Pick Up2015⑤ 函館市鍛神小「体力向上」の取組 学校全体で“良い空気感” 子の意欲刺激、外遊びへの誘導などが奏功(学校 2015-12-17付)
「縄チャレ週間」で自己新記録に挑戦。楽しく運動する習慣が身に付く
函館市立鍛神小学校四年二組の児童二十七人は、外遊びが大好きだ。中休み、昼休みには声を掛け合い、こぞって校庭に繰り出していく。児童が学ぶ教室は校舎最上階の三階にあり、校庭との往復には児童の足で五分ほどの時間が必要だが、面倒に思う児童はほとんどいない。四年生に進級してから一学期までは、外遊びに出る児童はクラスの約半数にすぎなかったという。それが、二学期の半ばになると、教室に残るのはわずかだ。なぜ、外遊びが増えたのか。
二十六年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果において、函館市の児童は、体格では全国平均を上回ったものの、実技に関しては握力を除くすべての項目で、総じて全国平均を下回る結果となった。
函館市教委は、こうした結果を憂慮し、二十七年度の函館市学校教育推進の指針「アプローチ」で、体力向上において「運動の日常化に向けて、意図的・計画的に取り組むこと」を達成目標に設定し、体を動かす「時間」の創出、「空間」の工夫を各学校に求めた。
鍛神小は、学校力向上の一環として「体力の向上」を重視。二十六年度に健康体力向上推進部を立ち上げた。一般教諭三人と栄養教諭、養護教諭各一人の計五人が運営業務を担当し、体力向上に関しては授業の改善に力を入れるとともに、道教委が実施する「どさんこ元気アップチャレンジ」への参加を決め、身近にある縄跳びを使った体力づくりに向けた取組をスタートさせた。
従前から鍛神小での体育では、体を動かす時間は十分確保されてきた。授業を終えて汗もかかずに教室に戻る児童はいないという。このため、推進部は、授業改善に当たって、普段の授業を大切にしつつ、体づくり運動やボール運動が児童たちの運動特性を改善・向上に導く上で、効果が期待できることを校内に示したほか、様々な体育の授業に合わせた具体的な準備運動や運動遊びを例示し、子どもたちの意欲を刺激することを促した。
また、体育館入口には「鬼ごっこ」「石けり」「縄跳びあそび」など、数多くの外遊びの方法をイラストを添えて掲示し、校庭に、遊びに必要なラインを引くなど、外遊びへ誘導する対策も行ってきた。
さらに、「とべ!かやげ縄チャレ」と題し、各学期に一度、年三回の「縄チャレ週間」を設定。制限時間三分間での縄跳び一回跳びの回数を記録し続けている。手軽な実践で仲間と協力し、楽しく運動を行う態度を身に付けることも目的とした活動だ。
外遊びに夢中になる児童たち。四年二組担任の打越亮介教諭は、健康体力向上推進部のメンバーの一人。教師になって六年目のことし、「子ども同士で励まし合ったり、認め合ったりする場面が生まれている」と、体力向上の取組に手応えを感じとっている。四年生になってから、「初めて跳び箱が跳べた」「鉄棒で逆上がりができた」と喜ぶ子どもたちの姿を見て、ともに喜びを分かち合ってきた。
縄跳びの活動では、児童一人ひとりの記録カードに、回数の記録とともに、練習量を累積で示す棒グラフも添える。人との競争ではなく、自分自身への挑戦を支え、応援することを常に心がける。今後は、縄跳びに限らず、体力測定の回数も年一回から年三回に増やすことや、測定の精度向上を課題ととらえる。
髙間猛教頭は「クラスごとでバラツキがあるが、休み時間に外遊びを行う子どもが着実に増えている」と話す。活動の積み重ねが成果となり、体力向上に限らず、現場に学校力向上の取組が着実に浸透しているとみる。
函館市教委の加賀重仁教育指導課長は「児童たちと直接ふれあう教員が力量を高め、元気あふれる姿でいることが大きな力となる。鍛神小では、良い“空気感”を醸し出している」と、今後も学校ぐるみの活動が広がっていくことを期待している。
(学校 2015-12-17付)
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