【社説】現場に正対した施策実現を(解説 2025-01-01付)
中教審答申を踏まえ、教職調整額を一気に13%へと引き上げをねらった文部科学省と、時間外在校等時間削減を条件に10%までの段階的な引き上げでとどめたい財務省の対立が続いた年末の予算編成作業。両省せめぎ合いの末、政府案では条件を設けずに令和12年度まで段階的に10%へと引き上げることで妥結した。
関係者は、調整額引き上げを巡る攻防を冷静に受け止める。背景には、予算全体での検討を求めた文科省に対し、文科省予算の枠内で解決を図ろうとする財務省の考えが平行線をたどったことにほかならない。
小学校中学年への教科担任制拡大などが盛り込まれた政府案は評価される。しかし、教師の処遇改善や担い手不足解消には、もはや文科省予算の枠内での解決が難しいことは明白。教員定数改善への予算を十分に措置した上で、標準授業時数削減、教師の仕事の価値をより真剣に議論すべきという、学校現場が解決を求める本質を置き去りにしない施策展開を求めたい。
令和4年における教師の1ヵ月当たりの平均時間外在校等時間は、平成28年度と比べて小・中共に約3割減少。教員業務支援員などの外部支援員配置、学校や教育委員会の努力によって一定の成果が見える。
一方で「学校・教師が担う業務に係る3分類」に基づく業務の精選は進まない。増加傾向にある保護者対応やクレーム対応、調査・統計への回答など、やりがいが小さく負担の大きい業務は依然として多く残る。
現行の学習指導要領が抱える標準授業時数削減や、カリキュラム・オーバーロード解消を求める声も根強い。今後、本格化する次期学習指導要領改訂に関する議論の中で検討が進むことを期待したい。
教職を目指す学生らは異口同音に「子どもたちが“分かった”と実感できる授業づくりに取り組みたい」と目を輝かせる。しかし、教育実習などで現役教員の多忙さに触れ、教職の道を諦める学生も少なくない。
若者が、給与よりもワーク・ライフ・バランスや働きがいに価値を見いだす時代。国は、教師が本来業務に注力できる時間を確保するための施策とは何かを議論の中心に据えるべきだ。多くの教師が抱く「子どもと向き合う喜びや教員としての矜持」に対して正対する施策の実現なくして、暗闇の出口は見えない。
(解説 2025-01-01付)
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