スポーツ事故防止対策推進へセミナー きめ細かい危機管理を 160人が外傷予防策など議論
(関係団体 2016-01-13付)

スポーツ事故防止対策セミナー
スポーツ事故防止対策推進事業セミナー

 独立行政法人日本スポーツ振興センターは八日、札幌コンベンションセンターでスポーツ庁委託事業スポーツ事故防止対策推進事業セミナー「学校でのスポーツ事故を防ぐために」を開催した=写真=。本年度、全国六会場で行っているもので、道内では初開催。小・中学校の教職員など約百六十人が参加し、講演やパネルディスカッションを通して、きめ細かい危機管理の必要性を確認したほか、水泳の飛び込みの事故や柔道における頭頚部外傷などの予防策について考えた。

 スポーツ事故防止対策推進事業では、体育活動中に死亡等の事故が生じないよう、発生原因・背景、防止のための留意点や方策について医療関係者等と連携して分析。調査研究の成果を情報共有し、スポーツ事故の防止を目指している。

 昨年度、全国三ヵ所で行ったセミナー。本年度は、本道を含め六ヵ所で開催することとした。

 冒頭、主催者を代表して井上重幸理事があいさつ。これまでの取組を振り返り、「関係者の皆さんが情報を共有し、必要な取組や相互連携について協議し、体育活動における事故の減少や事故防止につなげてほしい」と呼びかけた。

 次いで、東京女子体育大学教授の戸田芳雄氏が事業概要を説明した。十~二十六年度に発生した体育活動の事故で、災害救済給付の死亡見舞金および障害見舞金を給付した死亡・重度障害事故などの傾向を調査した結果、類似の事故を繰り返さないためのポイントとして、「スポーツ事故の防止はヒヤリハットに学び、きめの細かい危機管理を進める」「用具の積極的な活用を検討・工夫」など十二項目を提示。「当面の事故を防止する中で、生涯にわたる安全能力の基礎を培い、安全文化の創造を目指してほしい」と求めた。

 このあとのパネルディスカッションでは、パネリストに東京都高校体育連盟水泳専門部常任委員で東京大学教育学部付属中等教育学校教諭の井口成明氏、JCHO東京新宿メディカルセンター整形外科医長の紙谷武氏、道高校体育連盟会長で札幌北陵高校長の藤岡二朗氏、日本スポーツ歯科医学会理事長・日本安全教育学会理事・日本臨床スポーツ医学会理事で明海大学学長の安井利一氏を迎えた。

 井口教諭は「水泳の飛び込みにおける危険性とその対策」をテーマに発表した。中学校ではプールの飛び込みが禁止され、飛び込み台もなく十分な指導ができていない一方、競泳大会では飛び込みをしていること、練習をせず見よう見まねで跳び込んで事故が起きていることを指摘。

 飛び込みによる事故やヒヤリとする経験をした水泳部の中高生が半数近くにのぼるアンケート結果も示し、「生徒は自己判断で“大丈夫”“恥ずかしい”“怒られそう”という理由で顧問に報告していない。指導者が認識している以上に生徒は危険な経験をしている」と述べた。

 今後の対策としては、「水泳の飛び込みは十分な練習と指導が必要」という認識を指導者に再確認させること、監視員なしのプールでの遊泳禁止、飛び込み用の教材開発、指導資料の配布、講習会の開催などを提案した。

 「医師の立場からみた柔道による重症頭頚部外傷の現状と予防」について話した紙谷氏は、大外刈りで投げられた生徒が急性硬膜下血腫となった事故が多いことを報告。頭部が床に衝突し、頭蓋骨と大脳の摩擦によって静脈が切れ、脳の表面で出血し、脳を圧迫することをダミー人形を使った実験で紹介した。

 「身長差が大きいと頭から落ちやすくなるので、体格差をそろえることが大切」「後方受け身は難しいため、側方受け身をとるようにすべきであり、投げる側の指導も必要」と述べ、指導方法の見直しと受け身の練習強化、指導者への講習開催などを予防策に挙げた。

 藤岡氏は、道高体連で『運動部活動顧問のための安全対策マニュアル』を作成・配布するなどスポーツ事故防止に取り組んできたことを報告。安井氏は、歯・口腔の外傷を防ぐマウスガードの効果を発表した。

(関係団体 2016-01-13付)

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