空知管内6年度教育推進の重点 ふるさと愛する人育む 「そ・ら・ち」キーワードに(道・道教委 2024-04-19付)
金田敦史局長
【岩見沢発】空知教育局の金田敦史局長は11日、空知合同庁舎で開催した管内市町教育委員会教育長会議において6年度管内教育推進の重点を説明した。前年度に引き続き「ふるさと空知を愛する人を育む」をスローガンに掲げ五つの施策の重点を設定。「そ・ら・ち」という管内の名称に対応するものとして「そだつ」「心をひらく」「ちかづき つながる」をキーワードにそれぞれの地域の特性や強み、良さを十分に生かした創意工夫ある取組を推進していく意向を示した。
教育推進の重点はつぎのとおり。
【はじめに】
空知局では、道の「教育推進計画」に基づき、これまで様々な機会を通じて聞かせていただいた、教育長の皆さまや学校管理職、先生方の声や、各種調査などで把握した管内の実情を踏まえて、前年度に引き続き「ふるさと空知を愛する人を育む」ことをスローガンに掲げ、このスローガンを実現するための五つの施策の重点を設定した。管内全ての教育関係者の方々と、この五つの重点を共通の目標として共有するとともに、皆さまには、それぞれの地域の特性や強み、良さを十分に生かした創意工夫ある取組を推進し、子どもたちはもとより、保護者も、先生方も、地域の皆さまも「“そだち”“心をひらき合い”“ちかづき つながる”空知」を目指したいと考えている。
▼新しい時代に必要となる資質・能力の育成について
各市町・各学校においても、最も大切に捉えていただき、目指す子どもの姿や育成を目指す資質・能力を明確にし、その実現に向けた取組が進められていると承知しており、空知局としても、皆さま方と共有したい重点の1番目に位置付けたところ。
皆さまも承知のとおり、これからの教育には、子どもたちが変化の激しい予測困難な時代を生き抜いていくことができるよう「知識および技能」や「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」といった資質・能力を偏りなく育成し、様々な場面で身に付けた資質・能力を活用・発揮させていくことが求められている。
こうしたことを踏まえ、管内の状況に目を向けると、前年度の「全国学力・学習状況調査」の学校質問紙調査の結果では「教育課程のPDCAサイクルを確立している学校」「授業でICTを活用している学校」の割合は、小・中学校共に全国平均を上回るなど、教育長の皆さまのリーダーシップのもと、それぞれの地域や学校で、全ての子どもたちの可能性を引き出す教育の実現に向けた取組が進められている。
こうしたことから、示したとおり、本年度、特に大切にしたい取組については、管内の成果や強みを十分に生かすという観点から「検証改善サイクルによる教育課程の評価・改善」「ICTを活用した学びの充実」とした。
「全国学力・学習状況調査の結果等、客観的な指標に基づく、教育課程の改善」「ICT機器を活用した、個別最適で協働的な学びの充実」に向けて、これまでの取組の充実・発展を進めていくよう、お願いする。
▼いじめ防止の取組の充実について
いじめの問題への対応については、前年度、管内の小・中学校のいじめの認知件数が大幅に増加。このことについては、各学校で、きめ細かく子どもたちを見守り、子どもたちの心に寄り添いながら、初期段階のものも含めて、解消に向けた丁寧な対応をしていただいていると受け止めており、教育委員会の指導や先生方の尽力に、厚く感謝申し上げる。
これまでの道や全国の重大ないじめ事案をあらためて振り返ると、いじめが、いじめを受けた子どもの教育を受ける権利を著しく侵害し、健全な成長、人格の形成に極めて大きな影響を及ぼし、生命にも重大な危険を生じさせる恐れがあることは明らか。
こうしたことから、本年度、特に大切にしたい取組については、いじめの問題について既に取組が進められていても「未然防止・見逃しゼロ・組織的な対応」は不断に求められるという観点から「いじめ未然防止の取組の充実」「いじめを見逃さず深刻化させない組織的な対応の推進」とした。
「いじめを未然に防止するため、“いじめは絶対に許さない”という意識を持ち、望ましい人間関係を築いていこうとする子どもたちの育成」「いじめを見逃さず、早期解消に向け組織的に対応する学校づくり」に向けて、空知局を含め、学校・家庭・地域・行政の連携・協働を進めていただくよう、お願いする。
▼不登校児童生徒への支援の充実について
不登校児童生徒は、前年度、管内の小・中学校において増加傾向にあり、子どもたちが安心して、安全に生き生きと学校生活を送ることができるようにすることはもとより、学校に通うことができていない子どもたちの学びを保障していく取組の充実は、喫緊の課題であると認識している。
このことについては「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」においても「全ての子どもが安心して教育を受けられるようにすること」「不登校の子どもの休養の必要性を踏まえて学習支援を進めること」と定められており、教育行政として法令に基づき、皆さま方と連携しながら、子どもたちへの支援に尽力していく所存。
こうしたことから、本年度、特に大切にしたい取組については、学校に登校するという結果のみを目標にせず、全ての子どもが安心して学ぶことができる環境づくりの観点から「学びを止めない学習機会を保障する取組の推進」「関係機関と連携したつながりを切らない支援」とした。
「全ての子どもたちの主体性が尊重された心理的安全性の下で学ぶことができる学校づくり」「地域の教育支援センターや適応指導教室、民間施設、ICTを活用した教育機会の確保」に向けて、人間関係や学業不振、生活の乱れなど、子どもたち一人ひとりの心情や背景に寄り添った取組を進めてくよう、お願いする。
▼地域と学校の連携・協働の推進について
前年度の各市町の検証結果をみると「子どもたちの学びに関わる行政、学校、地域、企業等の連携」「コミュニティ・スクールを活用した学校づくり・地域づくり」に取り組んでいると回答した学校の割合や「地域と学校の連携・協働が最重要課題」と回答した学校の割合が高い傾向にある。
また、市町によっては、子どもたちや地域住民がまちづくりの課題や部活動の地域移行について熟議を重ねているとも伺っている。「ふるさと空知を愛する人を育む」ため、地域と学校が一体となって取組を進めていただいていることに、あらためて感謝申し上げる。
こうしたことから、本年度、特に大切にしたい取組については、既に構築されている管内の連携・協働体制を一層充実させる視点から「行政、学校、地域住民、企業等の連携による子どもが主体的に学び表現する場の充実」「コミュニティ・スクール等の活用による地域社会が一体となった学校づくり・地域づくりの推進」とした。
皆さまにおいては、地域や学校の実情に応じて、例えば「地域の世代間で学び合う“縦のつながり”、他の地域から学ぶ“横のつながり”の場」「地域の良さだけではなく、地域を支える・守ることの大切さ、難しさ、意義について考える機会」を設けるなど、子どもたちが地域の人との触れ合いを通して、地域を担い、支える人としての成長を促す取組を進めていくよう、お願いする。
▼働き方改革の推進について
管内では、前年度と比べて教職員の時間外在校等時間が縮減傾向にあるなど、各教育委員会や各学校の創意工夫ある取組に感謝申し上げる。
一方で「小学校より中学校で時間外在校等時間が長い」「教頭の時間外在校等時間が突出して長い」など、これまでの課題が継続している状況も認められるところ。
これまで説明した四つの重点を推進していくためには、教育の直接の担い手である先生方の子どもと向き合う時間や自らの学びを深めるための時間をしっかりと確保していく取組が不可欠であり、私どもとしても「質の高い学び」と「持続可能な学校」を実現することができるよう、今まで以上に、実効性のある取組を進めていきたいと考えている。
各地域において「学校における働き方改革北海道アクション・プラン(第2期)」で示された「個の気付き」「チームの対話」等について、学校や教員の視座に立った様々な取組が進められてきたと承知しているが、本年3月に策定された第3期のアクション・プランにおいては「改革を自分事に」「自走するチーム」「地域との協働」が、あらためて重視する視点として盛り込まれた。
こうしたことから、本年度、特に大切にしたい取組については、働き方改革の目的を教育活動の充実に加え、教職員一人ひとりのウェルビーイングの向上と捉える観点から「働き方改革の意識を高める取組の推進」「未来につながる教育活動を目指すチームづくり」とした。
皆さまにおいては「道の学校における働き方改革手引“Road”」等を参考としながら「ICTを活用した校務の効率化」「真に必要な教育活動につながる教育課程の編成・実施」「教頭の業務改善や支援」などに引き続き取組していくとともに、実効性が認められる取組については情報発信や成果の普及を進めていくなど、管内の働き方のニューノーマルの確立に向けて、力添えをいただくよう、お願いする。
【終わりに】
空知局としては、管内の子どもがふるさと空知に愛着と誇りを持ち、将来に向かって夢や希望を描くことができるよう、学校・家庭・地域・行政の皆さま方とのこれまで以上の連携・協働に努めるとともに、多様で豊かな教育資源の効果的な活用を図るなど、「オール空知」による、管内教育の充実に努めたいと考えているので、お願いする。
皆さまのリーダーシップによる、各地域における教育行政のますますの推進と、ふるさとを愛する子どもたちの健やかな成長を心から祈念申し上げるとともに、空知局の取組への一層の力添えをお願い申し上げる。
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(道・道教委 2024-04-19付)
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