【解説】文理分断からの脱却(解説 2025-12-09付)
国の推計によると、2024年から40年に高校生・大学生の総数は約25%減少すると予想される。文系生徒の多くが早い段階で理数科目から離れる「文理分断」が進んだ結果、高校生の7割が普通科、うち7割が文系を占め、工業・農業などの専門学科は2割にとどまっている。
事務・販売など文系ホワイトカラーの約320万人が余剰になる一方、AI・ロボット等の理数系やデジタル分野の専門人材は約330万人、地域社会や経済を支えるエッセンシャルワーカーは約450万人が不足するとされている。
文科省は背景として、大学教育の構造的要因を挙げる。明治期から昭和34年に開設した「第1世代大学」は知名度や人気が高く、全学生の58%が所属している一方、理工農・保健系の比率が低い。対して昭和50年~平成7年に開設された「第3世代大学」、平成8年以降に開設された「第4世代大学」は小規模ではあるが理工農・保健系の比率が高い。「大都市の有名大学に入れば安泰」と考え、偏差値を優先して早期に理数系科目を捨ててしまう生徒が増え、人材の需給体制を満たせない要因になっている。
高校や大学教育の在り方が社会の要請や子どものニーズに合致していない側面が指摘されている。OECDの調査によると、日本の子どもは数学的リテラシーや科学的リテラシーが高く「理科の勉強が楽しい」と回答する小学生の割合も高いが、学年・学校段階が進むにつれ理数系に対する興味・関心が低下する。
文科省は「高大の改革に加え、理数系への関心を引き出す初等中等教育の在り方、工業・農業といった専門高校の機能強化も不可欠」と強調する。文理分断から脱却し、新たな価値を創造する人材育成システム改革の実効性が問われる分岐点になる。
(解説 2025-12-09付)
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