道議会文教委員会(7月9日)の質問・答弁概要
(道議会 2015-10-15付)

 道議会文教委員会(七月九日開催)における山崎泉委員(北海道結志会)、田中英樹委員(公明党)、佐野弘美委員(日本共産党)の質問、および杉本昭則学校教育監、菅原行彦学校教育局指導担当局長、堀本厚健康・体育課長、竹林亨学校教育局参事(生徒指導・学校安全)の答弁の概要はつぎのとおり。

【献血の推進について】

山崎委員 昨年十二月、一般質問で知事に、献血の推進について質問させていただいた。

 一般的に献血というと、全血献血と成分献血があるが、今の主流は成分献血ということである。一般的に、交通事故や大きな事故があって輸血するというイメージがあるが、実際にはその割合は一割程度で、がんなどの治療に関するものに使われることが約八割ということである。

 日本赤十字社の統計によると、二〇二七年度には約五百四十五万人の献血が必要になる。しかしながら、献血というのは非常に限られた年代の中で行われている。それと同時に、人工の血液をつくることができないことや、血液自体が生きたものであるから長持ちがしないこと。これらの点を考えれば、二〇二七年度に約八十五万人の献血者が不足するというシミュレーションが出ている。

 少子高齢化が進む中で、献血の推進は必要不可欠なものになってくる。なおかつ、成分献血の血小板については、女性は五十四歳までということであるから、非常に限られた年代の中で行われる。それと同時に、年を取れば取るほど、いろいろな健康状態の中で献血できないということもあり、若年層への献血の普及や啓発の取組は急務ではないかと質問させていただいた。

 若年層と考えれば、二百㍉㍑については十六歳から、四百㍉㍑については男性十七歳、女性は十八歳からできるということであるから、小・中・高含めて、教育と切り離せないことではないかと考えている。道教委の見解について伺う。

菅原学校教育局指導担当局長 献血にかかる意識啓発について。高齢社会が進展し、献血者数の確保が必要とされる中、少子化の進展による献血可能人口の減少に加えて、若年層の献血者数が減少傾向にあることから、将来の献血を支える高校生等の若年層が、献血の意義や制度、健康被害救済制度などについて理解を深めることは重要であると認識している。

山崎委員 十二月に質問させていただいた当時は、約百一万人不足ということであり、赤十字で見直したところ、約八十五万人という数字が出ている。

 その後、厚生労働省でも献血の推進という意味では非常に危機感をもっているという一例として、文科省に対して協力のお願い、そして、文科省から都道府県教委に対して献血推進の機会の導入の依頼文が来ていると思うが、その内容も含めて、どのようになっているのか伺う。

堀本健康・体育課長 厚生労働省における依頼の内容について。厚生労働省が文部科学省に対して発した依頼文書では、少子高齢社会の進展を踏まえると、今後の輸血医療を支える若年層が、将来にわたり献血に協力することが大変重要であることや、高校時代における献血体験が、その後の献血行動の動機付けとなるなど献血者の啓発に効果的であることを示すとともに、厚生労働省が、日本赤十字社や都道府県と協力して実施する献血セミナーや学校献血等の献血にふれあう機会を、高校等が積極的に受け入れるよう、都道府県教育委員会等への働きかけを要請している。

山崎委員 私自身、様々な他県の事例もみさせていただいたが、中には、校内献血等いろいろな事業をしている学校も見受けられる。今、献血を支えているのが高齢者ということを考えれば、子どもたちに献血の正しい認識が身に付いていかなければならないと思う。

 そのような観点も踏まえて、高校において、献血についてはどのように学習しているのか伺う。

堀本健康・体育課長 高校における取扱いについて。高校学習指導要領解説保健体育編では、すべての生徒が学習する科目である「保健」で取り扱う内容のうち、「わが国の保健・医療制度」にかかる学習において、「献血の制度があることについて適宜ふれるようにすること」、また、「様々な保健活動や対策」にかかる学習において、「日本赤十字社などの民間の機関の諸活動や、その活動等を充実させるためには、一人ひとりが生涯の各段階において、それらを理解し支えることが重要であり、そのことが人々の健康につながることにふれるようにすること」が示されている。

山崎委員 理想的な答弁だが、現実的なことを考えれば、道教委がどのように協力して、どのように啓発していくのかが、不足している感はある。

 実際に、ことし三月に道においても、道献血推進計画を発信しているが、その中で、若年層の献血対策ということで、教育委員会の一節も書いている。「四百㍉㍑普及啓発に努める。また、市町村とともに若年層の献血への関心を高めるため、学校等において、普及啓発資材配布等によって、ボランティア活動である献血についての情報提供に努める。さらに、北海道および市町村の協力を得て、特に四百㍉㍑の献血者の確保と正しい知識の普及啓発を図るため、学校等において、献血に関するセミナーや血液センターの見学会および出前講座等を実施する」と、明確にうたわれている。

 ただ、聞いたところによると、小・中・高校のすべてで行われているわけではない。道教委と道との間でも、整合性も含めてかい離があるのではないかと、認識をもっている。

 現在、高校で献血にかかわる取組として、どのようなことが行われているのか、今後、どのように取り組み、啓発を拡充していくのか伺う。

堀本健康・体育課長 高校における献血にかかわる取組について。二十六年度においては、献血セミナーの実施や、日本赤十字社と連携し、保護者の同意を得た上で、希望する生徒を対象に献血を体験させる取組のほか、市町村からの依頼を受け、当該市町村で実施される献血案内の生徒への周知などに取り組んでいる学校があると把握している。

 今後においては、こうした取組についての事例集を作成し、各学校に対する献血にふれあう機会についての情報提供に努めていく。

山崎委員 現状で把握しているわけではないから、来年度に向けて、きちんと普及啓発できるような体制、そして、実績も含めて、つぎは細かく伺う。

 それと同時に、献血者数を確保することは、日本人の命を守ることだという認識はもたなければならない。八十五万人も不足するというシミュレーションが出ている以上、そして、日本で一番死亡率が高いといわれるがんや病気の手術で八割が使われることを考えれば、いくら科学や医療技術が進歩しても献血がなければ治療もできない状況である。

 身近な家族の命を守ることが、若年層の中で必要であるという認識を教育委員会ももたなければいけない。私は、この点を強く言わせていただきたい。

 十二月に知事に答弁を求めたとき、知事の答弁でも、「若年層の人たちに対し、命の大切さや献血の意義を伝え、献血意識を一層高めるため、道教委と連携して、小学校、中学校、高校において、献血センターと協働して献血セミナーを開催するなど、道民の命を守るという強い決意をもって、献血の普及拡大に取り組んでいかなければならないと考えている」と明言している。道教委と連携することも、一般質問の中で答弁をもらっているわけだから、これは確実に取り組んでいただかなければならないと考えている。

 普及啓発に取り組む道教委の考え方、今後について伺う。

杉本学校教育監 今後の取組について。若年層の献血を促進するためには、高校生等に対し献血の制度など保健・医療制度の仕組みや活用の仕方、日本赤十字社など民間の機関の活動などを理解させるとともに、自ら制度を支える意欲を高める必要がある。

 道教委では、ただ今、担当課長から申し上げたように、高校における献血にかかわる取組について事例集を作成し情報提供を行い、献血の制度等に関する学習を支援するとともに、保健福祉部や道赤十字血液センターと連携して、献血セミナー等の献血にふれあう機会の受入が円滑に行われるよう指導・助言していく考えである。

【SSWの活用と配置】

田中委員 児童生徒を取り巻く問題については、家庭、友人関係、地域、学校などの置かれている環境の問題や児童生徒の抱える心の問題など、様々な問題が複雑に絡み合っている。

 とりわけ、学校だけでは解決が困難な問題も多く、関係機関が問題解決に向けて、積極的に連携していくことが求められており、問題の解決に向けて支援する専門家であるスクールソーシャルワーカーの存在がますます重要になっていると考えている。

 そこで、以下、スクールソーシャルワーカーについて、数点伺う。

 まず、スクールソーシャルワーカーの道内の配置状況等、現状について伺う。

竹林学校教育局参事(生徒指導・学校安全) スクールソーシャルワーカーの配置等について。道教委では、二十年度から「スクールソーシャルワーカー活用事業」を実施しており、現在、道教委に五人、二十七の市や町の教育委員会に三十八人の計四十三人を配置しており、配置している市や町における、学校・家庭、関係機関等への派遣回数は、二十五年度が約七千五百回、二十六年度は約九千回となっている。

 スクールソーシャルワーカーは、いじめ、不登校、発達障害等に関する問題に対し、問題を抱える児童生徒が置かれている環境への働きかけや、関係機関等との連携や調整などのネットワークづくりに取り組むとともに、学校内におけるチーム体制の構築、支援などを行っている。

田中委員 道教委としては、二十年度からスクールソーシャルワーカー活用事業を行っているとのことであるが、これまでの取組での主な課題については、どのようにとらえているのか伺う。

竹林学校教育局参事(生徒指導・学校安全) スクールソーシャルワーカーにかかる課題について。今日、いじめの問題や不登校等の背景には、児童生徒の心の問題とともに、家庭、友人関係、地域、学校など児童生徒の置かれている環境に問題のある場合もあることから、家庭、学校、地域の関係機関をつなぐスクールソーシャルワーカーの役割は、ますます重要になっている。

 こうした中、スクールソーシャルワーカーを配置している市や町では、その役割や効果についての普及・啓発が進み、積極的な活用が図られる一方で、他の市町村では、スクールソーシャルワーカーに対する認識の程度に差がみられること、都市部以外の地域では、スクールソーシャルワーカーとしての要件である社会福祉士や精神保健福祉士などの資格をもつ人材の確保が難しいことなどの課題がある。

田中委員 道教委として、問題の解決への支援などに当たるスクールソーシャルワーカーの学校に対する理解を深める工夫や配置の拡充等に向けた今後の取組について伺う。

菅原学校教育局指導担当局長 今後の取組について。道教委では、スクールソーシャルワーカーを対象とした全道連絡協議会や地域別研修会を開催し、スクールソーシャルワーカー相互の連携強化や資質能力の向上に努めてきており、また、昨年度からは、市町村教育委員会や学校などに対し、スクールソーシャルワーカーへの理解を深めることを目的としたフォーラムを開催するとともに、効果的に問題の解決が図られた実践事例を取りまとめ、道教委のウェブページに掲載するなどして、「スクールソーシャルワーカー活用事業」の普及・啓発に努めてきた。

 さらに、昨年三月、北星学園大学と協定を締結し、スクールソーシャルワーカーの活用に興味・関心のある教員等を対象とした社会福祉に関する講座を実施したほか、スクールソーシャルワーカーを目指す大学生に対して、現場実習の機会を提供するなどして、人材の育成のための取組を進めてきた。

 今後とも、市町村教育委員会や学校の要請に応えられるよう、スクールソーシャルワーカーの専門性の向上を図り、学校の教育課題に対する理解を深める研修を実施するとともに、一層の人材確保と配置の拡充に努めていく。

―指摘―

田中委員 私の地元である釧路市も、現在、二人の配置にとどまっている状況である。

 また、現状、二十七の市や町にとどまっている配置状況などからも、ぜひとも、今後、引き続き配置の拡充、専門性の向上も含めて積極的な取組を行うことを指摘する。

【柔道の体育授業の安全対策】

佐野委員 二〇一二年度から現行の中学校学習指導要領が全面実施になり、丸三年が経過した。中学一・二年ですべての生徒が、武道を経験することになっている。

 学校において、児童生徒がけがをした場合には、道教委に報告されることとなっていると承知しているが、この三年間、武道必修化に伴う柔道授業で、どの程度の事故が発生しているのか伺う。

堀本健康・体育課長 柔道の授業における事故について。道教委では、道立学校および市町村教育委員会に対して、交通事故を除く、授業中等における一般事故について、死亡や全治三週間以上の負傷のほか、後遺症が残るおそれのある負傷の場合などについて報告を求めている。

 札幌市を除く道内の公立中学校での柔道の授業中における負傷事故としては、二十四年度には七件、二十五年度には四件、二十六年度には五件と、三年間で計十六件が報告されており、その内訳は、鎖骨や手足の指などの骨折が十五件、腰部のねんざが一件となっている。

佐野委員 柔道の授業の事故で一番恐ろしいのは頭部外傷で、ときに命にかかわり、重大な後遺障害を残すこともある。頭部外傷の報告はないが、骨折などの重大なけがが複数、発生している。

 これまで道教委は、柔道の授業中の事故、けがの防止について、どのように対応してきたのか、十分な対応と言えるものだったのか、これまでの対応について伺う。

堀本健康・体育課長 事故の防止に向けた取組について。道教委では、柔道の授業の実施に当たり、初任者や柔道の研修を受けたことがない教員など、指導経験がない教員を対象に柔道講習会を実施し、授業中の安全確保についての指導を行うとともに、市町村教育委員会および学校に対し、柔道の有段者を含めた複数の教員等で授業を行うよう指導し、毎年度、各学校の指導体制を確認している。

 また、柔道関係団体の代表者、学校関係者、医師、保護者などで構成する「中学校柔道授業安全推進委員会」において、発生した事故の原因分析や、頭部外傷に関する予防策等について検討するとともに、その内容を教師用指導資料に取りまとめ、全道に普及するなど、柔道の授業における事故の未然防止に取り組んできた。

 しかしながら、こうした中においても、毎年、骨折等の事故が発生していることから、引き続き、安全な柔道の授業の実施に向けて、指導体制の充実に取り組んでいく必要があると考えている。

―意見―

佐野委員 生徒の安全のために、ぜひ、しっかり取り組んでいただきたいと思う。

佐野委員 必修以外の学年等の状況について。武道は中学三年生と高校では選択履修となっているが、必修以外の学年等での事故の状況はどのようになっているのか伺う。

堀本健康・体育課長 必修以外の学年等での柔道の事故について。武道が必修化となった二十四年度以降の三年間で、必修ではない中学校第三学年の事故は鎖骨や手足の指などの骨折が四件、肩のねんざが一件報告されている。

 また、同じく武道が必修ではない高校については、事故の報告はない。

佐野委員 必修以外での柔道授業において、安全対策のために、道教委では、どう取り組んでいるのか伺う。

堀本健康・体育課長 安全な指導に向けた取組について。道教委では、先ほども申し上げたが、「中学校柔道授業安全推進委員会」において示された事故の原因分析や予防策等について教師用指導資料に取りまとめ、武道が必修となっている中学校だけではなく、高校に対しても配布するなどして、安全な授業の実施に向けた指導助言に努めてきている。

 また、柔道講習会に関しては、中学校教員だけではなく、高校や特別支援学校の教員も対象とするなど、柔道を選択して実施する学校にも対応している。

佐野委員 ある高校では、生徒が柔道の授業中に脳振とうのような状況で気を失い、すぐに意識を回復し、「大丈夫」と返答したからと、保健室にも連れて行かず、もちろん医療機関への受診もなく、保護者への連絡もなかった事例があるという情報が寄せられている。幸いなことに、その後、体調に変化はなく、後遺症もなく回復したが、他の生徒に同様のことが起こって、大事に至るようなことがあっては大変だと、心配で情報を寄せていただいた。

 しっかりした対策を取り、周知徹底をしても、実際にこのような事例が発生している。けがとして報告されたのは氷山の一角で、日々の授業で生徒が危険な目に遭っているのではないかと危惧をしている。ハインリッヒの法則では、一件の重傷事故の背景には、二十九件の軽傷の事故と、三百件の障害に至らない事故、ニアミスがあるという経験則だが、これに照らすと、一件の骨折の背景には、二十九件の軽傷の事故と、三百件の障害に至らない事故があると考えられる。

 特に、頭部外傷のリスクの高い柔道で、今の報告には頭部外傷についての報告はないが、事例のような大事に至らない症例が数多くあると推測される。後遺症や生命にかかわる事故を防ぐために、例えば、症状が全くなくても、経過を記録し報告を義務付け、分析・検討して対策につなげるなど、もっと対応を強化しなければならないと考えるが、見解を伺う。

堀本健康・体育課長 事故への対応について。柔道の授業などにおける頭部外傷に関しては、程度によっては後遺症なども懸念されることから、慎重かつ適切に対応する必要があると考えている。

 道教委では、これまでも、先ほどの「中学校柔道授業安全推進委員会」において検討された内容を踏まえて作成した教師用指導資料に、生徒の技能の習熟の程度等に応じた適切な指導の在り方や頭部外傷などの予防策について盛り込んでおり、その活用を促している。

 また、全治三週間に満たない場合であっても、頭部外傷など重大な事故が発生したときは、速報として報告することを求めており、学校や市町村教育委員会に対して、報告が適切に行われるようあらためて指導していく。

佐野委員 道教委では、武道の授業はどうあるべきと考えているのか、見解を伺う。

杉本学校教育監 武道の授業について。武道は、「礼に始まり、礼に終わる」と言われるように、技能の習得などを通して、礼法を身に付けるとともに、相手を尊重する態度を養うなど、望ましい自己形成を図る上で、重要な要素をもったわが国の伝統的な運動文化である。

 道教委としては、こうした武道の授業においては、技の習得のみならず、それぞれの武道が有する歴史や特性、礼法の重要性、自他の安全に留意した行動などについて学ぶことができるように、より効果的な指導について工夫するとともに、何よりも生徒の安全について十分に配慮する必要性があると考えている。

 今後とも、学校における指導体制などについて把握するとともに、市町村教育委員会や武道関係団体等との連携を一層強化し、安全かつ効果的な武道の授業が実施されるよう指導助言に努めていく考えである。

―指摘―

佐野委員 骨折のような重大なけがが毎年発生している、さらに、命にかかわる後遺症のリスクもある頭部外傷の危険のある授業は、親として賛成できないし、多くの親もそう思っていると考える。

 導入の際にも心配する声や反対の声が多く上がっていたことを記憶している。

 この事故の状況を聞いて、今一度、必修授業で柔道を教えることの是非を、生徒や親、現場の教員の意見もしっかり聞きながら、考え直すべき時期にきているのではないかと思う。

 中止も含めて、しっかり検討していただきたいということを強く指摘する。

(道議会 2015-10-15付)

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