「つながり」と「信頼」を大事に校長会長インタビュー 第20回 札幌市中学校長会会長 秀島 起也 氏
(関係団体 2024-08-02付)

 ―会長就任に当たっての抱負 

 会長として就任するに当たり、その責任の重さを感じている。教育現場は日々変化し続けており、持続的で魅力ある学校教育の実現が求められている。校長会が一丸となって常に改革と改善をしながら子ども一人ひとりの個性を尊重し、学びの意欲を引き出す教育を推進していきたい。

 また「困った時こその校長会」という意識を全校長が持ち、校長会では何でも言い合え、特に困っていることや悩んでいることについて、声を上げやすく風通しの良いものにしたい。それは、共に支え合い、共に成長する横のつながりの深い校長会こそが、各校長の学校経営を支えると考えるからだ。

 経験年数にとらわれず思いや意見をどんどん表出し、ワイワイガヤガヤにぎやかで、笑顔の絶えない明るい校長会に、そして100人の校長同士の「つながり」と「信頼」を大事にしたい。

―市内の教育の特色、課題と対応

 札幌市の教育が目指す人間像「自立した札幌人」の育成を目指し、特に本年度は「子どもの声を聴く」を大切にして学校教育を推進している。その一環として、集団づくりや社会に主体的に参画する「さっぽろっ子自治的な活動」を推進している。

 また「さっぽろっ子“学び”のススメの活用」「小中一貫した教育の推進」「ICTを活用した教育の推進」についても、全ての学校で取り組んでいる。さらに「札幌らしいコミュニティ・スクール」についても準備できた中学校区から順次、地域と一体となって子どもたちを育む仕組みづくりが本年度からスタートしている。

 「自立した札幌人」の実現に向け、本中学校長会が特に解決すべきと考える課題は大きく3点ある。1点目は「自己肯定感の醸成」である。本市の子どもたちは、他者を大切に思う気持ちなどに比べ、自分を認め、肯定する気持ちが相対的に低いという傾向がある。今後求められる新たな価値を創造する力を育む土台として、自分の良さや可能性に気付く取組が必要である。

 2点目は「困りを抱えた子どもの増加」である。いじめの認知件数や不登校生徒数が増加傾向にあり、個々の状況に応じた支援がより大切になる。そのため、子どもの困りや悩みに真摯に向き合い、誰もが安心して学びに向かうことができる教育環境の充実が求められている。

 3点目は「体力・運動能力の低下」である。数年にわたり低下傾向が続いている状況であり、子どもの頃から主体的に運動する習慣が身に付くよう「運動の楽しさ」に触れることを重視した授業改善や運動に取り組む機会の充実を図る必要がある。

―信頼される学校づくりに向けて

 信頼される学校づくりのためには、透明性のある学校経営と地域とのコミュニケーションが不可欠であり、保護者や地域との連携を深め、学校が開かれた存在であることを示す必要がある。また、生徒の安全と健康を最優先に考え、安心して学べる環境を整備することも必要である。

 このためには、教職員が強い使命感を持って、専門性の向上に主体的に取り組めるよう、年10回実施する校長会研修会や全体研修会、学校管理研修会などの研修内容の充実を図っていくことが大切である。

 また、学校運営は組織のトータルパワーで動いている。そのため人材育成は、教育の質を左右する重要な要素である。教職員については市の教員育成指標を活用しながら自身のキャリアを見据えて成長できるよう支えていきたい。

―教育信条

 私の教育信条として常に思っていることは「子どもは未来で活躍する」ということである。子ども一人ひとりの成長スピードは違い、中学校時代に芽が出なくたって、活躍できなくたっていいと思っている。将来にわたりどこかの時点で活躍できるように土台を育むのが教育である。子どもたちの可能性や成長を信じ、彼らが将来的に社会で活躍することを期待する、希望に満ちた信条だと思っている。

 昭和62年道教育大旭川分校保健体育科卒。同年札幌市立青葉中に赴任。平成11年平岡緑中、22年北野中、24年市教委指導主事を経て、28年東月寒中教頭、30年中の島中校長、令和4年中央中校長。

 昭和39年9月22日生まれ、59歳。神奈川県生田市出身。

(関係団体 2024-08-02付)

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