道小が広域人事に関する調査の集計と考察 経験後、授業力向上・職場内交流に好影響 経済・精神的不安等で困り感(関係団体 2015-09-08付)
道小学校長会(松井光一会長)は、「二十七年度広域人事に関する調査の集計と考察」をまとめた。広域人事対象者の成果や困り感、対象校の課題、行政の対応などについて調査。対象者本人の困り感では、経済的負担や精神的負担、住居に関することが多く、戻ってからは授業力の向上、職場や仲間との交流など良い影響を与えていることも示した。
道教委では、教職員の全道的な適正配置を推進することによって、地域における学力向上や生徒指導等教育課題の改善に取り組み、全道的な教育水準の維持向上を図ることを目的に、二十三年度から道公立小中学校教職員広域人事制度を実施している。
具体的には、他管内において原則三年間勤務し、その後は元の管内に戻るもの。道内を五地域に区分し、それぞれの地域内で平均年齢の高い管内と平均年齢の低い管内との間での異動を基本としている。
道小対策部では、ことし四月に制度の対象となった三年目終了者とその異動元校長・異動先校長、一年目対象者とその異動元校長・異動先校長百十五人を対象にアンケートを実施。九一・三%に当たる百五人から回答を得た。
アンケート結果をみると、三年目終了者本人に対する調査のうち、「制度に参加して良かったと思うこと」では、「職場や仲間との交流」が三三%、「学力の向上」も三三%、「教育課程改善への参画」が二四%だった。
一方で、「大変だったと思うこと」では、「精神的負担」(三五%)、「経済的負担」(二五%)、「職場や仲間との交流」(一五%)、「教育課程改善への参画」(一〇%)などが挙がった。
サポート体制については、各教育局指導主事や異動元校長等の訪問などによる協力、支援に差があったことが明らかとなった。
また、一年目異動者本人への調査では、異動までの準備で困ったこととして、「住居」(三〇%)、「相手校との連絡」(一八%)、決まってから異動するまでの「期間」(一三%)が挙げられた。着任してから困ったことは、「校務内容の違い」(二八%)、「地域・保護者との連携」(一一%)などがあった。
広域人事終了後の赴任校の校長を対象とした「対象教諭は三年間の経験を生かし、どのような活躍をしているか」との質問については、「授業力の向上」(二七%)、「職場や仲間との交流」(二一%)、「教育課程改善への参画」(一九%)、「学力の向上」(一九%)などの回答が寄せられた。こうした結果について道小は「戻ってきてから、職場の仲間に良い影響を与えている」と分析している。
道小では、広域人事の成果について、異動教員にとっては教員としての経験値が高まり視野が広がること、三年間で相互に良い刺激を与え合うことができることを挙げる。また、対象校と地域にとっても、学校運営の活性化につながり、本道が抱える課題を広い視点でとらえ、克服していく手立てとなっている。
一方で、今後の課題としては、「引越しや単身赴任に伴う経費を含めた経済的・精神的なサポート」「制度の趣旨と本人の目的の事前確認」「本人の能力を学校や地域のために発揮できるサポートの在り方」などを示している。
また、派遣期間や受け入れ体制は、本人と地域の実情を踏まえた弾力的な運用が求められていること、校長に対する制度の説明会や意見交流についての地域格差があることも指摘。「広域人事制度の完結は、三年間の期間が終了した時点ではなく、戻った教員がこのあと、どのような形で地域に貢献できたかを見極めること」が重要なポイントと指摘している。
道小では今後、調査結果を踏まえて道教委へ要望していく。
(関係団体 2015-09-08付)
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