留萌管内6年度教育推進の重点 子の可能性 最大限引き出す環境 未来創造する子の育成など3柱(道・道教委 2024-04-18付)
留萌教育局・大畑明美局長
【留萌発】留萌教育局の大畑明美局長は12日、留萌振興局合同庁舎で開催した管内公立学校長会議において本年度の管内教育推進の重点を説明した。重点的に取り組む項目として「未来を創造する子どもたちの育成」「安心・安全な教育環境の構築」「家庭・地域との協働の推進」の三つの柱を提示。児童生徒の健やかな成長を実現するため、各教育機関との連携を一層強化し、教育局機能の充実に取り組む方針を示した。
大畑局長の説明概要はつぎのとおり。
【はじめに】
前年度は「子どもたちの学びを確実に保障する環境の構築~未来の困難を乗り越え、豊かな人生を切り拓く子どもたちの育成」をテーマに、学校・家庭・地域社会が協働し、子どもの健やかな成長に向けて、家庭や地域から信頼される学校を基盤に、創意工夫ある教育活動を展開していただいた。
3年以上にわたる新型コロナウイルス感染症の影響による社会の変化に加え、地球規模で進む気候変動やDX・GXの進展など社会が加速度的に変化し、先行きが不透明で予測困難な時代が到来しつつある中、皆さまの多大な尽力によって、各学校等において、全ての子どもたちの可能性を引き出す、個別最適な学びと協働的な学びの実現に向けた教育活動が推進された。心から感謝申し上げる。
教育局では引き続き、令和の日本型学校教育の実現を目指すとともに、これまでの管内における取組の成果と課題を踏まえ、より実効性のある施策を展開するなど、各学校等の教育活動の一層の推進に向け、全力を挙げて取り組んでいく。
【本年度のテーマ設定】
6年度の管内教育推進の重点のテーマについては、昨今の情勢のほか、前年度の管内教育推進の重点における市町村教委や各学校の取組の成果や課題はもとより、学習指導要領やこれまでの「自立」と「共生」の基本理念を継承しつつ、道教育推進計画および道教委の教育行政執行方針をもとに設定した。
また、今後5年間の国の教育政策全体の方向性や目標、施策などを定めている第4次教育振興基本計画では、将来の予測が困難な時代において教育政策の進むべき方向性を示す「羅針盤」として「持続可能な社会の創り手の育成」および「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」を掲げ「幸福感(現在と将来、自分と周りの他者)」「自己実現(達成感、キャリア意識など)」などについて、教育を通じて向上させていくことが重要であると示された。
子どもたち一人ひとりが幸福や生きがいを感じられる学びを保護者や地域の人々と共につくっていくことで、学校に携わる人々のウェルビーイングが高まり、その広がりが子どもや地域を支え、さらには世代を超えて循環していくという在り方が求められている。
こうしたことから、各学校等においては、各市町村が目指す地域創生の取組と方向性を同じくして、学校、家庭、地域社会が一層協働を図り、予測できない未来に向けて自ら社会を創り出していく「持続可能な社会の創り手」を育むため、未来を担う子どもたち一人ひとりの力を最大限引き出す、令和の時代に即した教育の推進を図っていく必要がある。
このようなことを踏まえ、6年度の管内教育推進のテーマを「子どもたちの可能性を最大限に引き出す環境の構築~幸福感や達成感を高め、持続可能な社会の創り手を育む留萌教育の推進」とした。
【管内教育推進の重点について】
本テーマの実現を目指し、重点的に取り組む項目として、前年度の考え方を継承し、三つの柱を示したので、柱ごとに説明申し上げる。
▼柱Ⅰ 未来を創造する子どもたちの育成
管内においては、ICT活用などによる授業改善や学校教育全体での運動機会の充実、学校課題や個人課題に応じた校内研究・研修体制の工夫および実践など、各地域や学校の実情を踏まえた創意工夫ある取組、特別支援教育に関する計画的・継続的な校内研修の実施や、関係機関等と連携した個別の教育支援計画の作成など、特別な支援を必要とする児童生徒へのきめ細かな支援の充実に向けた取組を着実に進めていただいた。
一方で、学力の状況は依然として全国と比較して差が見られるほか、特別支援教育においては、個別の教育支援計画等の活用の充実に向けた学校間連携が必要などの課題も見られる。
これらの成果や課題を踏まえ、本年度の重点的な取組として6点示した。
1点目は、個々の興味・関心・意欲等を踏まえて、きめ細かく指導・支援することなど、1人1台端末を活用した学習活動の充実を目指すため「ICTを利活用し、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実による授業改革」とした。
2点目は、スタートカリキュラムの充実による幼小連携や、検証改善サイクルの一層の充実など、児童生徒の発達の段階に応じた系統的な教育活動の充実を図るため「幼児教育から高校教育までの学校段階間の接続を重視した教育課程の改善」とした。
3点目は、小・中学校、高校の系統的な英語教育の指導体制の充実や技能領域のバランスの取れた英語力の育成に向けた授業改善の推進を目指すため「小・中・高の系統的な学習到達目標の実現を目指した英語教育の充実」とした。
4点目は、各種調査等の結果を活用した体育・保健体育の授業改善や各学校の児童生徒の実態や特色を生かした取組の推進を目指すため「運動機会の充実など体力・運動能力向上を目指した組織的な取組の推進」とした。
5点目は、特別支援学級や通常学級など一人ひとりの障がいの状態等に応じた指導・支援の充実や個別の支援計画等を活用した関係機関との連携の促進を目指すため、多様な学びの場における幼児期から就労までの切れ目のない特別支援教育の充実」とした。
6点目は、教師自ら主体的・自律的な学びによる研究と修養に励み、他者との対話や振り返りの機会を確保した協働的な学びの実現を目指した「主体的・自律的な学び、協働的な学びを深めることができる研修の推進」とした。
これらの推進のため、教育局では「教科等の特質に応じ、ICTを効果的に利活用し、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善に係る指導助言の充実」「学校力向上に関する総合実践事業における包括的な学校改善の取組への支援」「新しいかたちの学びの授業力向上推進事業など各指定事業における授業改善の取組への支援」「各学校段階や学校段階間において育成を目指す資質・能力を明確にし、小学校から高校までの12年間を見通した検証改善サイクルの確立や異校種間推進の推進」「幼稚園と小学校の円滑な接続を見通した教育課程の編成、実施に係る指導助言や情報提供」「小・中学校における全国学力・学習状況調査や高校におけるCBA調査の結果等を踏まえた授業」「改善の取組について共通理解と必要な取組の重点化を図るEBE協議会の実施」「CAN―DOリストの作成・活用や英検ESGや英検IBAの結果等を活用した授業改善に係る指導助言や、学校種間で連携した研修の実施」「体力向上の一層の充実に向けた1校1実践等の運動機会の充実に向けた指導助言、小学校エキスパート教員や中学校スペシャリストを活用した体育科指導法研修会の実施」「教員の資質・能力の向上に向けて、児童生徒一人ひとりの障がいの状態等に応じた授業改善に係る支援や関係機関を連携した研修の実施、留萌管内特別支援連携協議会において切れ目のない一貫した支援等について協議し、特別支援教育の推進に向けた関係機関とのより一層の連携」「学校の実態を踏まえた校内研修の支援や参加者のニーズに応じた各種研修会の充実、若手教職員対象の研修会の実施」などに取り組んでいく。
▼柱Ⅱ 安心・安全な教育環境の構築
管内においては「いじめ見逃しゼロに向けた児童生徒が主体的に、心理的安全性の高い学校・学級づくりに取り組む機会等の充実」「児童生徒を取り巻く生徒指導上の諸課題に向けた方策や関係機関等との連携」「不登校児童生徒に対するきめ細かな支援や発達支持的生徒指導の取組の充実」など、子どもが安全・安心に学校生活を送ることができる学校づくりを着実に進めていただいた。
また、教職員に係る時間外在校等時間の公表や教職員の不祥事根絶に向けては、校内で不祥事防止のための意識共有を図る場を設定するなど、各学校で指導を徹底していただいている。
一方で、不登校児童生徒の増加や、さらなる働き方改革の推進のための職員一人ひとりの意識改革や不祥事根絶のための研修内容の工夫改善という課題もある。
これらの成果および課題を踏まえ、重点的な取組として6点示した。
1点目は各教科における自己肯定感の醸成や学校の教育活動全体を通じた組織的・計画的な道徳教育の一層の推進を目指すため「規範意識や協調性、思いやりや生命を尊重する心を育む道徳教育の充実」とした。
2点目は、全教職員が、いじめの積極的な認知に努め、日頃からの教職員間での情報共有や児童生徒の変化に早期に気付く取組や学校が組織的にいじめ問題に対応し、未然防止、早期発見・早期対応の取組のさらなる充実を目指すため「いじめ見逃しゼロを実現し、いじめの未然防止と早期発見・早期対応の徹底」とした。
3点目は、児童生徒の実態に応じた支援方針の明確化やICTの活用や関係機関と連携・協力による多様な教育機会の確保、関係機関との連携・協力による支援・指導の充実や、いつでもSOSを発信できる雰囲気のある学級づくり等を通じて、全ての児童生徒が安心感と充実感が得られる魅力のある学校づくりを目指すため「人間関係や仲間づくりの促進などによる不登校の未然防止・組織的な対応の徹底」とした。
4点目は、校務の効率化による事務作業の負担軽減を図るため、教育活動や業務にICTの積極的な活用を推進し、子どもたちと向き合う時間や自らの学びを深める時間を確保し、仕事の質を高め、職員一人ひとりが「変わってきた」と実感できる働き方改革を目指すため「ICTを利活用した効率的な業務遂行など働き方改革の改善が実感できる取組の推進」とした。
5点目は、服務ハンドブックや動画など校内研修に有効なコンテンツを示すことによって、教職員の法令順守の意識を一層高め、教職員による不祥事の未然防止を図り、学校への信頼を維持・向上することを目指すため「服務ハンドブック等を効果的に活用した校内研修などによる服務規律や法令順守の徹底」とした。
6点目は、学校における様々な課題に対し、教職員が協働性を発揮し、互いが信頼し合える職場環境の構築を目指すため「職員相互が信頼し合い支え合う心理的安全性を確保した職場環境の構築」とした。
これらの推進のため、教育局としては「絆づくりメッセージコンクールやどさんこ☆子ども地区会議等の実施による児童生徒が、いじめの未然防止や安心・安全な学校生活を送るために必要なことを主体的に考え、行動する機会の提供・多様性に配慮した学校・学級づくりやいじめの未然防止を目指した取組、積極的認知による早期発見・早期対応を組織で確実な実行などに係る指導助言」「不登校児童生徒への支援については、個々の学びを保障する授業づくり、学習支援や教育相談の充実、不登校児童生徒に対する支援推進事業の成果の普及、自己存在感を与え、共感的な人間関係を育成し、自己決定の場を与える教育活動の充実に向けた指導助言」などに取り組んでいく。
また、教職員に関わっては「全道、全国における働き方改革の優良事例など、先進校の取組成果の普及」「服務規律や法令順守に係る各種研修資料の提供や、校内研修の支援」などに取り組んでいく。
▼柱Ⅲ 家庭・地域との協働の推進
これまで管内では「総合的な学習(探究)の時間等において、地域の良さや可能性について子どもに気付きを与え、地域の課題に向き合う学習の実施」「地域への愛着や地域の将来を創る意識を醸成するための多様な体験活動」などを着実に進めていただいている。
また、5年度全国学力・学習状況調査の児童生徒質問紙調査では「今住んでいる地域の行事に参加していますか」という質問に対し、当てはまる、どちらかといえば当てはまると回答した児童生徒の割合が全道平均よりも約20ポイント上回る結果であった。
こうした状況を踏まえ、重点的な取組として4点示した。
1点目は、地学協働の観点から、地域の人材や企業・団体等との連携を一層深め、地域の可能性や課題を掘り起こし、探究的な学びのさらなる充実を目指すため「SDGsやゼロカーボンの実現など主体的に地域に関わり、多様な他者と協働しながら学ぶ、探究的な学習の促進」とした。
2点目は、学校運営協議会の熟議を通して地域と学校が連携・協働し、学校が抱える課題の本質と解決策について共通の目標を設定および実行性の向上を目指すため「効果的な学校運営協議会の運営などによる地域とともにある学校づくりの推進」とした。
3点目は、地域と学校の協働活動における連絡調整や情報の共有、地域住民への呼びかけができる人材の発掘や育成を目指すため「コーディネート機能を担う人材等を活用した地学協働の推進」とした。
4点目は、望ましい生活習慣の定着を図り、家庭学習や読書の推進などを通して児童生徒の学ぶ意欲を高めることを目指すため「望ましい生活習慣・学習習慣の確立に向けた学校・家庭・地域との連携の推進」とした。
これらの推進のため、教育局としては「北海道大学や留萌振興局と連携し、探究的な学びの一環として留萌管内の公立高校4校においてSDGsゼロカーボンプロジェクトの実施局独自事業であるオロロンリレーションプロジェクトにおいて、管内の地学協働の推進および持続可能な地域のために主体的な活動をする意欲を育む企画の展開」「各学校の総合的な学習(探究)の時間等における探究学習の取組の支援」「学校運営協議会の効果的な運営等に関する助言」「地域の企業等と連携した、地元産業を知る取組」「管内PTA連合会などとの連携による望ましい生活習慣等の啓発や周知、1人1台端末を活用した家庭学習に関する情報提供や指導助言」などに取り組んでいく。
【結び】
人口減少や少子高齢化の進行など、これからの社会においては、どの地域に住んでいる子どもたちであっても、最大限の可能性を引き出し、一人ひとりの人生を幸せで豊かなものにしていくために、教育は極めて重要な役割を有している。
こうしたことから、子どもたちが、自分らしさを大切にしながら自己肯定感を持ち、分かる喜び・学ぶ楽しさを実感し、生涯にわたって学び続ける意欲を持つことができる環境の実現を目指すとともに、働き方改革を進める中で、教職員の心理的安全性を確保した職場環境の構築にも配慮しながら、教育局、市町村、関係機関等と一体となりながら、教育活動を推進していく必要がある。
教育局では、管内の全ての子どもたちの健やかな成長に向け、市町村教委や学校、校長会、教頭会、関係する教育機関等との連携を一層強めながら、教育局機能の充実に努めていくので、皆さまの理解、協力をあらためてお願い申し上げ、6年度管内教育推進の重点についての説明とする。
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