根室管内6年度教育推進の重点 子の可能性引き出す教育 確かな学力育む取組の深化(道・道教委 2024-04-23付)
【釧路発】根室教育局の遠藤直俊局長は12日、根室市内の北海道北方四島交流センターニ・ホ・ロで開いた管内公立学校長会議で、6年度管内教育推進の重点を示した。テーマを「しなやかにたくましく生きる子どもの育成~子どもの可能性を引き出す教育への挑戦と覚悟」と定めた上で3項目の重点を設定。「確かな学力を育む機動的な組織体制による取組の深化」「子どもの学びを支え“地域の先生”として根室教育の発展に寄与する人材の育成」「全ての子どもが地域に根差した学びのよさを実感できる教育の充実」の3項目の充実を図るとした。
◆テーマの設定
VUCA時代の到来によって、子どもたちを取り巻く環境(社会)は、まさに先行き不透明な社会を感じながらの生活を強いられている。
テーマの「しなやか」や「たくましく生きる」は、こうした社会的背景から、どんな場面に直面しても柔軟に対応でき、夢や目標の実現に向けて挑戦し続ける強い人間であってほしいという、道が目指す教育の基本理念である「自立」と「共生」を踏まえたもの。
また、このテーマには、昨年6月に閣議決定された「教育振興基本計画」のコンセプトである「持続可能な社会の創り手の育成」「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」を踏まえ「子どもたち一人ひとりが“生きる力”を確実に身に付け、持続可能な社会の創り手として活躍できるように」という思いも込めている。
◆サブテーマ
テーマに掲げた子ども像の実現に向けては、管内における各地域で生活する子どもたちが、地域の学校で学ぶことができて心から良かったと思えるよう、地域の特性を踏まえた独自性のある教育を実現させることが重要であると捉えている。教育関係者は、常に地域と向き合い、挑戦心や責任と覚悟を持って教育活動に取り組む決意が必要であると考えており、サブテーマを「子どもの可能性を引き出す教育への挑戦と覚悟」と設定している。
◆管内教育推進の重点
【重点1「確かな学力を育む機動的な組織体制による取組の深化」】
学校教育において、子どもたち一人ひとりの可能性を引き出すためには、子どもの見取り・評価や児童生徒一人ひとりに学級集団の中で帰属意識を高め、自己肯定感を持たせる必要がある。このため、重点の一つ目を「確かな学力を育む機動的な組織体制による取組の深化」と設定。その上で①子どもの変容を即時的に評価する継続的な検証改善サイクルの確立②子ども一人ひとりの個性や多様性を認め合う支持的な風土で学びが展開される環境の整備―の2点を具体的に推進する項目として挙げる。
▼子どもの変容を即時的に評価する継続的な検証改善サイクルの確立
管内各学校において検証改善サイクルの確立に向けた取組が進み、アンケートにおいても昨年9月から1月にかけての評価値が、小学校を中心に伸びが見られるなど成果が表れている。一方で、5年度全国学力・学習状況調査質問紙調査において「授業がよく分かる」と回答する児童が増加し、中学校では全国を上回る状況であるにもかかわらず、全国の平均正答率との差が小学校で広がったり、中学校では大きく下回ったりしている状況が見られる。このため今後は、検証改善サイクルに関連する取組自体が目的化することなく、各学校の取組がより実効性のあるものになるよう推進していくことが求められる。こうした状況を踏まえ、以下の2点に係る取組の推進を求める。
▽子どもの変容を即時的に評価する継続的な検証改善サイクルの確立
▽単元等の短期的なPDCAサイクルによる教育課程の改善
▼子ども一人ひとりの個性や多様性を認め合う支持的な風土で学びが展開される環境の整備
管内各学校において児童生徒に帰属意識を高めたり自己肯定感を持たせたりする取組が進み、アンケートにおいても昨年9月から1月にかけての評価値が中学校を中心に伸びが見られるなど成果が表れている。一方で、一人ひとりの子どもを主語にした学校教育を推進するためには、他者を認め、より良い人間関係の構築に向けた学級経営・教育環境づくりが一層求められている。今後も、引き続き多様性を尊重し、協働的な学びが展開できる支持的風土の醸成を図るため以下の2点に係る取組の推進を求める。
▽ICTを有効に活用しながら個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実
▽望ましい学習・生活習慣の確立による安心して学べる学級づくり
【重点2「子どもの学びを支え“地域の先生”として根室管内の発展に寄与する人材の育成」】
学校教育において、学びの機会を保障し質を高める環境を確立できる新たな教師の学びを実現するためには、教師が自ら専門性を高めるため主体的に研修に打ち込むとともに、家庭や地域と連携しながら教育活動を推進できる人材を育成する必要がある。そのため、重点の二つ目を「子どもの学びを支え“地域の先生”として根室教育の発展に寄与する人材の育成」とし①実践的指導力や専門性の向上を図り、主体的に学び続ける教員の育成②家庭や地域と連携しながら子どもを育て、地域から信頼を得られる教員の育成―を具体的に推進する項目として挙げる。
▼実践的指導力や専門性の向上を図り、主体的に学び続ける教員の育成
管内においては、教員が実践的指導力を高め専門性を向上するための研修が計画的に進み、1月のアンケートにおける評価値が、小学校、教育委員会で高い数値にあるなど成果が見られている。今後は、ミドルリーダーの育成や教師が指導力を高めるため主体的に研修に打ち込める校内体制の一層の整備を図る必要があるため、以下の2点に係る取組の推進を求める。
▽教員一人ひとりのよさを伸ばす対話に基づく研修の奨励
▽実践的指導力や専門性の向上を実感できる組織的な校内研修
▼家庭や地域と連携しながら子どもを育て、地域から信頼を得られる教員の育成
管内においては、将来地域で活躍する子どもを育てるという観点から、子どもの教育に直接携わる教職員が地域のことを深く知り、地域ぐるみで家庭や地域住民と連携しながら子どもの成長を支える姿が見られ、アンケートにおいても義務教育学校で顕著に評価値が高くなるなど成果が表れている。今後は、各学校において教師の資質・能力の向上によって質の高い教職員集団の実現を図るとともに、そうした学校の状況を広く家庭・地域に公開するなどして、地域から一層の信頼を得る必要がある。そのため以下の2点に係る取組の推進を求める。
▽グランドデザインなどによる家庭や地域との「目指す子ども像」の共有
▽家庭の理解に基づく、1人1台端末を活用した授業と関連を図った家庭学習の工夫
【重点3「全ての子どもが地域に根差した学びのよさを実感できる教育の充実」】
学校教育において、子どもたち一人ひとりが地域の構成員としてふるさとに愛着や誇りを持つためには、学校区として連携の図られた教育や地域で学ぶ良さを実感できる教育を展開する必要がある。このため、重点の三つ目を「全ての子どもが地域に根差した学びのよさを実感できる教育の充実」と設定。①目指す子ども像を共有した異校種間の連携・一貫教育の推進②地域の教育資源を活用した教育活動の整備、ふるさと教育の推進―の2点を具体的に推進する項目として位置付けた。
▼目指す子ども像を共有した異校種間の連携・一貫教育の推進
管内においては、異校種間での授業を通した児童生徒の交流が進み、アンケートにおいても教育委員会で高い数値を維持するとともに、昨年9月から1月にかけての評価値の伸びが、特に小学校において大きく見られるなど成果が表れている。一方で、子どもたちの学びに対する意欲や主体的な学びの姿勢が、学年が上がるにつれて低下する状況が見られることから、今後は、幼保小連携、小中連携、中高連携等によって、系統的な指導を推進する必要がある。そのため以下の2点に係る取組の推進を求める。
▽地域で育てる子どもの姿の異校種間での共有
▽異校種において育ってきた力の理解に基づく授業の工夫
▼地域の教育資源を活用した教育活動の整備、ふるさと教育の推進
管内においては、身近な地域の自然環境や歴史、伝統、文化、産業等について理解を深めるための授業が展開され、アンケートにおいても高い数値となっており、特に昨年9月から1月にかけての評価値の伸びが義務教育学校で顕著に見られるなど成果が出ている。今後は、子どもたち一人ひとりに地域の構成員としてふるさとへの愛着や誇りを育むとともに、学校教育と社会教育の連携によって、地域の将来を担う人材や地域に貢献できる人材を育成を目指す。そのため以下の2点に係る取組の推進を求める。
▽家庭や地域の協力を得ながら実施する探究的な学習の推進
▽コミュニティ・スクールの推進による地域の教育資源の共有
◆共通重点事項
それぞれの重点の具現化に向けて特に考慮していただきたい視点を「共通重点事項」と位置付ける。共通重点事項と定めた3事項は各学校種でも緊要な経営課題であることから、主体的な取組の推進を求める。
▽主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改革
真の授業観の転換を図ることを目的にICTを有効に活用し、教師が個々の子どもの学びを把握しつつ、学びの主導権を子どもたちに委ねることによって、子どもたちが自らの学びを自分事として捉え、自発的に他者と関わりながら学びを深めていく学習活動などの充実。
▽子ども一人ひとりの教育的ニーズに応じた特別支援教育の充実
ICTの活用等による障がいの状態等に応じた指導の工夫や就学支援、学びの場の変更等に係る進学指導、キャリア教育、進路指導等の充実。
▽家庭・地域・関係機関と連携した学校の安全・安心の保障
前年度改訂された生徒指導提要に基づき、日常的に危機管理マニュアル等の改善を図るなど、各学校における危機管理意識の向上。
◆おわりに
今回設定した重点については、各学校が教育目標の実現に向けて主体性を発揮し、教育の推進を図ることができる要素を示している。
地域で育つ子どもが、その地域での学びを通して成長し、社会の変化に対応し、生涯にわたって生き抜く力を確実に身に付けることができるよう学校経営を推進していく必要がある。
教育局では、義務教育指導監や指導主事、社会教育主事による学校訪問や各種研修事業を通して、各学校の自走に向けた支援に努めていく。
また、管内の子ども一人ひとりのウェルビーイングの実現に向けて、関係機関とこれまで以上に連携を密にしながら取り組んでいくため、一層の理解と協力を求める。
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根室教育局長・遠藤直俊
(道・道教委 2024-04-23付)
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