活力あふれるプロ集団に 道高校長協会第3回理事研で富田会長(関係団体 2016-02-10付)
あいさつする富田会長
道高校長協会(富田敏明会長)は五日、道庁赤れんが庁舎で二十七年度第三回理事研究協議会を開いた。あいさつに立った富田会長=写真=は、教育をめぐる国の動向を展望。また、入学者選抜業務について、「年度末の多忙な中での実施や、例年実施していることへの慣れから来るミスが生じないよう、努めていく必要がある」と述べた。協会活動については、調査研究部の研究成果の活用や社会貢献プロジェクトの推進を要請するとともに、「これまで以上に活力あふれる専門家集団、プロ集団であり続けることを期待する」と呼びかけた。
富田会長のあいさつ概要はつぎのとおり。
◇ ◇ ◇
昨年の後期研での講演において、札幌学院大学教授の臼田博氏は、学力形成に対する非知能要因の影響について言及した。楽観主義、グリット(忍耐力、目標に向け努力し続けること)、自己制御スキルなどは、学力に大きな影響を与えるという。感心したのは、そういう結論を導き出すために、アメリカの研究は、十年から二十年という長期的スパンで行われているということである。
教育経済学者の中室牧子氏の『〝学力〟の経済学』という本が昨年から話題になっている。日本の教育をめぐる言説や政策は、科学的根拠(エビデンス)を欠いているという指摘が根底にある。本の内容のほとんどがアメリカの研究結果であり、その点を批判する意見もあるようだ。しかし、昨年、臼田氏の講演を聞いているため、この本のある部分はすとんと落ちた。
中室氏は、「自制心」や「グリット(やり抜く力)」を非認知能力と呼び、非認知能力の高さと社会で成功することの相関関係は高いことを紹介している。そこから、「定期試験で数点を上げるために、部活や生徒会、社会貢献活動をやめさせたりすることには慎重であるべき」という結論を導いている。
昨今は、教育を論ずるときに、「エビデンスを示せ」という言葉をよく聞く。そういう場合の反論としては、「教育は短期間で成果の出るものではない」という言葉もよく聞く。しかし、中室氏は、部活動等を制限することは、「長い目でみて、子どもたちを助けてくれるであろう非認知能力を培う、貴重な機会を奪うことになりかねない」ということを、エビデンスを示しながら主張している。
それでも、エビデンス重視は個人の好みではないが、印象や勘だけに頼って議論が迷走するのを避けるために、新たな理論や手法に、柔軟に対応する必要性は今後、高まるだろう。
なお、今、話題にした非認知要因や非認知能力については、高校教育の今後の課題である、多面的な評価を考えるときに、重要なポイントの一つになると考える。
何点かの課題について申し上げる。
▼国の動き等
教育再生実行会議は、昨年七月に第八次提言「教育立国実現のための教育投資・教育財源の在り方について」を出し、一応、区切りが付いた印象があったが、現在は新たな検討課題について議論が行われている。テーマは「情報化時代に求められる〝多様な個性が長所として肯定され活かされる教育〟への転換」である。
様々な才能や可能性をもちながら、集団での生活や行動になじみにくい子どもたち、心身の障害や発達障害、不登校、家庭の経済状況、保護者の養育能力などによって、学校では力を十分に伸ばせていない子どもたちに焦点を当てて論議が進められていくものと考える。「多様性(ダイバーシティ)」がキーワードである。
中教審関係では、「教員養成部会」の答申を受けて、都道府県等の各教育委員会ごとに、「教員養成協議会(仮称)」の設置が義務付けられる。協議会においては、「初任者」「中堅」「ベテラン」などの各段階で習得しておくべき資質・能力を示した教育養成指標を作成する。また、養成段階で、「学校インターンシップ」が導入される。一連の施策実施は、二十九年度以降である。また、「教育課程部会」では、学習指導要領改訂に向けた検討が行われているが、学習・指導方法の在り方(アクティブ・ラーニング)や学習評価方法の在り方が検討の大きな柱である。
高大接続システム改革会議においては、高校基礎学力テスト(仮称)および大学入学希望者学力評価テスト(仮称)の在り方と多面的な評価について検討が進められている。本年度中に報告書がまとめられる予定であるが、高校教育の現実を踏まえた、具体的な報告を強く期待する。
▼高校長協会の活動等
▽活動方針
本年度は、基本テーマのうち、主題である「北海道の未来を担う人を育む高校教育の創造」は継続、副題については見直しを進めて、「主体的に学び、社会で生きる力の育成を目指す」に変更した。また、副題の変更に伴い、「趣旨」についても、全面的に書き換えた。
来年度については、昨年十月に策定された北海道総合教育大綱で示された「本道教育のめざす姿」を踏まえて、副題を一部加筆して、「主体的に学び、社会で自立して生きる力の育成を目指す」とする案を作成した。
▽調査研究部の研究成果
本年度についても、充実した研究活動が行われ、通巻四十四号となる報告書をまとめることができた。後期研での発表、主査・委員長研での次年度に向けての方向性の確認、そして、道教委への報告会で提言した。
調査研究部は、支部長研と併せ、本協会の大きな柱であり、研究活動は全国的にも高い評価を得ており、各委員の方々に感謝申し上げる。各学校での活用をお願いしたい。
▽道高校長協会社会貢献プロジェクト
本年度の新たな取組である、「道高校長協会社会貢献プロジェクト」に協力いただき、感謝申し上げる。
先日の後期研で第一回目の集計を行い、総額一千六十四ハピーが集まった。さっそく、このうち、二百五十ハピーを公益財団法人日本ユニセフ協会協定地域組織北海道ユニセフ協会に寄付し、ノート、鉛筆、地図など四十人分の教材を途上国の子どもたちに届けることとした。
今後の寄付の用途等については、会員のアイデアをいただきながら考えていきたい。将来は、学校建設も視野に入れて、息の長い活動としていきたいので、協力をお願いする。
次回は、前期研において、集計の予定である。
▼入学者選抜業務
道民からの関心が高い、高校の入学者選抜の業務が続いているが、各学校においては、卒業式をはじめ、年度末の多忙な中での実施や、例年実施していることへの慣れから来るミスが生じないよう、努めていく必要がある。
特に、昨年度は、他県公立高校の採点ミスが全国的なニュースとなったことを受けて、採点、点検等に、例年より多くの時間を費やした学校が多かった。
本年度も、『入学者選抜の手引』や校内マニュアルに基づいて、ミスのないよう、しっかり取り組んでいきたい。
▼最後に
今回が、本年度最後の理事研究協議会である。自校の課題を抱えながら、理事として業務を担っていただき感謝申し上げる。また、勇退される校長先生方には、本道の高校教育、そして、校長協会の活動に対して貢献いただいたことに感謝申し上げる。
学校経営に当たっては、「議論なくして活力なし」「納得なくして意欲なし」「信頼なくして指導なし」「尊敬なくして管理なし」という思いを大切に、日々の仕事に向き合ってきたが、校長職というのは経験を積めば積むほど、つぎからつぎへと課題や問いがわき出てくるもので、その課題や問いへの答えを考えているうちに、ゴールが目の前にあるというのが実感である。
校長協会としては、校長同士が自由闊達な議論を通して、課題解決への方策を探ってきた。「議論なくして活力なし」であり、今後、校長協会がこれまで以上に活力あふれる専門家集団、プロ集団であり続けることを期待している。
(関係団体 2016-02-10付)
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