Pick Up2015② 道教委・高校教育検討委が発足 真に魅力ある高校づくり期待 注目される小規模校の方向性(道・道教委 2015-12-14付)
生涯学習実践者奨励表彰式
本年度当初時点で、道内百七十九市町村中、およそ三割に当たる五十市町村に公立高校がない。本年度末には、熊石高校が地域キャンパス校として初めて閉校する。“魅力ある教育の展開”を掲げる道教委の施策とは裏腹に、地元高校存続への危機感から、市町村立移管による高校存続や、自治体独自の支援策に活路を見いだす動きが加速している。一方、道教委は高校教育検討委員会を設け、再編基準の在り方等の検討を始めた。
道教委が十八年度に策定した「新たな高校教育に関する指針」をみると、一学年四~八学級を適正規模としている。一学年三学級以下の高校は近隣校との再編、離島を除く二学級以下は募集停止の対象となる。
道立の全日制高校二百二校をみると、再編基準の異なる離島や職業学科を除いても、一学年一学級の四十四校、二学級の三十六校が指針に基づく再編または募集停止の範囲に含まれる。道議会でも、地域における高校の役割として、「地域を支えていく人材がまちからいなくなる。地域で学び、そこで働きたいと考える若者もいる」などの意見がたびたび挙がるなど、その重要性を訴える声が後を絶たない。
熊石高校は、地域キャンパス校として初めて閉校となる。町内会の町民運動会への参加やイベントにおける吹奏楽演奏交流のほか、小・中学生の高校プール利用、スポーツ少年団の格技場活用ができなくなるなど、地域連携の面からも、廃校による地域住民への影響は大きい。
ことし三月、赤平高校が閉校した。地域から高校がなくなった赤平市の教育関係者は、「家庭的、精神的に課題を抱える生徒にとっては、きめ細かな指導ができる小規模の高校が必要だったのに」と肩を落とす。「高校がなくなることで若者の流出が増え、さらに人口が減り、地域の活力がなくなっていく」と懸念する声もある。
今後の高校配置計画をみると、二十八年度は小清水高校、旭川凌雲高校の校舎を使用して統合する旭川東栄高校、二十九年度は共和高校、滝上高校、新得高校、根室高校の校舎を使用して統合する根室西高校が募集を停止する。
一方、「地域のために高校をなくしてはいけない」と、市町村立の道を模索する自治体もある。
来年度、奥尻高校を道立から町立に移管する奥尻町教委。関係者は、「地元から高校がなくなることは、家庭の負担が大きくなってしまう」と口をそろえる。二十九年度には中学校二校を統合し、奥尻高校の敷地内に新校舎を建設。中高一貫教育を進めていく方針だ。「町立高校の方が、地元に密着した教育活動を行いやすいのでは」と期待する関係者の声もある。
道立として閉校後、新たに三笠市立として二十四年度に開校した三笠高校は、地域にとってなくてはならない高校に“生まれ変わった”。
市の主要産業である農業と食を生かすため、食物調理科を設置して四年目。小・中・高校の給食のメニューを生徒が考案したり、地域の祭りにボランティアで参加したりするなど、地域に果たす役割は大きい。「第八回貝印スイーツ甲子園」において、製菓コースのチームが全国優勝するなど、各種大会で実績を残している。
このほか、自治体独自で、道立高校に対して各種検定や模擬試験、自動車運転免許取得の費用、交通費、四年生大学進学者への給付型奨学金支給などを展開、検討する動きも盛んだ。
道教委はこれまで、魅力ある教育の展開を目指し、総合学科、単位制などを打ち出してきた。しかし、地域の関係者らは、「小規模校の良さを分かってほしい」「小規模校を中心に再編統合、募集停止をくり返しており、子どもたちの学習権保障、学習環境の向上など、子どもの側に立った視点を欠いている」と、これまでの施策に対して憤りを隠さない。
道教委は十一月、「新たな高校教育に関する指針」の成果や課題を検証するとともに、再編基準の在り方、地域と連携した教育環境の充実、高校の魅力を高め選択される高校づくりについて検討する「高校教育検討委員会」を発足させた。年度内に示される、小規模校の在り方の方向性が、「地域にとって真に魅力ある高校にすべき」(ある教育長)という声に応えるものになるのか、大きな期待がかかる。
(道・道教委 2015-12-14付)
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