「配置計画」の撤回要求 学習権保障する教育政策を 道高教組・道教組が声明(関係団体 2015-09-07付)
道高教組(國田昌男中央執行委員長)・道教組(川村安浩執行委員長)は二日、道教委の「公立高校配置計画」「公立特別支援学校配置計画」に対し、「教育の機会均等、子どもの学習権を脅かす〝配置計画〟の撤回を求める」とする声明を発表した。声明では、「〝新たな高校教育に関する指針〟に基づく〝配置計画〟を撤回し、子ども・学校の実態と保護者・地域の願いに基づいた学校配置の策定」を求めるとともに、「一律、機械的な判断ではなく、地域住民や保護者、子どもたちの声に耳を傾け、子どもたちの学習権を保障する教育政策を進めるべき」などと訴えている。
声明の内容はつぎのとおり。
▼「指針」に固執した「配置計画」を撤回し、子ども・学校の実態と保護者・地域の願いに基づいた学校配置を
道教委は九月一日、「公立高校配置計画」(二〇一六~二〇一八年度)と「公立特別支援学校配置計画」(二〇一六年度)を決定した。
今回の「高校配置計画」には、二〇一六年度に奥尻の道から奥尻町への移管、長万部の地域キャンパス校化(センター校は八雲)、定時制課程では、二〇一七年度に再編整備する函館工業の一学級減、二〇一八年度には八校(滝川西、札幌南陵、札幌厚別、石狩南、旭川北、旭川工業、帯広三条、釧路江南)の各一学級減、市立函館の二学級減、小樽商業(二学級)と小樽工業(三学級)を募集停止し四学級の新設校(学科検討中)として再編、留萌(四学級)と留萌千望(二学級)を募集停止し六学級の新設校(単位制普通科、電気・建設科、情報ビジネス化)として再編するなどが「配置計画案」のまま決定された。
六月に「配置計画案」が出されたあと、各地域で開催された第二回地域別検討協議会では、「中卒者が減っているからといって、ただ単純に学級を減らすということではなく、地域の実情を考えるべき。今の道教委の考え方は、国が推し進めている地方創生の施策に逆行するものである」などの意見が出されたが、結局、「高校配置計画」に反映されることはなかった。
また、「特別支援学校配置計画」では、閉校した高校や中学校を活用するなどして、職業学科の札幌あいの里高等支援、旭川高等支援、新得高等支援の新設と、普通科の札幌伏見支援の新設(学校名はいずれも予定)などが決定された。
新設校が高校や中学校の校舎の転用では、教室の広さや実習設備等にかかわる電源確保など解決しなければならない課題は多い。また、寄宿舎が併設されない見通しであり、障害のある子どもの学習権を保障するには不十分な内容である。特別支援学校の増設に当たっては、単なる「通学保障」だけではなく、「教育保障」の観点で寄宿舎の設置・充実を行うことが必要である。
私たちはあらためて道教委に対し、「新たな高校教育に関する指針」に基づく「配置計画」を撤回し、子ども・学校の実態と保護者・地域の願いに基づいた学校配置の策定を求めるものである。
▼地域の声に耳を傾け、その意見を反映した教育政策を進めることを求める
私たち高教組・道教組などによって組織する「ゆきとどいた教育をすすめる北海道連絡会」では、六月の「配置計画案」発表後、道内各自治体の首長、教育長と教育懇談を実施し、「指針」見直しを求める声を多く聞いてきた。
「中学生には高校を選ぶという選択肢も必要である。高校が地域に果たす役割は大きい」「町の活性化のためには、高校のあるなしは非常に大きい。希望する者が何人になっても高校は残していきたい」(宗谷管内)。「指針の見直しが必要と何年も同じことを言っているのに、どうして何も変わらないのか」「北海道も東京も沖縄も同じ基準で学校を設置するのはおかしい」「自治体として、道に対する様々な要望があるが、それを伝える手立てがない。教育行政の最も足りない部分である」「(高校再編について)まだまだ統合しなくてもやっていけるのではないか。校舎の大きさにも無理があるのであれば、今でなくてもいいのではないか」(留萌管内)など厳しい意見が語られていた。
このまま「指針」に基づいて「高校配置計画」が進めば、地域の子どもの学習権を脅かしかねない。奥尻の町立移管も、道立での存続はいずれ困難であり、高校生が島内で暮らすことが地域の活力を確保する道につながると判断してのことだ。
道教委は一律、機械的な判断ではなく、とりわけ地域別検討協議会での「聞き置く」姿勢を改め、地域住民や保護者、子どもたちの声に耳を傾け、子どもたちの学習権を保障する教育政策を進めるべきである。
▼地域の学校が果たしている多彩な役割にこそ光をあてるべきである
六月に開催された「第一回北海道総合教育会議」で、柴田教育長は「北海道の場合、百七十九市町村の五五%を占める八十六市町村で中学校が市町村に一校しかなく、五分の一に当たる三十六市町村で小学校も一校しかないのが実態。これ以上、統廃合を進めていくことがかなり難しい」と述べている。
現在二百三十五校ある道内の公立高校においても、二〇二〇年度には十校減の二百二十五校となり、自治体に公立高校のない地域は三〇%(五十四市町村)となる。自治体に公立高校が一校だけの地域も五三%(九十四市町村)になり、高校のない地域と合わせると八三%(百四十八市町村)にも達する。
道教委は八月、我々とのやり取りの中で、地域における高校の果たす役割を「単に教育機関としての役割だけではなく、地域のスポーツ、文化、生涯学習の拠点であり、地域産業へも貢献している。高校生が地域の行事に参加することで、地域が活性化するなど大きな役割を果たしている。経済効果も生まれている」と述べている。
さらに、学校は、住民の交流の場であるとともに、避難所や防災拠点の役割も担う多様な機能があるということを忘れてはならない。学校がなくなることで、地域と子どもたちの結びつきは希薄になり、人口減少・過疎化の進行とともに地域活力はますます低下する。
道教委は、「指針」に基づき機械的に実施している学校再編を地域の未来を左右する重大な問題であると捉え、地域の小規模校にしっかりと目を向け、自治体の将来像と重ね合わせて検討していくべきであるし、今春の知事選挙での高橋知事の公約でもあった「急速に進む人口減少と高齢化の克服」とも相容れない。
私たちは、希望するすべての子どもに学校教育を保障するため、地域の学校を守ることを求める。効率性一辺倒で、地域の文化、コミュニティーの中核としての役割を果たしている学校をなくしてはならない。
▼地域による教育「格差」解消が「輝きつづける北海道」につながる
教育基本法第四条の「教育の機会均等」には、「すべて国民は、等しく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、(略)教育上差別されない」と記されている。
しかし、総務省の都道府県別教育費(二〇一三年度)のデータで在学者一人当たりの学校教育費を比較すると、北海道の小学校は八位、中学校は七位、特別支援学校は二位にもかかわらず、高校・全日制は二十七位、定時制は二十六位、通信制は二十一位という状況で、道教委の予算に占める高校予算が他の学校種と比べて低く、全国的にも平均以下に抑えられている。
二〇一三年度全国学力テストの結果を受け、道教委は「〝平均点そのもの〟を追求しているわけではない。教育の機会均等という義務教育の趣旨を踏まえれば、本来、生まれ育ったところによって学力に大きな差があってはならず、すべての子どもたちに〝社会で自立するために最低限必要な学力〟を保障しなければならない。(略)子どもたちの自立や地域社会の発展にもかかわる問題」と述べている。
私たちも、教育の機会均等という趣旨を踏まえて、本来、生まれ育ったところによって教育環境に差があってはならず、すべての子どもたちに保障しなければならない問題であると考える。高校における一人当たりの学校教育費が全国と比べて低いということは、子どもたちの自立や地域社会の発展にかかわる問題であると考える。
どのような学校規模が良いのかは、地域の実情によって異なり、全道一律に決められるべきではない。少子化の進行しているいまだからこそ「指針」を改め、保護者や地域住民との丁寧な議論を積み重ねて決める必要がある。諸外国で学校規模が小さいのは、それだけ教育効果が高いからであり、子どもたちの人格形成・人間的成長にとっても効果的であることが実証されているからである。
高校配置や特別支援学校の増設の問題は、教育予算の充実と密接にかかわる問題である。国や道が進める、一部「エリート」養成への予算の集中化を正し、教育の機会均等の理念に照らした教育予算の充実と配分が求められる。
私たちは現在、国の責任による三十五人以下学級の前進、教育の無償化、教育条件の改善を求める「教育全国署名」に全力で取り組んでおり、「ゆきとどいた教育」を求めるすべての道民とともに運動を進めている。同時に、本道の教育課題や高校配置の在り方を積極的に議論し、「指針」による高校・特別支援学校の配置計画の問題点を明らかにする取組を、今後、さらに強めていくことをあらためて表明するものである。
(関係団体 2015-09-07付)
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