スーパーバイザー斉藤さんに聞く SCに求められる役割は いじめ重大事態防止へ札幌市
(札幌市 2024-05-07付)

スクールカウンセラーインタビュー
斉藤さん

 3年に札幌市立中学校で発生したいじめ重大事態を受け、本年度から再発防止に向けた取組が本格化する。中でも、市いじめの防止等のための基本的な方針で、学校いじめ対策組織の構成員にスクールカウンセラー(SC)などを加えることが必須化。小学校におけるSCの配置時間が拡充されるなど、その重要性が一層高まっている。市のSCスーパーバイザーを務める斉藤京子さんに、SCに求められる役割、今後の方針などについて話を聞いた。

 斉藤さんは、SCとして10年以上の経験を持ち、現在市内の小学校2校、中学校1校などを担当する。

 児童生徒間のトラブルは様々な学校で見られるが、児童生徒同士で自然に解消していることもあれば、仲良く見えても被害者が継続的に嫌な思いをしていることもあるという。「身近な先生でも認知しにくい面がある」と対応の難しさを指摘する。

 過日改定された市いじめの防止等のための基本的な方針で、学校いじめ対策組織における定例会議の月1回開催、構成員に養護教諭、SC、スクールソーシャルワーカーを加えることが必須化された。

 児童生徒に関する綿密な情報共有を通して、いじめの認知漏れや見逃しの防止、早期解決を期待する。「心理学の専門家として、被害者や加害者を見立てた上で、どのような支援や対応が必要か提案していきたい」との考えを示す。

◆傍観者へ働きかけ意識の変容を

 いじめ対応に当たっては、被害者や加害者だけではなく「傍観者へのアプローチも考えていきたい」と強調。「被害者にSOSを表出する重要性やSOSの出し方を伝えたとしても“心配をかけたくない”などと思い詰めてしまう子がいる。被害者に頑張ってもらうよりは、傍観者に声を上げてもらうことが大切」と説く。

 児童生徒に伝えたいことは、いじめが与える心身への影響、いじめの行為によっては犯罪に当たる可能性があることなど。「いじめは良くないもの、許してはいけないものだと理解してもらい、子どもたちが自分の頭で考え、行動を変えていくよう促していきたい」と展望を示す。

◆児童相談対応や心理教育充実へ

 小学校については、本年度からSCの配置時間が1校当たり年69時間から140時間に拡充された。「これまでは、保護者面談や教員へのコンサルテーションで時間が埋まってしまうことが多く、児童の相談に対応したり触れ合ったりする時間が確保しにくいこともあった」と振り返る。

 今後は拡充された時間を生かして「児童の相談枠を休み時間などに設定して対応できるようにしたい」と話す。また「教室を訪問して児童の困り感などを把握し、有効な支援について先生方に伝える活動をしていきたい」と期待する。「児童に“SCは話しやすそう”“ちょっと相談してみようかな”などと身近に感じてもらえるようにしたい」と意欲を示す。

 さらに、児童への心理教育にも力を入れる方針だ。「発達段階に合わせてゲーム性を取り入れるなどして、楽しいと思ってもらえるようにしたい」と話す。

◆チーム学校で子の見守りを

 学校との連携深化についても期待する。現時点でも「問題や悩みを抱える生徒がいたら、担任教諭だけで抱え込むことなく、学校全体で見守っていこうという雰囲気がある」と感じているという。「先生が対応していく中でカウンセリングが必要なケースがあれば、SCの存在を子どもや保護者に紹介してくれる」と感謝する。

 学校や地域の実情によってSCに求められる役割は多岐にわたる。「学校の職員とコミュニケーションを取り、SCとして求められているものは何かということをよく考えて行動していくことが大切」と力を込める。

(札幌市 2024-05-07付)

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