元校長の“学校アップデート!” №5 避難訓練の実効性を高めるには?
(札幌市 2024-05-01付)

 グラウンドへ避難する時、本部設置という名目で教頭先生が真っ先にグラウンドに出て(避難して)いませんか。船が沈没するような事態では、真っ先に避難する船長はいません。教頭先生は、放送での指示や関係機関との連絡などで職員室にとどまっている時間が必要なので、グラウンドの本部設置は教務主任が担当すると良いです。

 避難訓練には、つぎの三つのねらいがあります。

①子どもが緊急時の避難の仕方を知る

②教職員が緊急時の対応の仕方を知り、危機管理能力を高める

③管理職が的確な指示を出して教職員と子どもを動かすとともに、避難の仕方を検証し、実効性の高い安全体制を構築する

 指導部(行事部や学級活動部)が避難訓練を所管している学校が多いのですが、②③のねらいを達成するためには学校安全委員会(特別委員会)が所管することが望ましいと考えます。指導部が所管すると「子どもにとっての避難訓練」のみになってしまい、成果と課題の取りまとめも遅くなり実効性が高まりません。

 冬の避難訓練で事前に外靴を教室に用意し、グラウンドに避難したりしていませんか。冬、実際の避難では、教室に外靴はないですし、耐震補強された校舎からグラウンドに避難する必要もないのです。

 ただし、津波の心配がある場合を除きます。予告なしに地震や火事が起こるので、避難訓練は予告なしで実施すると良いです。「予告なしで実施すると子どもたちがパニックになって危ない」と言う方がいますが、予告なしの訓練を通して「放送をしっかり聞いて、先生の指示を守って避難すれば安全に避難できる」という安心感を積み上げ、非常時に落ち着いて行動できる子どもを育んでいくことが大切です。

 学校が道路で囲われていて住宅と校地が隣接していないのに「近隣の住宅から火災発生、校舎に燃え移る危険性がある」という想定で避難訓練を実施していることがあります。校内で火災が発生することがあるとすれば、給食室・家庭科室・理科室の3ヵ所です。

 平岸西小では①地震によって家庭科室から火災発生(防火戸通過)②休み時間に給食室から火災発生(職員の配置は決めない)③地震発生→体育館集合(安否確認のため)④不審者侵入⑤積雪時に理科室から火災発生(防火戸通過)―の年5回実施していました。

 積雪時でなければ、体育館の出入り口や非常階段から上靴のままグラウンドに避難することが可能ですが、積雪時は玄関で外靴に履き替える必要があります。火災が発生した場合、すぐに校舎内に戻ることはなく、外で過ごす時間が長くなり足元から冷える可能性があるため、避難する時間がかかっても外靴に履き替えた方が良いのです。

 火災発生場所や時期(積雪時は玄関で外靴に履き替える)によって、避難経路は異なります。理科室から火災発生なのに、理科室前を通って避難することはできません。そこで、火災発生場所と夏季・冬季に応じた避難経路図を作成することが必要です。

北原徹也 (北海道特別活動研究会顧問、元札幌市立平岸西小学校長)

(札幌市 2024-05-01付)

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