多面的に考える授業　附属札幌中　夏季研究大会　３年道徳　責任を持つこと

（札幌市 2024-07-31付）

　道教育大学附属札幌中学校（萬谷隆一校長）は２６日、同校で６年度夏季教育研究大会を開催した。研究の目的「“自他”を往還し、批判的・創造的に学ぶ生徒の育成」のもと、８授業を公開。３年生道徳では、視点を変えて再考させるなど「責任を持つこと」について多面的・多角的に考えさせる授業を展開した。

　同校は、研究の目的「“自他”を往還し、批判的・創造的に学ぶ生徒の育成」の研究３年次目を迎えた。

　これまでの成果や課題を踏まえ、研究目標には①各教科等をつなぐカリキュラム・デザインに基づいた教育活動の展開②生徒が自ら再考に向かう授業の実践③研究目標１・２による変容の量的・質的な分析と検証―の３点を掲げた。

　公開授業のうち、３年Ｃ組道徳「責任をもつとはどういうことか」（小川原周太教諭、生徒数３６人）では、教材の登場人物を自分の内面や経験と照らし合わせたり、違う視点から捉えたりするなど、内容項目「自主、自律、自由と責任」について多面的・多角的に考えさせた。

　教材は「ピヨ子」を使用。

　主人公の加奈子が、友人・さくらの変顔の写真を別の友人・美沙に送信したことをきっかけに、写真がほかのクラスメートらに拡散。さくらは「ピヨ子」というあだ名をつけられ、からかわれるようになった。加奈子を含めた友人たちが「自分は悪くない」と言う中、さくらは悲しい目で加奈子を見つめていた、という内容だ。

　小川原教諭は導入で、本時の題材について主体的に考えさせるきっかけとして責任がテーマの絵本を紹介。その上で「責任を持つとはどのようなことだろうか」と問いかけ、ワークシートに考えを記入させた。

　つぎに、教材を範読し、内容を確認。良い結末ではなかったことを捉えさせた。

　一つ目の発問「さくらは何に傷ついているのか」を投げかけ、導入で紹介した絵本と結び付けて一人ひとりの無責任さに問題があることに焦点を当てさせた。

　二つ目に「自分が同じ行為をしてしまいそうなのは誰か」と発問。「悪ふざけしてしまう時もあるので、男子生徒たちに共感する」「美沙に共感した。写真が送られたら、拡散していいものだと思ってしまう」など、自分の内面や経験を踏まえ、登場人物の誰に共感できるかを考えさせた。

視点を変えて再考

　途中で、加奈子、美沙、さくらをからかった男子生徒の３人の普段の様子を記した資料を配布。「友達やクラスメートのことを考え率先して行動する」「リーダーシップがあり、人の意見をしっかりと聞く」など教材では描かれなかった責任感のある人物像を示し、視点を変えて考えさせるきっかけをつくった。

　「その時の状況だけでは決めつけられない」「相手のことを考えなければならない」など多様な意見を引き出し、責任を持つことは様々な要素によって成り立っていることに気付かせた。

　これらを踏まえ、導入で問いかけた「責任を持つとはどのようなことだろうか」を中心発問として再度投げかけた。生徒たちは「まず、自分が何をしたのか俯瞰して考える必要がある」「自分の失敗を認められること」などと考えをまとめた。

(札幌市 2024-07-31付)