Pick Up2015⑥ 旭川市朝日小「課題解決型学習」 子が必要と感じる学びを 綿密な指導計画の立案が鍵に
(学校 2015-12-18付)

pickup⑥旭川
ホワイトボードを手に、ペアになって積極的に意見を交わす

 今月十五日、旭川市立朝日小学校(中山雅文校長)の三年生算数(米澤德之教諭、児童数三三人)の授業中。二等辺三角形の定義について、ホワイトボードを手に、積極的に意見を交わす児童たちの姿があった。「二つの辺が等しいわけだから、(折り紙の)折り目の長さが一緒だ」「(コンパスで描いた)円の半径は、どこでも同じ長さだから、これは二等辺三角形だよね」。米澤教諭は、できる限り手を出さず、児童たちの活動を見守った。同校が本年度、研究を進める課題解決型学習「アクティブ・ラーニング(=AL)」の一場面だ。次期学習指導要領に盛り込まれる方向で検討が進むAL型授業。本格導入が間近に迫る中、授業の在り方を模索する取組を追った。

 「課題の発見と解決に向けた主体的・協働的な学習」とされるAL。次期学習指導要領の改訂にかかわり、下村博文前文部科学大臣が中央教育審議会に、ALの在り方などについて諮問した。学校現場では、指導要領改訂に備えて、AL型授業の試行錯誤が続くが、「何をしたら良いのか…」(学校関係者)との不安も少なくない。ある小学校管理職は「今は情報を集め、手探りで進めている。行政が、指導事例集や研修会などで具体的な方策を示してくれれば」と本音を口にする。

 そうした中、道教委は本年度、同校を実践推進校に指定し、「課題解決型学習に関する調査研究プロジェクト」を始動させた。全教科におけるALの指導方法等の確立に向けた研究とともに、今後、ALを進めていく上での中核的指導教員の育成をねらうものだ。

 研究に当たっては、実践推進校と連携協力校四校の調査研究担当教員などで構成する「ALPS」(=Active Learning Project Staffs)を立ち上げた。これに加え、道立教育研究所や旭川市教委、上川教育研修センター、道教育大学も交えた連携協議会を組織した。

 研究で重点を置いたのは、一単位時間の中で「教えないで、気づかせる」ことを意識した授業づくり。中山校長は「児童の思考が活性化され、学習効果が高まるのでは」と期待する。同校の調査研究を担当する櫻井啓子教諭は「教員の教え過ぎ、しゃべり過ぎに気を付ける必要がある」と考えた。

 こうした考えをベースに、ALPSや連携協議会での議論、実験授業、日々の実践を踏まえた授業の在り方を検討。①学習過程の時間配分を検討する「課題設定重視」②児童へのかかわりを研究する「追求・解決・交流」③板書のキーワードを使って児童に学習のまとめをさせる「まとめ・振り返り・吟味」―の三点それぞれに比重を置いた三つの授業モデルの検証を進めることとした。

 十五日に行われた授業は、「追求・解決・交流」のモデルを検証するもの。米澤教諭は、前時の学習を振り返らせてから本時の問題を投げかけ、児童たちのペア交流を促した。全体発表後、児童たちは、板書をもとに自分の言葉で学習をまとめ、練習問題で学習の定着を図った。

これまでの研究について櫻井教諭は「児童たちが必要と感じる学びとなるよう、授業を工夫しなくてはならない」と課題を挙げる。旭川市教委教育指導課の常盤慎一主査は「本時の目標を達成できる交流の設定が大切」と指摘。連携協力校の旭川市立大有小学校で調査研究担当教員を務める高橋憲嗣教諭は「各教科の特質を踏まえたアクティブ・ラーニングを、今まで以上に検討する必要がある」と話す。

中山校長は、質の高いALに取り組むためには、「人材やICT機器の充実に加え、綿密な指導計画を立てられる時間的な余裕が必要」と強調する。

道教委では、「本プロジェクトによって、学習過程等の改善が図られ、子どもが主体的・協働的に学習を進めるようになっている」と評価する。同プロジェクトの成果とその普及が、AL型授業の円滑実施の鍵を握る。

(学校 2015-12-18付)

その他の記事( 学校)

札幌きくすいもとまち幼が公開保育 伝え合う力を育てる 積み木、相撲などの遊び通し

きくすいもとまち幼公開保育  札幌市立きくすいもとまち幼稚園(加藤貴子園長)は十八日、同園で地域公開保育を開催した=写真=。研究主題を「伝え合う力を育てる」と設定。積み木や相撲、お店ごっこなど幼児が友達と思いを伝え合い...

(2015-12-24)  全て読む

富良野高生が保護者、教諭と懇談 望ましい利用法考える インターネットなど生活習慣議論

富良野高PST懇談会  【旭川発】富良野高校(嶋岡裕泰校長)は十一月中旬、同校でPST懇談会を開き、望ましいインターネット利用について考えた。文部科学省の「中高生を中心とした生活習慣マネジメント・サポート事業」の...

(2015-12-22)  全て読む

文科省SSH指定の旭川西高 科学への関心深めて 理数科2年が課題研究の成果報告

旭川西高SSH発表会  【旭川発】文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)事業指定校の旭川西高校(今井悟校長)は十二日、同校で二十七年度課題研究発表会を開いた=写真=。同校一・二年生と保護者を合わせ、...

(2015-12-21)  全て読む

Pick Up2015⑦ 十勝管内の若手教員育成 学校全体の指導力底上げに効果 ジョブシャドーイング・OJTの実践

 卓越した教科指導力をもつ教員が初任者をマンツーマンで指導する―。こうした取組は、若手教員の力を伸ばすために理想的といえるが、学級担任や単独授業をもちながら実現するには、多くの困難を乗り越え...

(2015-12-21)  全て読む

札幌市南の沢小が東海大留学生と交流 昔の遊び一緒に楽しむ スウェーデンの学生9人来校

南の沢小留学生との交流  札幌市立南の沢小学校(村上裕子校長)は七日、同校で東海大学留学生との交流会を開催した=写真=。スウェーデンのヨーテボリ大学の学生九人が来校。三~六年生の児童三百三十人は、日本伝統の遊びを紹...

(2015-12-18)  全て読む

札幌市日新小が〝食指導〟 好き嫌いせず食べよう 札幌市宮の森小の栄養教諭招く

日新小食指導  札幌市立日新小学校(荒川巌校長)は十一月下旬、一年三組で「食指導」を行った=写真=。札幌市立宮の森小学校の小野塚かずみ栄養教諭が指導。小野塚教諭は、子どもたちが元気に成長するため、好き嫌い...

(2015-12-17)  全て読む

Pick Up2015⑤ 函館市鍛神小「体力向上」の取組 学校全体で“良い空気感” 子の意欲刺激、外遊びへの誘導などが奏功

pickup⑤鍛神小  函館市立鍛神小学校四年二組の児童二十七人は、外遊びが大好きだ。中休み、昼休みには声を掛け合い、こぞって校庭に繰り出していく。児童が学ぶ教室は校舎最上階の三階にあり、校庭との往復には児童の足...

(2015-12-17)  全て読む

室蘭東翔高と室蘭聾が交流会開く メリークリスマ~ス!! プレゼント交換などで親睦

室蘭聾室蘭東翔高の交流事業  【室蘭発】室蘭東翔高校(別所正一校長)と室蘭聾学校(小嶋義勝校長)は九日、フレンドシップ憲章の一環として室蘭聾学校寄宿舎で第一回交流会を開催した。両校の児童生徒たちは、しりとりやクリスマス...

(2015-12-16)  全て読む

歌志内小の生活科「昔の遊び」 けん玉で集中力アップ! 空知局・佐々木氏の妙技に驚き

歌志内小けんだま授業  【岩見沢発】歌志内市立歌志内小学校(阿部舟校長)は四日、けん玉名人である空知教育局道立学校運営支援室の佐々木桂主任を招いて、同校でけん玉授業を実施した。一・二年生三十人が参加。佐々木主任が...

(2015-12-16)  全て読む

道内初、内閣総理大臣賞に輝く 札幌市厚別南中の平井さん 税の作文コンクール61万編の中から

厚別南中平井菜花作文コンクール  札幌市立厚別南中学校(荻原啓校長)の平井菜花さん(二年生)は、国税庁と全国納税貯蓄組合連合会が実施する税の作文コンクールに応募し、北海道では初めてとなる内閣総理大臣賞を受賞した=写真=。九...

(2015-12-16)  全て読む