探究チャレンジ・ジャパン③ 小樽水産
(学校 2024-03-01付)

探究チャレンジ表
調査地点ごとの採集記録(クリックすると拡大表示されます)

 小樽水産高校(亀山喜明校長)は、集めた情報を比較、分類、関連付けしたり、表やグラフにまとめたりして整理・分析し、論理的に概ね正しく結論を導いている学校が選ばれる「北海道大学賞」を受賞した。同校は、小樽市内の身近な水辺を対象にニホンザリガニの生息状況を調査。調査した12の地点のうち、3地点でニホンザリガニの生息が確認され、住宅街に近接する小川では生息密度は低く、市郊外の渓流では、極めて高密度で生息していた調査結果を発表した。

 発表概要はつぎのとおり。

北海道大学賞 小樽水産高(亀山喜明校長)

◆探究テーマ「小樽のニホンザリガニを調べてみた」

▼発表要旨

 市内の身近な水辺を対象にニホンザリガニの生息状況を調査した。本研究によって市内ではニホンザリガニの生息環境が失われつつある可能性が示唆され、加えて新たな生息場所や、盛んに再生産が行われている貴重な生息場所が確認された。

▼背景と目的

 ニホンザリガニは、北日本の清冷な水辺に生息する小型甲殻類である。

 本種は環境省レッドリストの絶滅危惧Ⅱ類に指定されており、個体数の減少が懸念されている。

 そこで本研究では、小樽市内の身近な水辺を対象に、ニホンザリガニの現在の生息状況を明らかにすることを目的として行われた。

▼方法

 5年の6月から10月まで、市内の計12地点で調査を行った。採集は素手とたも網で行い、CPUE(単位努力当たりの捕獲数)を用いて生息密度の比較を行った。採集したニホンザリガニは、測定、雌雄判別および写真撮影を行った後、元の生息場所に戻した。

▼結果

 12の調査地点のうち、3地点でニホンザリガニの生息が確認された。調査地点CとLは住宅街に近接する小川で、生息密度は低かった。

 調査地点Dは小樽市郊外の渓流で、CPUE21・0(個体/人・時間)と極めて高密度で生息していた。

▼考察

 過去に採集記録のある8調査地点のうち、本研究で生息が確認できなかった地点が6地点あった。各地点の状況から、市内でもニホンザリガニの生息環境が失われつつある可能性が示唆される。

 調査地点Dは高密度でニホンザリガニが生息し、さらに当歳個体も数多く採集された。このことから、本調査地点では再生産が順調に行われていることが示唆され、保全の重要度が極めて高いと判断される。

 調査地点Lは本研究で初めて生息が確認された。このような生息地は本調査地点以外にも多くあると考えられる。

▼今後の課題

▽調査精度の向上

 地図にはない小さな水辺も網羅し、また方形枠や環境DNAを用いた手法を導入する。

▽研究成果の発信と地域への還元

 地域住民や地元の小中学生への講演を行い、また博物館等と連携して保護活動を展開していく。

▼参考文献

▽「日本動物大百科7無脊椎動物」武田正倫、平凡社、1997

▽「ザリガニの博物誌-里川学入門」川井唯史、東海大学出版会、2007

▽「小樽百景~ニホンザリガニがすむ小樽のまち―キタル、オタル。」https://otaru.jp/blog/592

研究成果を披露する生徒

この記事の他の写真

探究チャレンジ図
調査地点Dで採集された個体の体長組成(クリックすると拡大表示されます)

(学校 2024-03-01付)

その他の記事( 学校)

CSオブザーバーにOBの高校生 子の思いを学校運営に 帯広大空学園 朝学習が発展

大空学園・CS高校生参加  【帯広発】帯広市立大空学園義務教育学校(村松正仁校長)は、コミュニティ・スクール(CS)のオブザーバーに同校出身の高校生3人を迎えている。子どもの率直な思いを学校運営に反映しようと企画した...

(2024-03-19)  全て読む

モビリティとまちづくりWS 地域の未来像実現へ 自動運転の模擬体験等 帯広大空学園

大空学園モビリティワークショップ  【帯広発】帯広市立大空学園義務教育学校(村松正仁校長)は5年度、専門機関と連携して“モビリティ”とまちづくりをかけ合わせたワークショップを展開した。2月下旬、電動トラックや貨客混載バスなど...

(2024-03-11)  全て読む

最新技術 熱心に学ぶ 札幌工科で建設業出前講座

札幌工科建設業出前講座 札幌工科専門学校(三上敬司校長)で2月27日、建設業に関する出前講座が開かれた。主催は札幌建設業協会(岩田圭剛会長)。勇建設=(札幌、坂昭弘社長)工事部技術管理室の助野聡明室長がCIM等3...

(2024-03-08)  全て読む

道内4盲学校で魔法のプロジェクト ICTで共同演奏に挑戦 リズム合わせ力強い音色を

魔法のプロジェクト合同授業  障がいのある子どもたちの学習をICT機器を使って支援する「魔法のプロジェクト」の合同授業が5日、道内の盲学校4校で開かれた。中学部の生徒13人をオンラインでつなぎ、自分たちで考えたオリジナ...

(2024-03-07)  全て読む

総日数50日 現行継続 道教大附属函館小と函館中 休業管理規則案 冷房検討も

 【函館発】道教育大学附属函館小学校と附属函館中学校の休業管理規則案がまとまった。いずれも総日数50日を維持し、現行の夏季25日、冬季25日を継続する方向で調整に入った。エアコン設置について...

(2024-03-06)  全て読む

マイスター・ハイスクール運営委 自走可能な取組実施へ 厚岸翔洋高 成果など確認

厚岸翔洋・マイスターハイスクール運営委員会  【釧路発】道教委は14日、厚岸翔洋高校(山本十三校長)で第3回マイスター・ハイスクール運営委員会を開いた。事業2年目を迎え実践研究の成果や課題を報告したほか、事業終了後を見据えた自走可能な...

(2024-02-29)  全て読む

花火で学校祭に彩りを 津別高に津別建協が寄付金

津別高津別建設業協会寄付金贈呈  【網走発】津別高校(太田徹校長)で22日、地元の津別建設業協会(清水靖則会長)から同校生徒会への寄付金の贈呈式が行われた。清水会長は「学校祭の花火など生徒会の活動に充ててほしい」と話し、生...

(2024-02-28)  全て読む

勇気と感動を道民に センバツ出場で知事らに決意表明 北海高、別海高の野球部

春の甲子園知事訪問北海高  第96回選抜高校野球大会に北海道代表として出場する北海高校(秋山秀司校長)野球部と別海高校(織井恒校長)野球部が26日、道庁本庁舎を訪れ、鈴木直道知事と道教委の倉本博史教育長に出場報告と決...

(2024-02-28)  全て読む

日高道への寄せ書き再現 新冠小に記念ポスター寄贈

 【苫小牧発】新冠町立新冠小学校(下川徳久校長)は20日、「日高自動車道新冠町大狩部改良工事」を施工する岩田地崎建設㈱(札幌)とケイセイマサキ建設㈱(新冠)から日高道学習体験会記念ポスターを...

(2024-02-28)  全て読む

滝上濁川小 閉校式 夢、愛、力いっぱい 80年の伝統に思い寄せ

滝上町立濁川小閉校式  【網走発】滝上町立濁川小学校(藤田泰昭校長)の閉校式が18日、同校で執り行われた〓写真〓。在校生11人をはじめ、教職員、来賓らを合わせて約190人が出席。藤田校長は、80年の長きにわたって...

(2024-02-26)  全て読む