【リポート】函館西高 企業と共同調査 ボタン一つでトラブル回避 AIで誤解を防ぐ自動構文開発(学校 2024-04-09付)
函館西高校の生徒たち
【函館発】SNSのメッセージなどでやりとりされる文末の句点や絵文字のない文章。デジタルデバイスでのやりとりが一般化された現代、淡泊な印象を与えるメッセージに違和感を覚える若者も少なくない。函館西高校(古御堂徹校長)の生徒は現在、ネットトラブルを未然に防ぐ機能の開発に向けて、企業と共同でユニークなソリューション調査に取り組んでいる。
「〇〇君素敵だよね!」「〇〇君、カッコ良くない」―。SNSで誤解を招くやりとりの一例だ。受信者にとって、顔や表情の見えない状態では、句読点の打ち方次第で相手の誤解を招く恐れがある。一方、発信者側は「急ぎの連絡の際などは簡単な文章を送信して済ませたい」と考えることもあるだろう。
昨年10月、当時3年生の選択科目「国語表現」と探究の教科等横断的学習で行われた4人一組のグループワーク。あるグループが「世代や場面にとらわれず、感情の分かるコミュニケーションを取る方法はないか」と提起した。きっかけは高校生の間で流行しているテキストコミュニケーションアプリ「Simeji」。スマートフォンにインストールすると、AI機能を搭載したキーボード画面に切り替わり、入力したメッセージはボタン一つで「笑える文章」や「敬語」などに変換できる便利なコンテンツだ。
4人は課題解決に向けたアイデアとして、音声読み上げ機能で感情を表現する機能の追加を考案。早速、アプリを提供しているバイドゥ㈱(東京)に提案したところ、企業側から「若者が効果的かつ適切なコミュニケーションができる支援をしたい」と返信。昨年11月から共同調査の取組が決まった。
生徒たちは、リサーチの一環として、SNSで全国を対象としたアンケートを実施。500件近い回答の中でも、特に目を引いたのはSNSトラブルにつながった具体例に関する項目。「言い方が冷たく感じられる」が最も多く7割、「あったら便利だと思うSNS機能」については「入力したテキストを誤解が生じないように正す機能」が8割と最多だった。
企業との打ち合わせでは「生徒と市場の需要が概ね一致している」と分析。当初検討していた音声機能の案は「棒読みになってしまう可能性がある」との意見が出たため、喜怒哀楽の絵文字で表したい感情を選択し、自動的に構文に直す機能案に変わった。
授業開始から約半年が経過。現在は卒業した3年生に代わり活動に興味を持った新3年生4人が自主探究として活動を引き継いだ。
国語表現を担当する教員は「社会で役立つスキルの定着によって、生徒がスピード感を持って行動することができたのでは」と分析する。
授業では、アイデア出しのフレームワークも導入。設定したテーマを未来や過去、人やものとのつながりなどの視点で約100の案を出す。「異なる視点を持つ生徒同士でグループを編成したことも創造力を補うことができた要因では」と語る。
一方、今回のデータ集計では年代に偏りが見られる課題も見えたため、現在は同社のリリースを通して再調査している。
吉岡伯琉さん(新3年)は「顧問の先生に“部活を休みます”と連絡したら、“了解”とだけ返信が来て、少し怖かった経験がある。実際は怒っていなかったので、世代によって感覚も違うと思った」と話す。「友人に不快感を与えないAI構文が開発されれば、社会のトラブルも減る。企業とのプロジェクトがうまくいけばうれしい」と意気込む。
バイドゥのプロダクト部長を務める古谷由宇氏は「テキストコミュニケーションに対する課題に取り組むべきと感じていたところに、生徒がきっかけを提案してくれた」と賛同。生徒と同社は今後、具体的な機能設計について協議を進めていく方針だ。
(学校 2024-04-09付)
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