校長会長インタビュー 第19回 札幌市小学校長会会長 千葉 一博 氏 「強い人が創る優しい学校」目指し
(関係団体 2024-08-01付)

千葉一博会長
千葉一博会長

―会長就任に当たっての抱負

 札幌市小学校長会では、本年度も「札幌市の教育が目指す人間像“自立した札幌人”の実現に資するよう、校長としての役割と指導性の研鑚など、職能向上に努め、本市の教育振興に寄与する」を運営の方針としている。十数年も前から、予測が困難な未来社会について語られてきたが、ここ数年の社会の変化は予測をはるかに超えるものがあり、学校においても大きな変革が連続的に求められている。このような時代の中で各校長が、信念と確かな知識を持ち、自分の良さを発揮しながら学校運営を行うことができるよう、役員・事務局員と共に力を尽くしていきたい。

―札幌市の教育の特色、課題と対応

 本年度から「札幌市の学校教育」として市が目指す教育の方向性が示された。基盤として人間尊重の教育があり「子ども一人ひとりが、自分が大切にされていると実感できる学校づくり」の推進が求められている。本年度、全ての教育活動を貫く重点として「子どもの声を聴く」ことが挙げられている。

 「子どもたちの思いや願いを把握し、それらを学校の教育づくりに生かす」「学びを進めるのは子ども自身であることを踏まえた学習づくりを行う」「子どもの悩みや困りを的確に把握し問題を解決する」「子どもが自分の学びや成長を実感し歩み続ける」ことが大切にされているのである。各校においては、方針に基づき学校経営方針の策定や教育課程の編成、日常の授業の向上の研究・研修が行われている。

 本会としては、上記の方針を課題として受け止め、諸研修活動の充実、組織の充実・強化を図っている。課題解決の具体的観点について六つの専門部を組織し、職能向上のための研究・研修を行っている。また、区ごと10支部の研修会では、直面する喫緊の課題や、近隣校やパートナー校で調整、対応すべき課題を協議し、各校での対応に生きる研修を続けている。

―信頼される学校づくりに向けて、学校組織の強化・活性化に向けた取組

 コミュニティ・スクールの精神にもあるように、これからは、子どものより良い育ちを学校だけではなく、家庭や地域と確かにつながりながら進めていかなければならない。そのために、信頼される学校づくりは最重要の課題である。どの学校においても以前よりそのために様々な努力を続けていることは間違いない。

 ただ、加速度的に進む社会の変化や地域・保護者が学校に望むことの変化等を的確に捉えて対応していくことが、学校の信頼づくりには欠かせない。そのためには、管理職や一部の担当者だけではなく、教職員が一丸となって信頼への意識を向上し、組織的に学校教育を推進していくことが必要である。

 例として、本年度からいじめ問題への対策委員会を定例で行うことが義務付けられているが、組織でいじめ問題について協議することが、子どもや子どもの背景を深く理解し、ひいては一人ひとりを大切にすることにつながっていることを強く感じる。

 もちろん分担して進めていかなければならないこともあるが、いかにして学校づくりを組織的に、みんなの知見を合わせて推進していくかが、学校の組織強化、活性化の鍵になると考える。校長会においても諸研修において各校の取組を交流したり、新しい情報を素早く提供したりすることを充実させ、各校長が的確にリーダーシップを発揮できるように引き続き取組を進めていく。

―教職員の人材育成に対する校長会の対応

 学校現場における教員数の不足、ミドルリーダー層の薄さは、札幌市だけではなく全国的な課題である。本会としては大きく二つの取組を進めている。一つは、教育実習の積極的な受け入れである。未来の教育を担う学生が、教職の魅力や子どもの成長の素晴らしさを実感し、教職へ進む意志を高めることができるよう各校で実習を行っている。そのために、大学側や市教委と連携を深め、学生と学校にとってより良い実習の在り方を互いに考えている。

 もう一つは、専門部の「人材育成部」における研究である。人材育成部では「自ら学び続ける教員の育成」「多様な人材が活躍できる学校づくり」の二つを視点として研究を進めている。

 その研究内容を各校長で共有し、各校での人材育成に役立てることができるようにしている。

―教育信条

 担任時代から一貫しているのは「強くて優しい子どもを育てる」ということ。自ら問題を解決しようとする「強さ」と、他の人と関係性を広げ、良さを見いだし自分に取り入れようとする「優しさ」を持つ子どもを育てたいと努力を続けてきた。「強い人が創る優しい学校」を目指し、今後も努力を続けていきたい。

 昭和62年道教育大札幌分校卒。札幌市立幌北小を振り出しに、小学校8校で勤務。平成31年平岡南小校長、令和4年三里塚小校長。

 昭和40年2月5日生まれ、59歳。札幌市出身。

(関係団体 2024-08-01付)

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