道高校長協会等が文教施策要望 冷却効果の高い空調を 教頭確保に向けた待遇改善も(道・道教委 2024-07-22付)
道高校長協会(宮澤一会長)、道高校教頭・副校長会(成田豪会長)、道公立学校事務長会(鈴木貴之会長)は、道教委に対して7年度文教施策に関する要望書を提出した。夏の暑さ対策に向けて、冷却効果の高い空調設備の設置や電気容量の適切な確保に向けた施設改修に係る予算措置を要望。教頭候補者確保に向けて、待遇改善や特殊事情による勤務地への配慮なども求めた。
要望内容は前年度に引き続き①教育に係る制度および施設・設備の課題②学校の運営費等③教職員関係―の大きく3点。
各重点要望をみると①では、働き方改革を進めるため、部活動指導員の待遇を改善し、人数・時間を拡充することや、道単費での財源確保を要望。また、教員の負担軽減のため、スクールカウンセラー(SC)やスクールソーシャルワーカー(SSW)の配置拡充の推進、学習指導員の恒常的配置などを求めた。
教育の情報化に向けては、校内の情報システム管理・セキュリティー対策や機器の専門的スキルを有するICT支援員の配置、メンテナンス等の外部委託やデジタル採点の導入などによって学校の過重負担の軽減を要望。
指導用端末の1人1台の継続配布、機器の更新やメンテナンスに係る経費の予算化、校内LANアクセスポイント増設などICT教育に対応する環境整備を求めた。
夏の暑さ対策では、普通教室や職員室等に限定した簡易型の空調設備にとどまらず、冷却効果の高い空調設備の設置に向けた予算措置を求めたほか、各学校の実態を踏まえ、電気容量の適切な確保に向けた施設改修に係る予算措置を要望した。
②では、適正で円滑な学校運営のため、学校運営費の増額を図るとともに、学校・学科の実態や特色に即した教育活動の予算措置に配慮するよう要望。生徒の安全・安心な学校生活を維持、向上するための安定的な予算措置を求めた。
③では、個別最適な学びや協働的な学びのための学校改善、研究指定校事業の取組の充実などに積極的に取り組むことができるよう、国の教職員加配に加え、道独自の加配など、各学校の実情に応じた弾力的な運用と拡充を要望した。
管理職に係る人事について、減少している教頭候補者を確保し、教頭未配置校をつくらないよう、待遇改善や特殊事情による勤務地への配慮を要望。また、6間口に満たない複数の大学科を有する学校などに、教頭の複数配置やその学科専任教頭を配置するなど、各学校の実情に応じた具体的かつ実効性のある方策の実施を求めた。
7年度文教施策に関する要望はつぎのとおり。
【教育に係る制度および施設・設備の課題】
▼学校における働き方改革「北海道アクション・プラン」(第3期)―重点
「北海道アクション・プラン」に基づく働き方改革を進めるために、部活動指導員については配置する部活動を増やしても、各部活動の指導時間を減少させることなく、人数・時間を拡充することを引き続き国へ要望するとともに、道単費での財源確保を要望する。
また、チーム学校の実現と複雑多様化する課題への適切な対応、教員の負担軽減のため、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置拡充をさらに推進することを要望する。併せて、学習指導員については、新型コロナウイルス感染症対策交付金を活用した配置時より、感染症収束で減少していることから、コロナ禍前以上の人員の恒常的配置や学校を支援する人材の配置を要望する。
▼教育の情報化のための環境整備―重点
校内の情報システムの管理やセキュリティー対策、機器のメンテナンスなどを担う専門的スキルを有するJCT支援員の配置、メンテナンス等の外部委託やデジタル採点の導入などによって、過重となっている学校負担の軽減を要望する。
また、GIGAスクール構想に伴う4年度入学生からの生徒1人1台端末(BYOD)の導入を踏まえ、指導用端末の1人1台の継続配布、機器の更新やメンテナンスに係る経費の予算化および校内LANアクセスポイント増設(体育館、全ての特別教室)など、ICT教育に対応できる環境整備を要望する。
さらに、道立学校共有ファイルストレージについては、その設置目的を踏まえつつ新たな負担とならないよう要望する。
▼夏の暑さに対応するための環境整備―重点
生徒および教職員の安全で安心な教育環境を確保するとともに、夏季における学習効率を高める観点から、普通教室や職員室等に限定した簡易型の空調設備にとどまらず、冷却効果の高い空調設備の設置に向けた予算措置を早急に行うよう要望する。
また、各学校の実態を踏まえ、電気容量の適切な確保に向けた施設の改修に係る予算措置を早急に行うよう要望する。
冷却効果の高い空調設備の設置については、その見通し等をきめ細かに情報提供するなどして、学校運営に支障が生じないよう要望する。
▼統合型校務支援システムの充実
新たな統合型校務支援システムについて、教職員の業務負担を軽減し、データの有効活用に資するよう、学校現場の課題やニーズを適切に把握し、常にバージョンアップを進めるよう要望する。併せて、生徒指導要録の様式改訂等、教育効果の向上に向け、さらなる改善が図られたシステムとなるよう要望する。
▼学校事務の改善―重点
道立学校運営支援室および教職員事務課の業務が学校との緊密な連携のもと円滑に行われ、より効率的な学校事務が進められるように要望する。
また、学校における事務改善の効果について、早急に検証を行い、学校の業務温と実情に応じた人員配匿や業務改善を要望する。さらに、人材育成専門官の配置拡充を要望する。
▼特別支援教育の推進
高校における特別支援教育を充実させるため、特別支援教育支援員の拡充や通級による指導の実施が必要な学校には、専門的な知識・技能を有する教員の加配や研修会の設定など、指導体制の充実を図ることを要望する。
▼学校図書館の充実
生徒の学びの拠点としての学校図書館の充実を図るため「図書館担当事務職員」が図書業務に従事できる体制の整備や、道独自の加配による図書館業務を担当する職員の配置を要望する。
▼定通教育の充実
定時制通信制高校については、教育条件の充実に向けた施策を推進することを要望する。
特に、通信制については、協力校の小規模化が進行する中、協力校体制の維持・向上に向け、面接指導における遠隔システムの活用の検討や協力校配置の見直しを図ることを要望する。
また、実施校の養護教諭の定数配置については、国による定数改善を待たずに道独自での定数配置を要望する。併せて、各協力校の実情に合った地方指導員の配置、面接指導講師、養護教諭の確保に十分配慮することを要望する。
定時制については、在籍する生徒の多様化が進む状況を踏まえ、入学者が定員近くまで増加している学校における教員定数の増員について検討することを要望する。
▼施設・設備の整備―重点
老朽化の著しい校舎および寄宿舎の整備を、計画的かつ着実に進めることを要望する。特に、小規模校の校舎の改修や、学校施設における生徒等の安全に係る危険個所の補修等については早急に対応することを強く要望する。
また、社会の変化や産業の動向に伴う法改正等、産業教育に対する時代の要請に応えることができるよう、実習用コンピューターや各種産業教育実習装置を含めた専門教育・職業教育に関する施設・設備については、早急に予算措置することを要望する。
▼AEDの配置状況の検証および新設
AEDの配置状況について、生命に関わる事態に迅速に対応できる体制が整っているか検証し、改善に努めることを要望する。特に産振棟やほ場等、校舎から離れて授業が行われている実態を踏まえた現場へ、AEDを設置することを要望する。
【学校の運営費等について】
▼学校運営費の増額および配分―重点
適正かつ円滑な学校運営のため、学校運営費の増額を図るとともに、学校・学科の実態や特色に即した教育活動の予算措置に配慮することを要望する。
また、生徒の安全・安心な学校生活を維持、向上するための安定的な予算措置を要望する。
▼普通旅費および研修旅費の確保
指示や伝達を主たる目的とした講義等については、遠隔型が効率的であるが、講師が受講者の考えなどを聞き出しながら研修を進める協議等を中心とした研究協議およびグループワーク等については、集合型が効果的である。特に採用校長や昇任教頭研修については、学校経営・運営における課題の解決策を共有する場であることから集合型研修実施のための予算確保を要望する。
また「北海道における令和型教員研修の追究」に資するため、教職員の研修旅費、新規学卒者求人確保対策費(旅費)等を引き続き確保することを要望する。
▼修学旅行引率旅費等
貸し切りバスなどの各種利用料金の大幅な値上がりや、地域の交通事情を踏まえた予算を確保することを要望する。
また、配分基準教員数の激変緩和措置を継続するための予算を確保することや、特別な配慮が必要な生徒の引率に係る教員の増員など、引き読き学校事情に応じて対応することを要望する。
▼公費負担による口座振替
学校徴収金や団体会計については、公費に準じた取り扱いになっていることから、金銭事故防止および学校事務の効率化の観点からも、引き続き公費負担による口座振替を実施することを要望する。
▼道高校奨学会奨学金の支給方式
道高校奨学会奨学金については、自己申請制度を導入し、直接、奨学会から個人へ支給する方式を取り入れるなど、関係機関で検討し、過重となっている学校事務の負担を軽減することを要望する。
【教職員関係】―重点
▼職員加配の弾力的な運用と拡充
個別最適な学びや協働的な学びのための学校改善、研究指定校事業の取組の充実、学習指導・生徒指導等の質の向上、特別支援教育への対応、働き方改革の推進などに積極的に取り組むことのできるよう、国の教職員加配に加え、道独自の加配など、各学校の実情に応じた弾力的な運用と拡充を図ることを要望する。
▼講師時間数増と配当時数の弾力化
生徒の実態に応じて多様な選択教科・科目を設定するため、国の研究事業等、学校の実情に十分配慮して講師時間数を増やすとともに、3間口以下の学校についても、間口数や学校の実情に応じた講師時間数の配当を図ることを要望する。
▼外部講師等の確保
グローバル化への対応や、外国語教育および総合学科における教育活動の充実のため、民間非常勤講師の時間数確保を要望する。また、ALTの配置を含む外国人講師を拡大することを要望する。
▼教職員の人事―重点
人事異動要綱・実施要領について、一部改正後の実施状況を検証し、都市部における長年勤務の解消や、アンバランスな都市部と郡部の年齢構成の改善を図ることを要望する。
また、定年年齢の引き上げに伴う人事の状況について早急に検証し、適切な配置となるよう要望する。
▼行政職員に係る人事
行政職員については、業務を円滑に遂行するとともに、十分に相互けん制を働かせることができるよう、定数改善を要望する。
また、事務主任昇任者の確保に向けた効果的な方策を講じながら、事務主任を適切に配置することを要望する。
▼管理職に係る人事―重点
▽減少している教頭の候補者を確保し、教頭未配置校をつくらないために、待遇改善や特殊事情による勤務地への配慮を要望する。また、見通しを持った特例任用の配慮を希望する。さらに、6間口に満たなくても複数の大学科を有する学校などに、教頭の複数配置や、その学科専任の教頭の配置など、各学校の実情に応じた具体的かつ実効性のある方策を早急に実施することを要望する
▽副校長の配置については、学校組織運営体制の一層の充実を図る観点から、支部長校をはじめ大学科複数配置校など、学校の実情に応じて、加配として配置することを要望する
▼主幹教諭配置に係る講師時間数の配分
主幹教諭の職務を円滑に遂行するため、授業担当時間数を軽減できるよう、講師時間数を配分することを要望する。
▼正規採用者の確保―重点
▽教員希望者の減少や採用登録辞退者の増加を踏まえ、高い資質・能力を有する優れた人材を確保するため、待遇の改善や複数回にわたる選考検査の設定を図るなど、より効果的な正規採用者確保のための方策を講じることを要望する。また、期限付教諭や年度途中の産休・育休等の代替教員の配置について、欠員の生じることのないよう適切に人材を確保することを要望する
▽7年度から始まる大学入学共通テストにおいて、新たに教科「情報」が出題教科として予定されているなど、情報教育の比重が高くなっていることから、情報の免許所有者の採用を増やすとともに、地域間格差が生じぬようバランス良く配置されることを要望する
▽職業学科の実習を担当する実習助手の採用について、専門性(知識・技術・技能)を有する者の確保に引き続き十分配慮するとともに、採用に当たっては特別選考の検討や、専門性の維持向上のための研修を設定されることを要望する
▼教科「看護」「福祉」「芸術」「家庭」「情報」「水産」の教員配置に係る人事
教科「看護」および「福祉」「芸術」「家庭」「情報」「水産」の教員配置については、地域や学校の実情を考慮の上、教員の確保、積極的な任用、他校との兼務のための条件整備および特別免許状制度の活用など、特段の方策を講じることを要望する。特に、同一校で同一学科に複数欠員が生じている学科には、早急の教員配置対策が必要であり、各種手当の増設を検討するなど、任用のインセンティブとなる具体的な施策の立案および実施を強く要望する。
▼暫定再任用制度
暫定再任用制度の導入に当たっては、北海道特有の状況を勘案し、道独自の予算措置によって、へき地手当、寒冷地手当等を支給することを要望する。
▼舎監等の待遇改善
寄宿舎を有する学校教職員の業務が過重であることから、働き方改革の観点を踏まえて、舎監の増員もしくは寄宿舎指導員の配置等、加配の措置を要望する。
▼公宅の改築・修繕等
老朽化した公宅の改築や修繕の一層の促進を図るとともに、地域の実情に応じて改築・改修年限の短縮措置を講じることを要望する。併せて、今後も入居が見通せない老朽化公宅の迅速な解体などを含め、特に郡部の住環境については、民間住宅の借り上げ等も検討するなど、早急に改善することを要望する。
(道・道教委 2024-07-22付)
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