4種校長会長28年新春インタビュー①北海道小学校長会会長・松井光一氏 〝チーム北海道〟具現化へ 本道教育の質向上目指して(関係団体 2016-01-13付)
北海道小学校長会・松井光一会長
―新年に当たって校長会としての展望をお聞かせ下さい
初夢に、ビル清掃のプロで羽田空港に勤務されている日本一の清掃員、新津春子さんが出てきて言いました。
「目標をもって、日々努力し、どんな仕事でも心を込めることができる人が、プロフェッショナルだと思います」。また、こう続けます。「私は、清掃の仕事が大好きです。自分にとって大事なことがはっきりしていれば、だれが何を言っても、左右されることはありません」。
二十八年の学習指導要領改訂の年度を迎えるという今、平成の大きな教育改革の荒波を前にした私たちにとって、大切な立ち位置を示唆してくれるものだと思い、ぱっと目が覚めました。
昨年十二月二十一日には、第百四回中央教育審議会総会が行われ、大きく三つの答申案が議題に上がりました。
一つ目は、「新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方について」です。
二十七年四月の諮問を受け、中教審生涯学習分科会の「学校地域協働部会」が、「学校と地域がパートナーとなり、連携・協働体制を築くための地域人材の養成と環境整備」について審議してきました。同時に、中教審初等中等教育分科会の「地域とともにある学校の在り方に関する作業部会」が、「今後のコミュニティ・スクールの在り方とその総合的な推進方策等」について審議してきましたが、今回は合同で検討を行い、一つの答申案として、「新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方について(答申案について)」が出てきました。中の資料では「“チームとしての学校”と“学校と地域の効果的な連携・協働と推進体制”の関係」(イメージ)として、コミュニティ・スクールと、地域学校協働本部との連携・協働が描かれています。
簡単に言うと、今まで学校は、地域の支援をいただくという形で運営されてきましたが、これからは地域をつくっていく側の立場として、つまり、対等の立場で学校と地域が連携・協働していくことになると思われます。
全国連合小学校長会では、新たな学校の負担にならないことを重点的に配慮するよう要請してきました。しかし、実際に施策になってくるときには、都道府県教委から降りてきて、各学校の負担が大きくなることも懸念されるので、いつのタイミングで全連小としての考えを表明していくかを考えています。
二つ目は、「これからの学校教育を担う教職員やチームとしての学校の在り方」についてです。中教審初等中等教育分科会の「教員養成部会」が、「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上」について審議してきました。
三つ目は、中教審初等中等教育分科会の「チームとしての学校・教職員の在り方に関する作業部会」では、「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策」について審議してきました。そこで、中教審総会では、それぞれ議題(1)、議題(2)として検討されています。
道小としては、アンテナを高くして最新の情報を手に入れ、このような膨大な量の資料を読み解きながら意見表明をしていかなければなりません。
◆スピード感をもって情報共有
―校長会の抱える課題と対策について伺います
確かな学力、豊かな心、健やかな体の調和を重視する「生きる力」を育む教育活動を充実させる中で、子ども一人ひとりに、社会で自立して生きていく上で必要な学力や体力、望ましい生活習慣や規範意識を確実に身に付けさせることは、本道のすべての学校の喫緊の課題であると認識しております。
さらに、生涯学習の基礎である「自ら学び、考え、行動する力」を確実に育て、多様で変化の激しい社会の中で「生きぬく力」を育成していくことが、今、求められていると考えており、これまでも各学校や地区校長会において、「学校改善」や「授業改善」に取り組み、子どもと向き合う活動の充実を通して具現化を図っています。
教育改革の様々な動きの中で、本道教育の質の向上を目指すためには、「授業改善」が最も重要であるととらえ、特に、授業を支える安定した学級ともいうべき、「学ぶ習慣のある学級づくり」と、「教員の授業力向上」が大切であると考えています。
「学ぶ習慣のある学級づくり」についてですが、学級集団の状態を良好にし、支え合い、学び合い、高め合いのある教育力の高い学級集団に育成することができれば、学力向上を目指すことができるとともに、いじめや不登校を予防し、通常学級にいる特別な支援が必要な子どもの指導にも良い影響が出るという論をもとにして、教育環境を整えることが課題です。
「教員の授業力向上」についてですが、教育活動の命は、教員の授業であり、確かな学力の向上は、毎日の授業改善にかかっています。しかし、一年間の学校での授業時数より、一年間にテレビゲームをしたり、テレビやビデオを視聴したりする時間が多い児童がたくさんいることが、以前から指摘されています。学校での授業が、ゲームやテレビより魅力的なものとなり、子どもにとっての充実感や達成感のある授業が必要であり、「授業力向上」に向けた研修の充実と、アクティブ・ラーニング等の授業の在り方の普及・啓発が課題です。
また、各地区の困り感として、人的配置が大きな課題となっています。定数内教諭や期限付き教諭の不足、管理職やミドルリーダーの人材不足が喫緊の課題です。
さらに、統合問題など地域における学校の役割が関心事となり、これからの学校像として、チーム学校やコミュニティ・スクールに関する課題も出てきています。
これらの課題を解決するために、つぎの四点を重点にして取り組んでいます。
一つ目は最新情報の把握・提供。
私たち校長は、最新の正しい情報を素早く手に入れることが適切な学校運営にとって必要です。
これからの時代、未来を見据えていくためにも、現状を直視し正しく分析するとともに、将来を予想していく時代感覚が望まれます。
子どもたちに充実した“今”と希望の見える“明日”を支える教育活動を展開するために、「アンテナを高くして最新の情報を共有し、提供すること」を第一に考えていきたいと思います。
二つ目に意見表明や要望活動。
毎年、各地区からいただいた要望をまとめ、次年度に向けた「北海道文教施策・予算策定に関する要望書」を、道中・道公教とともに作成し、道教委に要望しています。昨年は「本道教育の質の向上を目指した授業改善」のために、「新しい時代を見据えた本道教育の質の向上についての提言~チーム北海道として」という提言を行いました。この提言は、本道の教育環境や施策に対する各校長先生方の声そのものであるととらえています。
今後も、その時々の状況を、アンテナを高くして把握し、喫緊の課題に対し、スピード感のある情報の共有化を大切にするとともに、意見表明や要望活動に結び付けていきたいと考えています。
三つ目は「チーム北海道」として、他の教育関係団体と協働する道小。
教育行政とは、「協力するところは協力し、主張すべきところは主張する」という姿勢を継続し、道教委を含めた教育関係機関、団体と「チーム北海道」としてのコラボレーションこそが、困難と思える目の前にある教育課題の打開に必ずやつながるのではないかと考えています。
道中学校長会、道公立学校教頭会はもちろん、道教委や各市町村教委等の教育行政機関とコラボレーションしながら進んでいくことが大切です。また、道PTA連合会との協働による保護者や地域への啓発、各大学や道立教育研究所など研究・研修センター機関、さらに、各教育活動を推進している民間教育団体等とのコラボレーションによるさらなる研修活動の充実は、とても重要なポイントとなります。
まさに、「未来を見据え、チーム北海道として進む道小」というキャッチフレーズの具現化を考えています。
四つ目は、校長力の向上を目指すための研修と組織の改善です。
毎年実施する道小研究大会が充実した大会となるよう、分科会の運営などについて検討し、校長のリーダーシップについての研修を行うとともに、全国大会や道小大会の内容を各地区に還流することが重要であると考えています。
また、校長会としての役割を自覚し、その活動を後退させることなく、活動改善と充実に向け、検討を重ねていきたいと考えています。会員の減少による活動のスリム化と、校長の職能の向上を図ることを重視し、今後の道小の組織や活動の充実・改善等について「組織の在り方検討委員会」を中心に検討していきます。
―新年度の重点的な取組についてお聞かせ下さい
新年度の活動の検討課題は三つあります。
一つ目は「学習指導要領改訂をはじめとする教育改革の動向」を踏まえることが必要です。先に述べた中教審の各答申をはじめ、新たに動き出す教育再生実行会議の内容、そして、何よりも本丸である学習指導要領の改訂の動向について、アンテナを高くしていかなければなりません。
二つ目は「教職員定数改善をはじめとする教育諸条件の整備」です。これは本年度、道小と道中、加えて道教委、道P連等の教育関係諸団体が、心を一つに「チーム北海道」として、ずっと取り組んできたことです。教職員定数の改善について教育諸条件の整備等の意見表明をしていなければならないと考えています。
三つ目は、「道小組織の強化と活性化」です。各道府県では、二十九年度から政令指定都市への税源移譲問題があります。道小組織の凝集性を高めるということで校長会の在り方、活性化が課題となってきます。
これらを踏まえて、来年どうしていくのかという活動方針案の作成をしていかなければなりません。
道小は、「正論をもって、正道を歩む」という理念のもと、「未来を見据え、チーム北海道として進む道小」としての姿勢を大切にしながら、今後も本道教育の振興に取り組んでいきます。
(まつい・こういち)
昭和54年道教育大札幌分校卒。札幌市立八軒西小を皮切りに、58年前田北小、平成2年道教育大附属札幌小、9年札幌市教委に勤務。16年屯田小教頭、18年幌南小教頭、21年手稲北小教頭、23年手稲北小校長を経て、25年手稲東小校長。
昭和31年11月4日生まれ、59歳。札幌市出身。
(関係団体 2016-01-13付)
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