イノベーターの輩出を ラピダスの小山氏が講演(関係団体 2024-08-02付)
ラピダス社の小山氏
道工業高校長会の第75回道高校工業教育研究集会では、ラピダス社の小山明夫シニアディレクターが「折れない心の育て方~我が半導体半生」と題し講演した。小山氏は「新しい技術を生み出すイノベーターが生き残る」と述べ、同社でもイノベーションを大切にしていることを説明。「イノベーションは新結合から生まれる。幅広い興味を大切に、試す勇気を称賛し何でも実践し応用してみる、新しいことをやる勇気を育むことが大切」と述べ、イノベーターを持続的に輩出する教育を求めた。
概要はつぎのとおり。
半導体業界は、2032年に1兆ドル市場になると言われている。これは日本の国家予算と同じくらい。
恐怖のシリコンサイクルと言われる3、4年ごとの激しい落ち込みがあり、かつて日本はそれについてこれなかった。
国も多くのプロジェクトを打ったが駄目だった。当時世界を牛耳ったおごりがあり、また、一つの企業で全ての工程を賄おうとしていたのが原因。
当時、日本では半導体製造の全ての工程を一つの会社でやっていたが、これでは研究開発に莫大な資金がかかり賄いきれなくなる。そこで“前工程”と呼ばれる部分のみに特化したのが台湾のTSMCで、イノベーションを起こした企業と言える。
日本企業は当時TSMCへの出資を断ったが、現在は良い関係にある。経営者の洞察力と懐の深さが事の成否を決める。イノベーターを持続的に生み出せるかにかかっている。
地球上で1年に作られるデータは2035年には175ゼタバイト(10の21乗、10億テラバイト)になると言われている。ビッグデータがAIを進化させ、AIがビッグデータを生み出す連鎖反応を支えているのが半導体。
2045年には地球上の全人類が持っている計算能力を1台のコンピューターが超えると言われている。そうするとわれわれの仕事はどうなるか。AIと競争する職種とAIを使う職種で明暗が分かれる。AIを使うという立場を認識することが大切。
イノベーターが生き残る。それは新しい技術を生み出し使う側だから。イノベーションとは、経済活動において生産手段や資源などを新たなやり方で組み合わせることで、新結合と言われている。われわれはイノベーションを大切にしている。
世界の消費電力は上がっているが、半導体の微細化を進めることで効率を高められる。製造のイノベーションのスピードで差別化を図りたい。顧客からイノベーティブな製品アイデアがあった時にすぐ応えたいと考えている。
幸福になるには幅広いことに興味を持つこと、好奇心を維持することを推奨する教育環境が重要。理由は、人生の選択肢が増え、心が折れにくくなるから。
今の時代、就職したところが10年後になくなっているということもあり得る。イノベーションは新結合から生まれる。幅広い興味を大切に。試す勇気を称賛して何でも実践し応用してみる、新しいことをやる勇気を育むことが大切。
新結合は大概周囲から評価されない。心が折れずに耐えられる論理思考の深さとその結論に魂を吹き込めるか。STEAM教育の真価が発揮される。
人を揺さぶる何かがないといけない。大事なのは魂。人類の幸せのために必要なんだという思い。
貪欲な知識欲と仮説を構築し、検証に労力を惜しまない者だけがAI時代に幸福を獲得する。イノベーターは幸福を獲得する可能性が高い。各校でイノベーターを持続的に輩出するためきょうからできることは何かを考えてほしい。
(関係団体 2024-08-02付)
その他の記事( 関係団体)
校長会長インタビュー 第22回 後志小中学校長会会長 中村和男氏 つながりを武器に羅針盤づくりを
―会長就任に当たっての抱負 多くの課題を抱え学校経営を行う校長にとって、課題解決のための決断や判断の際は、迷いや不安が常につきまとうものである。そのような時に、校長の羅針盤の一つとして、...(2024-08-06) 全て読む
札幌で第75回指定都市学校保健協 子の健康創出力育成を 心身脅かす諸課題対応へ研鑚
第75回指定都市学校保健協議会が7月28日、ホテル札幌ガーデンパレスで開かれた。全国の関係者220人余りが出席。社会環境や生活環境の急激な変化など、児童生徒の心身の健康を脅かす諸課題への対...(2024-08-05) 全て読む
北私幼 第66回研究大会 質の高い幼児教育実現へ 1300人参加し研鑚積む
第66回道私立幼稚園教育研究大会が1日、ホテル札幌ガーデンパレスで開かれた。参集およびオンラインを合わせて1300人余りが参加。テーマ「一人ひとりの“こどもがまんなか”を守る質の高い幼児教...(2024-08-05) 全て読む
校長会長インタビュー 第21回 小樽市校長会会長 代永 研 氏 「自走」と「共走」をテーマに
―会長就任に当たっての抱負 小樽市校長会の伝統や歴代会長の功績を受け継ぎ、この役職を拝命し大変身の引き締まる思いである。本年度は「自走」と「共走」をテーマに掲げ活動をスタートした。1校を...(2024-08-05) 全て読む
「つながり」と「信頼」を大事に校長会長インタビュー 第20回 札幌市中学校長会会長 秀島 起也 氏
―会長就任に当たっての抱負 会長として就任するに当たり、その責任の重さを感じている。教育現場は日々変化し続けており、持続的で魅力ある学校教育の実現が求められている。校長会が一丸となっ...(2024-08-02) 全て読む
第75回道高校工業教育研究集会 未来創造する教育を 道工業高校長会が苫小牧で
【苫小牧発】道工業高校長会(諸橋宏明理事長)は7月25日から2日間、苫小牧工業高校で第75回道高校工業教育研究集会を開いた。全道から110人が参加し「未来を創造する本道工業教育の推進」を研...(2024-08-02) 全て読む
校長会長インタビュー 第19回 札幌市小学校長会会長 千葉 一博 氏 「強い人が創る優しい学校」目指し
―会長就任に当たっての抱負 札幌市小学校長会では、本年度も「札幌市の教育が目指す人間像“自立した札幌人”の実現に資するよう、校長としての役割と指導性の研鑚など、職能向上に努め、本市の教育...(2024-08-01) 全て読む
道教委 組合3団体と着任交渉 教員確保 最優先課題に 人材発掘、働き方改革など
道教委の中島俊明教育長の就任を受け、北教組、道高教組、道教組との着任交渉が7月下旬、道庁別館で行われた。中島教育長は教員人材の確保を最優先課題とし、潜在的な人材発掘や教員採用選考のさらなる...(2024-08-01) 全て読む
道小 6年度広域人事調査 他管内の経験 貢献につなぐ ICT環境や柔軟化求める声も
道小学校長会(末原恵蔵会長)は6年度広域人事・離島人事交流に関する調査の集計と考察をまとめた。広域人事終了後、2年経過した全ての教員が「良い変化があった」と回答。他管内での経験を経て様々な...(2024-08-01) 全て読む
ほっかいどう学推進フォーラム 地域学習用サイト披露 シンポジウム 活用可能性探る
認定NPO法人ほっかいどう学推進フォーラム(新保元康理事長)は7月26日、札幌国際ビルで第6回シンポジウムを開催した。開発を進めてきた地域学習用デジタル教材検索サイト「ほっかいどう学プラット...(2024-08-01) 全て読む