札教研事業 秋の研究集会〈上〉 札幌市教委 授業公開や研究協議で研鑚 道教大札幌校1年生 教員の学ぶ機会に触れる
(札幌市 2024-10-24付)

宮の森小小学校算数研究部
小学校算数研究部

 札幌市教育研究推進事業(札教研事業)秋の研究集会が22日、市内178会場で開かれた。26研究部が公開授業や講演などで教科等の専門性を高めようと研鑚を積んだ。今回、道教育大学札幌校1年生が初めて参加。学び続ける教員の姿に触れ、教職への憧れを深めた。本紙は、公開授業6会場を取材。各会場の様子を2回にわたって紹介する。

◆単位そろえて比べよう 宮の森小 小学校算数研究部

 中央区小学校算数の会場となった宮の森小学校(加瀬富久校長)では、5年3組「単位量あたりの大きさ」(板橋祐希教諭、児童数27人)の授業を公開した。

 小学校算数研究部の全市研究テーマは「分かる・できる・楽しい算数~主体的・対話的で深い学びを目指して」。本年度の研究の重点に「AARサイクルの視点で捉え直す“課題探究的な算数学習”」を据えた。

 研究の視点に①子どもが課題を自分事として捉える教材化②子どもが自らの学びや成長の進捗を自覚できる教師の関わり―の2点を設定。A(見通し)、A(行動)、R(振り返り)を通して思考を再構築できる授業の在り方を追究する。

 本時は、11時間扱いの1時間目。単元全体の導入として、最小公倍数や単位量当たりの大きさを求める場面を取り上げ、どちらの良さも実感した上で場面や目的に応じて両者を使い分けようとする意識を抱かせる授業を展開した。

 板橋教諭は冒頭、同じ枚数のレジャーシートに違う人数がいる2種類の映像を示し「どちらが混んでいる?」と質問。続いて、大きさの異なるレジャーシートに同じ人数がいる2種類の映像を提示し、同様に問いかけた。

 比べるためには、人数や広さが関係していることを確認させた上で、大きさも人数も異なる3種の映像を示し「人数も広さも違う時は、どう比べたら良い?」と質問。児童たちは、最小公倍数やシート1枚当たりの人数で比較する方法を考え合った。

 板橋教諭は、いずれの方法でも導き出せることを理解させた上で「面積と人数が多い場合はどのような比べ方がいいだろうか」と問いかけ、単位量をそろえる方法に迫る次時の学びにつなげた。

◆協働探究で成長実感を 宮の森小 体育「マット運動」

 中央区における小学校保健体育研究部会の会場となった宮の森小学校では、6年1組「器械運動~マット運動」(安井将弥教諭、児童数29人)の授業を公開した。

 小学校保健体育研究部会の研究主題は「“一人一人が主人公”となる保健体育学習」。①一人一人が見通しをもち、自己決定と協働探究を促す環境設定②評価から考える指導の工夫―の2点を研究の視点に、運動の面白さに触れ、心身を健康に保つ良さを実感する学習の在り方に迫っている。

 本時は、6時間扱いの5時間目。小学校マット運動の集大成として、補助倒立や補助倒立前転に重点を置いた学習を進め、基礎感覚を養った上で中学校マット運動への接続をねらった。

 安井教諭は冒頭、前時までに取り組んだ補助倒立前転における課題を整理。上達するために「技のポイントの確認」「自分の動きを比較」「友達と共に学ぶ」の3点を示した上で、児童個々の課題に応じて友達と協働して取り組むよう促した。

 児童たちは、壁のぼり倒立や壁倒立、友達の補助を受けながらの倒立など、自身のレベルに応じて10ヵ所に分かれて倒立に挑戦。友達の倒立を端末で動画撮影し、互いのうまくできている部分や課題を解決するためのこつを伝え合うなど、意欲的にマット運動に取り組んだ。

 このあと、市教委の山根直樹教育長、佐藤圭一学校教育部長、菅野智広教職員担当部長が見守る中で行われた研究討議では「自己決定と協働探究を促す環境設定になっていたか」「目指す姿は適切か。目指す姿に向かう教師の関わり」を柱に議論。養護教諭によるけが防止に向けた配慮事項を踏まえ、児童自らが伸びを実感できる授業の在り方を探った。

◆子が“のめり込む”学び 美香保小 小学校理科研究部

 東区小学校理科研究部の会場となった美香保小学校(高屋敷優校長)では、4年2組「もののあたたまり方」(幡宮嗣朗教諭、児童数33人)の授業を公開した。

 小学校理科研究部では、全市研究主題として「子どもが“のめり込む”理科学習」を設定。研究の視点には①自然事象を中心とした単元構成②子どもの主体性を引き出す教師の関わり―の2点を据え、子どもの主体的な学びを教師が意図的に引き出す授業の在り方を検討している。

 前時までに児童たちは、金属の棒や板を温める活動を通して、金属は熱源の近くから順に広がるように温まっていくことを学習。その後、試験管の水を温めるためには、どこに火を当てると良いかを考えてきた。

 9時間扱いの6時間目に当たる本時では、水を早く温める活動を通して、熱源から遠い部分の水を先に温めることや、熱源より下部が温まらないことに気付き、水が温まる過程の様子に着目したり生活経験を生かしたりしながら、水の温まり方について考えを持つことをねらった。

 はじめに児童たちは「試験管に入った水を早く温めるには、試験管のどの部分に火を当てると良いか」を予想。児童たちからは「金属と同じように中心に火を当てると広がるように早く温まりそう」「お湯を沸かす時は鍋の下から温めるから試験管も下から火を当てると早いと思う」など、様々な意見が上がった。

 その上で、熱源の位置で水が温まる早さを確かめる実験を展開。幡宮教諭は、実験を通して児童たちに試験管は金属と違って火に近い部分から温まっていないことを気付かせた。

 最後に、水の温まり方を考える活動を実施。児童たちは「お湯から出る湯気は上にいくから同じように水が温められると上にいくのではないか」「温められると出てくる泡や、試験管のガラス部分を伝って温かい水が上に移動しているのでは」などと予想した。

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宮の森小体育「マット運動」
小学校保健体育研究部
美香保小小学校理科研究部
小学校理科研究部

(札幌市 2024-10-24付)

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