【解説】理科教育の再構築へ審議
(解説 2025-10-13付)

 10月はノーベル賞の受賞が相次いだ。生理学・医学賞に大阪大学特任教授の坂口志文氏、化学賞に京都大学特別教授の北川進氏が選ばれ、科学を志す若者の大きな励みになっている。同時期に次期学習指導要領における理科の審議が始まり、将来の科学人材を育成する大きな岐路を迎える。

 わが国の状況をみると、理工系分野への入学者は大学全体の17%にとどまり、OECD諸国でワースト2位。国の推計では2040年には大学・院卒の理系人材が約100万人不足し、AI・ロボットなどの活用を担う人材においては約300万人が不足すると見込まれている。社会の要請に応じた理数系人材の育成は喫緊の課題だ。

 一方、科学への興味・関心は学校段階・学年が進むにつれて減少傾向にある。国際調査TIMSS2023では「理科の勉強が楽しい」と回答した日本の小学生はトルコに次ぎ2位と高いが、中学生から順位が大きく下がる。理科を使う職業に就きたい中学生の割合はスコアトップの10ヵ国・地域で最下位だった。

 文部科学省が6年度に実施した調査でも、科学技術への興味・関心が低い15~69歳の層の一定数が小学校段階で理科の興味・関心を持っていたことを示している。興味を失った理由は「理科・算数・数学の授業が難しくなったから」が49・2%と最多を占めた。

 6日のWGでは、基本的な知識・概念の理解・定着、科学的な探究の進め方や思考方法が不十分な可能性があるとし、小中高における学習内容の系統性・一貫性の確保が検討課題として挙がった。理工系学部の女性入学者比率が低い現状からジェンダーギャップ是正も議論。観察・実験機器の整備状況が不十分な学校も多いため、学習環境の地域・学校間格差の是正を図る必要性も確認された。

(解説 2025-10-13付)

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