教委の「特別支援教育に関する基本方針(5~9年度)」では、高校における学びの場の充実が挙げられ、高校においても障がいのある生徒が一定程度入学していることを前提とし、学校全体で特別支援教育に取り組む体制の構築や個別の教育支援計画、個別の指導計画の作成・活用の推進・研修の内容および機会の充実、関係機関との情報共有や連携強化に取り組むとされている。
地域の生徒を地域一体となって育てていくためにも、高校における学校運営協議会の設置促進・CSの充実が必要と考える。
▼学校運営協議会を活用した特色のある学校づくり、地域づくり
「ビジョンを共有し、学校運営に地域の声を積極的に生かし、地域と一体となって特色ある学校づくりを行うために良い制度」「学校と地域が協働し、子どもを育てるという考えを共有」「児童生徒の自立と社会参加のために、地域と連動し“社会に開かれた教育課程”の実施が必要。地域と組織的に連携するには、CSの活用が有効」といった非常に肯定的で前向きな意見が複数上がっていた。
一方で学校運営協議会を学校全体で計画的かつ組織的に運営していくこと、エリア・コミュニティとテーマ・コミュニティの両方の視点を持った学校運営協議会の在り方、学校と地域が貢献し合える取組等、段階を経て充実させていくことが必要と考える。
▼学校運営協議会に係る、制度設計
▽特別支援学校における学校運営協議会の基本的な方向性
「CSの在り方検討会議 最終まとめ」によると、CS導入促進上の課題や運営上の課題の多くは、CSの趣旨や目的の理解が不十分な点に起因し、課題解決に当たっては、CSに関わる全ての関係者が、相互の信頼関係の中で、CSを正しく理解することが重要であるとされている。
特別支援学校ならではの特徴(広域性、認知・理解度等)とも相まって、運営上の課題となっていることが調査で分かった。道教委と学校の両輪で、CSに対する理解啓発をさらに進めて行く必要がある。
また、各校では長期的なビジョンを持ちながら学校運営協議会の充実に取り組んでいるが、つぎのように各校の取組を支える仕組みが必要ではないかとの意見も上げられた。
・市町村教委の働きかけ
・地域連携コーディネーターが関係者をつなぐ
・道立学校としての特色ある協議会の在り方
・地域とのつながりが比較的少ない都市部のCSの在り方
・相談等、各校をバックアップするシステム
・生涯学習の学びの確保
・アドバイザーの派遣
・社協担当等、学校外の人物が中心となり、学校と地域の間に立って、展開
▽予算・事務手続き・勤務対応について
円滑に協議会の運営を継続していくために、いくつかの条件整備について検討する必要がある。
・本校と分校のある学校は、委員が半分ずつ。ある程度の人数の確保が必要
・学校施設の利用・開放の際の制約(事務手続きや必要経費)や地域に出向くための予算措置、休日対応等の勤務上の措置等が緩和・拡大することが望ましい
【おわりに】
学校運営協議会を効果的に活用した「学校運営の活性化」「地域とともにある学校づくり」について論じてきた。学校と地域が一体となり、子どもたちの「生きる力」を協働で育むCSとなるよう、研究を活用していただければ幸いである。
(関係団体 2024-03-01付)
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