Pick Up2015⑦ 十勝管内の若手教員育成 学校全体の指導力底上げに効果 ジョブシャドーイング・OJTの実践
(学校 2015-12-21付)

 卓越した教科指導力をもつ教員が初任者をマンツーマンで指導する―。こうした取組は、若手教員の力を伸ばすために理想的といえるが、学級担任や単独授業をもちながら実現するには、多くの困難を乗り越えなければならない。この課題に対する回答を提示しようとする学校がある。「ジョブシャドーイング」に取り組む帯広市立稲田小学校、「OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)」を進める帯広市立南町中学校。未来の教育を担う若手教員育成に向けて尽力する二校の取組を取材した。

 稲田小(斉藤昌之校長、児童数六四〇人)では、道教委が進める「初任者研修の抜本的改革に関する調査研究事業」の指定校として、「ジョブシャドーイング」に取り組んでいる。

 取組では、教科指導はもちろん学級経営や保護者とのコミュニケーション能力に優れ、後進の育成に情熱をもつ教員が初任者指導を担当。初任者は、学級担任や単独授業をもたずに研修に専念できる環境に身を置く。

 同校では、四年三組担任の西山乙代教諭が初任者指導教諭として初任者の鈴木麻里教諭を指導。「説明・発問・指示」「ノート指導」「指導案・週案づくり」「学級通信づくり」のほか、「一日担任」や「家庭訪問、保護者との対応」など、マンツーマンでその仕事術を伝えている。

 鈴木教諭は「単独の授業をもたず、研修に専念できることは大変ありがたい。今後は、指導してもらえることに受け身にならず、自ら積極的に研修し、資質・能力の向上に努めたい」と意気込む。

 西山教諭は「仕事の資質能力を向上させることはもちろんだが、教師になって良かったという気持ちを忘れないことを一番に考えて指導に当たっている」と指導の重要ポイントを強調。「日々の研修で成長しているのがひしひしと伝わる」と実感する。

 二人の様子を見守る斉藤校長は「ほかの教諭の指導力向上の底上げにもつながっている」と、鈴木教諭の成長がもたらす教職員全体への好影響に目を細める。

 同校では、西山教諭や斉藤校長の感じた〝手応え〟を確かなものにするため、さらにジョブシャドーイングの取組の研究を深めていく考えだ。

 一方、南町中(八重柏新治校長、生徒数六二九人)では、「OJT」を導入している。OJTとは、職場内で上司と部下、先輩と後輩などが仕事を共有する中で、必要な知識・技術・技能・態度などを指導・修得し、職場全体の業務処理能力や力量を高める活動のこと。同校では、「校務運営委員会」を設置し、OJT活動の内容を話し合っている。

 委員会は、校長、教頭、主幹教諭、教務主任、生徒指導主事、生徒会指導部長、保健主事、研修部長、学年主任(三人)の計十一人で構成されている。初任者を含めた教員の指導力向上を図るため、「生徒たちに朝読書を定着させ、落ち着いた一日の始まりを迎えさせよう」「朝の打ち合わせを早めに終わらせ、生徒の待っている教室に向かおう」などの具体的な方策を決定。会議に参加している各学年主任が、参加していないほかの教員に報告し、全体に周知している。

 同校の教職員は、同委員会が〝教員として身に付けたい力〟を明らかにする役割を果たしているととらえている。その結果、指導を受ける側だけではなく、指導をする側にとっても職務への意識向上につながっているとみている。

 八重柏校長は「この方式を取り入れる価値は高い」と手応えを口にする。初任者と指導担当者だけが大変な思いをするのではなく、「学校全体で学び合い、成長し、協働する職場づくりに非常に有効」と感じるという。

 十勝教育局の佐藤育子教育支援課長は「初任段階で先輩教諭の優れた実践を学び、具体的な指導のイメージをもつことは大切。初任者を学校全体で育てるということは、その学校のすべての教職員の指導力向上、学校全体の資質向上につながる」と高く評価する。

(シリーズおわり)

(学校 2015-12-21付)

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