【リポート】汎用クラウドで校務改善 活用模索する学校現場 先進校の実践 校種越え共有
(道・道教委 2024-03-13付)

 クラウドを活用した情報共有や自動集約、職員会議のペーパーレス化―。GIGAスクール導入前には見られなかった校務環境が広がりつつある。先進校が先頭に立って実践を進め、校種を越えて実践を共有。そこには活用の在り方を模索する教職員の姿がある。業務改善や経費縮減などの効果が表れる一方、教職員の意識の格差や過密なセキュリティーなどデジタル化の壁も浮き彫りとなっている。

 文部科学省は5年3月に「GIGAスクール構想の下での校務の情報化の在り方に関する専門家会議」の提言をまとめ、次世代の校務DXの方向性を提起。パブリッククラウド活用を前提とした校務環境の積極的な活用を図る方針を示している。チャットやカレンダーなど汎用クラウドツール機能は職員室以外の場で瞬時の情報共有や共同編集が可能に。欠席連絡や休暇処理を自動集約し、職員室の大型提示装置で表示している学校も散見される。

 文科省のリーディングDXスクールの指定を受けた旭川市立緑が丘中学校は進路情報をオンライン化。昨年8月にグーグルサイトを活用した「進路Web」を立ち上げ、生徒・保護者・学校間の情報共有や申し込みの集約を行っている。

 同じく指定校の帯広柏葉高校は2月から「職員ポータルサイト」を開設。朝の日報、欠席連絡一覧、休暇処理、教室予約などを集約化し、教職員の業務効率化を図っている。

 これらの取組は教育委員会主催の研修会において関係者で共有され、ICT担当の教員が試行錯誤を続けながら活用を広げている。ペーパーレス化による経費削減の効果も大きく、用紙・料金の料金を月19万円節約できると試算する学校もある。

 一方、デジタル化は教職員間で温度差もあり「紙の方が読みやすい」「マーカーで書き込める方が良い」という声も上がる。動画や写真、英語の音声データを使用する授業が増加し、ストレージの保存先を確保する問題も。誰でも共有・編集できる利点がある一方、重要なデータを誤って消去する可能性もあり、個人・共有のデータを区別する意識が重要になっている。

 管理職が率先してタブレットを活用し、学校全体でデジタル化を推進する札幌月寒高校の古屋順一副校長は「これからは否応なくデータをクラウド化する時代。教職員の意識を変えていくには“使わないともったいない”と思える面白い研修や具体的な好事例を周知することが必要」と語る。

 教育の現場は民間・行政と異なり、過密な情報セキュリティーがデジタル化を阻む壁の一つになっている。児童生徒に関わる個人情報の流出を防ぐため現行の校務支援システムは外部と遮断する閉鎖系ネットワークで運用されており、校務処理の多くが職員室に限定され、汎用クラウドとの併用に煩雑さが生じている。クラウドを積極的に活用する学校がある一方、前提となるセキュリティポリシーがクラウドに対応していない自治体もある。

 文科省は、セキュリティ対策を十分講じた上で、汎用クラウドツールとの連携を可能にする次世代の校務DXを構想。8年度以降に段階的に導入する見通しを示している。校務・学習データの連携、電子決済、災害時にも対応できるロケーションフリーの勤務環境が可能になるが、実現にはセキュリティ対策を講じる自治体の財政支援の拡充が不可欠となる。

 学校の働き方改革が喫緊の課題となる中、勤務時間との兼ね合いから在宅勤務の在り方も問われており、デジタル化に向けた関係者の認識の共有や、後押しする施策の充実が求められている。

(道・道教委 2024-03-13付)

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