【解説】個に着目し学力底上げを
(解説 2025-10-02付)

 文部科学省は7年度学力調査から「平均」ではなく「分布」で捉える公表方法に変更。各教科の平均正答数の分布を4分位層に基づきA~Dの4層で示した。

 正答数の少ない「D層」の割合は都道府県間で差があり、小学校の算数では15・2~30・1%、中学校の数学では18・8~35・5%と開きがある。札幌市を含む道内におけるD層の児童生徒の割合は、全教科で全国平均を上回っており、学びの下支えが必要な子どもが多くいる状況を示唆している。

 学びの主体性と学力には相関関係があり「課題解決に向けて自ら取り組む」「話し合いで考えを深め、新たな考えに気付く」児童生徒ほど各教科の正答率が高い傾向が見られる。

家にある本の冊数を指標に家庭の社会経済的背景(SES)と学力の関係性を分析した結果、本の数が多いほど正答率が高いが、主体的・対話的で深い学びに取り組んだ都道府県では、低SESによる影響が少ないことも明らかになった。特に石川、福井、富山、秋田、大分の5県と東京都では、学力D層の平均点が高かった。

 社会経済的背景の不利を克服している教育委員会では、独自の教員加配など手厚い人的支援が行われていることも特徴だ。学校においては「個々の子どもに寄り添い、できるまでやりきらせる基礎基本の徹底」「子どもが主体的に取り組む授業スタンダードの校内共有」「日常的な情報共有や同僚性の高さ」などの取組が不利の克服につながっている。

 学びに課題を抱えている児童生徒はどの学校にも存在する。中教審は次期学習指導要領に向け「多様性の包摂」を一つの重点とする教育改革を計画。地域・学校の差ではなく、個々の児童生徒に着目し底上げを図る仕組みが求められている。

(解説 2025-10-02付)

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