生きがい・働きがいもって 道高校長協会後期研―富田会長あいさつ概要(関係団体 2016-01-12付)
道高校長協会後期研―富田会長あいさつ
二十七年度道高校長協会後期研究協議会(六日、ホテルライフォート札幌、八日付1面既報)における、富田敏明会長=写真=のあいさつ概要はつぎのとおり。
▼はじめに
昨年来、国際情勢は不安感を増し、加えて地球環境の劣化、資源の枯渇、地域間格差の拡大といった地球規模の課題がより深刻化してきている。
第二次世界大戦中のフランスで、六歳のときにユダヤ人一斉検挙から九死に一生を得た、精神科医で作家のボリス・シリュルニクは、昨年十一月のパリのテロ事件後、新聞のインタビューでつぎのように語っている。「憎しみの連鎖を絶つには、自分たちとは違うものを見いだす喜びを子どもたちに教えなければならない。文化、科学、宗教においても他者を発見し、自分と違うものを見いだす喜びを知ることが大切である」。
私たちが携わる教育の世界では、「開かれた教育」という言葉がよく使われるが、グローバル化が進行する状況にあっては、自分と異なる他者を発見することに喜びを見いだすことも、「開かれた教育」の大切な要素になると感じている。
将来の北海道、そして、日本を担う人を育むために、高校教育は何をすべきかという問いを、あらためて問われているような新春である。
新しい年も、校長先生方がそれぞれのよって立つ教育理念のもと、学校教育目標の具現化に向けて、生きがいと働きがいをもって毎日の仕事に当たる一年になることを強く願うものである。
ここで、高校教育にかかわる課題等三点についてふれさせていただく。
▼全国情勢
教育改革にかかわり、現在、検討が進められているのは、高大接続システム改革会議における高校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革、中央教育審議会(中教審)教育課程企画特別部会における学習指導要領改訂などであり、このほか、中教審教員養成部会で検討されていた教員の資質能力向上と、同じく中教審「チームとしての学校・教職員の在り方に関する作業部会」で検討されていた「チーム学校」については、昨年末に答申が出された。
このうち、高大接続にかかわっては、昨年九月に中間まとめが公表され、当初の予定では、昨年末までに「まとめ」が出される予定であったのが、現時点では、まだ出されていない。
仮称・大学入学希望者学力評価テストについては、昨年末に国語と数学の問題イメージが公表されたが、あくまでたたき台の段階である。
一般的に、学力の上位層の生徒は、抽象的な教育目標や形式の変更にもあまり惑わされず、柔軟に対応することが可能だが、ボリュームゾーンである学力中下位層は、それほど器用ではないという現実がある。生徒の混乱と動揺を避けること、そして、学力の二極分化がさらに進むような結果にならないことを強く願うものである。
学習指導要領については、二十八年度中に中教審答申が公表され、高校については、二十九年度中に告示、三十四年度から年次進行で実施される予定である。
各学校では、教育目標を実現するために、学習指導要領に基づき、どのような教育課程を編成し、どのようにそれを実施・評価し、改善していくのかというカリキュラム・マネジメントの確立が求められている。カリキュラム・マネジメントとアクティブ・ラーニングは、授業改善をはじめ、組織運営の改善など、学校の全体的な改善への働きかけとして、車の両輪と位置付け、相互の連携を図り、機能させることが大切であり、このことは、現行の学習指導要領においても、しっかり取り組んでいかなければならないものと考えている。
▼道内の情勢
昨年四月の教育委員会制度改正によって、すべての地方公共団体に「総合教育会議」が設置されることとなったが、道においても、昨年十月に総合教育会議を受け、知事によって「北海道総合教育大綱」が策定された。
大綱では、本道教育の基本方針と、二十三の施策項目からなる、各分野における取組方針が示された。
現在、本協会では、新たな大綱を受けて、来年度以降の活動方針にどのように反映させるか検討中だが、「北海道の未来を担う人を育む高等学校教育の創造」という、本年度の活動方針は、大綱の目指す方向性と軌を一にするものと判断している。
大綱の施策項目2の「確かな学力を育む教育の推進」においては、「高校における学校ごと・学科ごとの目標を一層明確にし、創意工夫を生かした教育課程の編成・実施を通して、各学校における特色ある教育活動を推進」するという取組方針が示されている。先ほど言及したカリキュラム・マネジメントの確立と深いかかわりのある施策項目であり、今後、各学校においては、育成すべき資質・能力を踏まえた教育課程の構造化が一層求められており、校長協会においても、研究・研修の深化を図っていかなければならないと考えている。
▼校長協会の抱える課題等
昨年は、本協会の会員である校長の無免許運転等が発覚するという、あってはならない事故が発生した。服務規律の保持を職員に指導すべき立場にある校長として許されない行為であり、言いようのない怒りと、会員の不祥事に対する申し訳ない気持ちが入り交じった心境が続いている。
本協会では、一昨年、「不祥事防止委員会」を立ち上げて、当時、有朋高校長であった村田教育指導監を中心に、五人の校長先生方の献身的な努力によって、『管理職研修資料』を作成した。以来、各支部の研究協議会等で継続的に研修を進めてきたが、今後も、研修資料を随時改訂しながら、校長同士の研修を継続していかなければならないと考えているので、協力をお願いする。
つぎに、研究・研修の充実について。
本年度も、調査研究部の校長先生方の努力によって、『研究報告書第四十四号』が完成した。調査研究を担当した四委員会、二小委員会の校長先生方に心より敬意を表する。また、調査研究に当たり、アンケート調査や実践例の提供などで協力いただいた全会員の皆さんに、この場を借りてお礼申し上げる。
調査研究においては、継続性を意識しつつも、常に新たな視点で、課題発見、課題発掘に努めている。そして、正解のない問いに対して、校長同士が議論し合い、最終的に提言型の研究成果につなげてきている。ぜひ、今回の後期研での研修成果を学校に持ち帰り、学校経営のますますの充実に活用していただくことをお願いする。
校長協会にかかわる事項の最後になるが、本年度から新たな取組として、「道高校長協会社会貢献プロジェクト」を企画・実施した。
理念としては、社会貢献という志を高く掲げつつ、個人の負担を軽くするとともに、いい意味で遊び心も加え、長期的に継続できる取組を目指している。
日本には、寄附文化がないとよく言われる。大震災などの自然災害のときは、一時的に寄付額が増えても、一過性で長く続かないという指摘である。校長協会のこのささやかな取組が、日本の寄附文化の定着に、いくばくかでも貢献するという、大げさな願いを、ことしの初夢としたいと思う。
会長を拝命したこの二年間は、「協会運営に当たっての基本的な考え方として、研究・研修の充実は本協会の中核であり、生命線であるということ」、そして、「会員相互の自由闊達な議論によって、課題の解決方策を見いだすことが、歴代の校長先生方が守り育ててきた本協会の伝統であり、強みでもあるということ」を、ことあるごとに申し上げてきたような気がする。
「議論なくして活力なし」「納得なくして意欲なし」というのは、私たちが預かる学校にも当てはまることだが、本協会においても、お互いに意見やアイデアを出し合い、課題解決に向けて、協働性を発揮することが大切だと考えている。
新しい年も、校長協会の会員の皆さんが、自由闊達な意見交換を通して、課題解決に当たる年にしたい。
(関係団体 2016-01-12付)
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