募集停止案発表で南茅部高 地域の教育資源継承を 未来支える人材育成へ議論が急務
(道・道教委 2024-07-03付)

南茅部高校教育継承に向け
縄文文化の魅力を園児が楽しめるような活動を展開する生徒たち

 【函館発】世界遺産の縄文遺跡や日本三大昆布の一つがある函館市の南茅部地区。地域唯一の高校、南茅部高校の募集停止案を受け「地域資源を活用した教育資源をどのように引き継ぐか」を模索する必要性に迫られている。旧合併4町の学校統廃合が進む中、積み重ねたノウハウの継承や地域の未来を支える人材の育成に向けた議論を加速させる必要がある。

 道教委の7~9年度公立高校配置計画案発表から一夜明けた6月5日、同校縄文クラブの生徒14人は、認定こども園の園児たちにデジタルで作成した縄文紙芝居を見せた。渡島総合振興局「高校生PRサポーター事業」を通して学んだ縄文遺跡や文化の知識を分かりやすく伝えようと、土器の模様を粘土にかたどる体験や狩猟ゲームを展開。優しく声をかけながら、園児たちの活動を支えた。

 世界遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」やコンブ産地の漁港など豊富な地域資源に囲まれる同校。これまで縄文文化やコンブの魅力発信をテーマに、地域に根差した探究活動を進めてきた。コンブ漁が最盛期を迎える7、8月には、家業を手伝う生徒の体調面などを考慮し、始業期間を遅らせる「逆サマータイム」を導入するなど、地域の実情を踏まえた特色ある教育を推進する。一方で、近年では4年度に近隣の臼尻中学校と尾札部中学校が統合するなど、地域人材の流出が加速している。

 認定こども園の保育士は、同校の募集停止の報道を受け「複雑な気持ち。高校に進学した子どもたちは園児の頃から知っている。今後、交流の機会がなくなってしまうのかと思うと寂しい」と肩を落とす。

 同校に通う笹口拳さん(3年)は臼尻中の卒業生。「母校が相次いで閉校してしまうのは寂しい。地域ならではの制度がある高校は少ない。ここでしかできない経験を誇りに思い、最後の高校生活を楽しみたい」と前を向く。

 6日に開かれた学校運営協議会。委員からは、複雑な心境を吐露する声があふれた。一方で「募集停止となっても、一丸となって地域の将来に向けた人材育成に力を尽くしたい」と、先を見据えた意見も上がった。

 同校を主体に縄文文化を継承・活用した教育を推進する渡島教育局の独自事業「渡島フロンティア人材育成事業」は、ことしが最終年度。渡島局はこれまでの実践を普及するため、事業を振興局や自治体に移行することも視野に入れる。定期的なイベントによって市内の小中学生や高校生が南茅部地区に来る機会を増やす考えだ。

 南茅部高の三浦信一校長は「募集停止案が出された中で南茅部地区の学びの継続・人材育成をつないでいくかを皆さんと考えたい。市教委、道教委と連携していく必要がある」と訴える。

 全国より10年早く進行していると言われる本道の人口減少への対応は、どの地域も課題に挙がっており、教育現場においても例外ではない。学校が積み上げてきた地域資源をどのように引き継ぐべきか。校種や高校、自治体の垣根を越えて考える必要がある。

(道・道教委 2024-07-03付)

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