【解説】部活動改革の沿革と今後
(解説 2024-12-04付)

 部活動の地域移行の始まりは平成31年1月の中教審答申にさかのぼる。教師の長時間勤務の主な要因となっていることから部活動を学校単位から地域単位とすることを提言。これを受けて文部科学省は令和2年9月に部活動改革の方向性をまとめ、部活動指導員の配置推進と5年度から休日部活動の段階的な地域移行を進める方針を示した。

 当初は「教師の長時間勤務解消」を主な目的としてスタートした部活動改革だが、急激な少子化が進む中、改革の理念も変化しつつある。中間取りまとめ案では改革の主目的を「スポーツ・文化芸術環境に親しむ機会の確保・充実」とし「地理的要因や障がいの有無にかかわらず、生徒が希望する活動を主体的に選択できる環境の整備を図ることが重要」と強調する。

 部活動の地域移行に先進的に取り組む自治体関係者は「子どもだけではなく、大人もスポーツ・芸術を体験できない未来が迫っている」と危惧。別の自治体職員は「子どもたちの体験格差にとどまらず、地域の子育てや移住定住策に影響を及ぼす」と将来を見据えた施策の必要性を訴える。

 国の調査によると、休日の運動部活動を地域移行した部活動の割合は5年度時点で10%。6年度に21%、7年度に37%、8年度に55%と予測。一方、平日部活動においては5年度時点で4%、6年度に7%、7年度に13%、8年度に22%と差が表れている。

 取りまとめ案では次期改革推進期間に向けて費用負担の在り方を検討する必要があるとし、企業版ふるさと納税やクラウドファンディングをはじめとする寄付金の活用、民間企業との連携など新たな財源を確保する重要性を示した。平日を含む地域移行の在り方を巡っては、財源をはじめとする各種課題の検証が必要になることが予想される。

(解説 2024-12-04付)

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