道教委・柴田達夫教育長インタビュー 本道の未来支える力育成 関係者一丸で学力・体力向上
(道・道教委 2015-07-28付)

道教委柴田達夫教育長インタ
道教委・柴田達夫教育長

 子どもたちの学力・体力の向上をはじめとする課題が山積する中、道教委は、北海道教育の一層の充実・発展のため、各種施策を展開しており、道民もその動向に大きな関心を寄せている。ことし六月に就任した道教委の柴田達夫教育長に、地教行法の一部改正施行後、初めての新「教育長」としての思いや、諸課題への対応、今後の展望について聞いた。

 ―就任に当たっての感想と抱負

 道民の皆さんが教育に対して、非常に強い思いをもっていらっしゃることは、これまでの様々な行政分野での経験を通じて感じており、教育長としての責任の重さをあらためて実感しているところです。

 本道では、人口減少の加速化、グローバル化の進展、情報通信技術の発達など、社会情勢が大きく変化しています。

 こうした中、子どもたちを取り巻く教育環境にも様々な影響がありますが、北海道の未来を担う子どもたちが、しっかりと自立し、優しい心をもって互いに支え合い、そして、たくましく生きていくことが何よりも大切であり、こうした子どもたちを育てていくことは、我々大人に課せられた責務と考えています。

 子どもたちが、ふるさと北海道に誇りをもち、その未来を支えていける力を培うことができるよう、学校・家庭・地域・行政の一層の連携・協力を進めながら、全力で取り組んでいきたいと考えています。

 ―地教行法一部改正後、初の新「教育長」として、どのような役割を果たしていきたいか

 新しい教育委員会制度のもと、教育委員長と教育長を一本化した新「教育長」という職を拝命し、責任の重さを実感しているところです。

 新制度になりましても、子どもたちが、ふるさと北海道に誇りをもち、その未来を支えていける力を培うことができるように、教育委員の皆さんと議論し、行政を執行することは従前どおりですので、しっかりと意思疎通を図って教育委員会を運営したいと考えています。

 また、今回の制度改正では、知事との連携を図るため、総合教育会議の設置および大綱の策定が新たに定められました。

 これまでも道教委と知事とは連携をして教育行政を進めてきたところでありますが、制度改正の趣旨を踏まえ、総合教育会議では、今まで以上に教育に関する課題の認識や政策の方向性を知事と共有することが大切になると考えています。

 大綱は本道における教育施策の基本となるものですので、将来を担う心身ともに健やかな人材を育成し、北海道が持続可能な活力ある地域として発展し続けることができるよう、知事と十分意見交換をしていきたいと考えています。

 ―本道児童生徒の学力・体力の状況の認識とその対策について

 本道の子どもたちの学力については、全国調査の結果、昨年度と比較して、小・中学校の八教科中、六教科で全国平均との差が縮まり、そのうち、中学校の国語Aが全国平均と同じになるなど、改善の傾向がみられ、教育委員会や学校、家庭、地域の取組が一定の成果として現れてきたものと受け止めています。

 しかしながら、一部の教科を除いて依然として全国平均には達していない状況にあり、市町村・学校のばらつきも大きく、また、全国に比べて、テレビを見たり、ゲームをしたりする時間が長いなどの課題もあり、なお一層の努力が必要であると考えています。

 道教委では、これまでも、北海道に住むすべての子どもたちに、社会で自立するために必要な学力を確実に身に付けさせる必要があるとの考えのもと、すべての教科で全国平均以上という目標を掲げ、取組を進めてきたところであり、今後も、学校・家庭・地域・行政が一体となって、授業改善と生活習慣の確立を車の両輪と位置付け、本道の子どもたちの学力向上に全力を傾けてまいります。

 本道の子どもたちの体力についても、体力合計点が小学校男女、中学校女子で全国との差が縮まるなど、学力と同様、改善の兆しとして現れてきたものと受け止めています。

 しかしながら、依然として小・中学校の男女いずれも全国平均を下回っている状況にあるとともに、全学年での新体力テストの実施と数値目標の設定が十分でない学校がみられること、また、全国に比べて、体力合計点総合評価がDE層である児童生徒の割合が高いなどの課題もあり、なお一層の努力が必要であると考えています。

 今後も、学校・家庭・地域・行政が一体となって、運動やスポーツの楽しさを味わい、達成感が得られる体育授業の改善や望ましい運動習慣の定着に向けた取組を進めることを重点に、本道の子どもたちの体力向上に全力を傾けてまいります。

 ―いじめ問題など生徒指導上の課題への対応について

 いじめについては、どの子にも「いじめの芽は、生じ得る」という強い危機感をもって、常日ごろからいじめが起きない学校づくり・学級づくりに努めるとともに、いじめの疑いがある場合には、スピード感をもって組織的に対応に当たることが必要であると考えています。

 本道においては、社会全体でいじめの問題を克服することを目指し、昨年四月、「北海道いじめの防止等に関する条例」を施行し、八月に、「北海道いじめ防止基本方針」を策定しております。

 道教委では、昨年度、いじめが起こりにくい学校づくりを進められるように「いじめ未然防止モデルプログラム」を作成し、各学校に配布しました。本年度は、各学校でのいじめの未然防止の取組が一層充実するようモデルプログラムの改善に努めるとともに、「どさんこ☆子ども全道サミット」を開催するなど、子どもたちが主体的に考え、いじめの未然防止に取り組む気運をさらに醸成してまいります。

 また、いじめや不登校、体罰など学校等で生じる問題について、子どもや保護者からの相談に対して、これまで以上にきめ細かな支援に当たり、問題の解決につなげるよう「子ども相談支援センター」の設置に向けた準備を進めてまいります。

 道教委として、学校内外での教育相談の機能を高めていき、すべての子どもが安心して学習やその他の活動に打ち込むことのできる環境づくりに取り組んでまいります。

 ―北海道教育の将来展望

 人口減少が加速化する本道においては、人口減少問題への対応として、産業の振興を図って雇用を確保することや子どもを産み育てやすい医療や子育ての環境を整備するとともに、良好な教育環境が重要であるという認識を道民の皆さんがもっていらっしゃると感じています。

 子どもたち一人ひとりが豊かな人生を送ることは、本道の持続的な発展につながるものであり、教育は、その基盤として重要な役割を果たすものです。

 しかしながら、本道の教育においては、様々な課題が山積しております。同時に、学力や体力など少しずつではありますが取組が進み、改善の道筋がみえてきたものもあると認識しています。

 また、人口減少下であっても、学校の規模や地域にかかわらず、教育環境の維持・向上を図ることが重要であり、ICTを活用した遠隔授業の実施をはじめ、タブレット端末や電子黒板等を積極的に活用した授業改善の推進、いじめや不登校の事案についてネット上で専門家の指導助言を受けられる体制の整備などを進めていきたいと考えています。

 道教委としては、「北海道の子どもたちは、道民の手で、地域全体で育んでいく」という思いで、前例踏襲や現状維持に甘んじることなく、新たな教育委員会制度の利点を最大限に生かし、知事部局ともこれまで以上に連携し教育施策の方向性を共有して、本道教育の充実・発展に取り組んでまいりますので、道民の皆さんの御理解・御協力をお願い申し上げます。

 しばた・たつお

 昭和54年立教大卒業。平成19年道総務部総務課長、20年洞爺湖サミット推進局長、21年観光局長、22年釧路総合振興局長、23年経済部観光振興監、24年総務部危機管理監を経て、25年から総合政策部長兼地域振興監を務めていた。

 昭和31年2月12日生まれ、59歳。札幌市出身。

(道・道教委 2015-07-28付)

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