子どもの成長の姿で活動評価 道小・松井会長のあいさつ概要―第6回理事研
(関係団体 2016-03-03付)

道小理事研松井会長あいさつ
あいさつする松井会長

 二月二十六日にホテルライフォート札幌で開かれた道小学校長会第六回理事研修会(二日付1面既報)における、松井光一会長=写真=のあいさつ概要はつぎのとおり。

  ◇   ◇   ◇

 この一年、副会長、理事の皆さんとともに、本道教育の諸課題の解決に向けて積極的に取組を進めることができたことを大変光栄に思っている。この場をお借りして厚くお礼申し上げる。

 本日は、新年度に向けての道小活動の基本方針等について検討いただき、その内容を五月の総会に提案することになる。どうぞよろしく審議をお願いしたい。

 さて、教育改革の動きから四点についてお話しする。

▽学習指導要領改訂の動き

 現在、急ピッチで進められている。昨年八月に中央教育審議会の教育課程企画特別部会から出された論点整理をもとに、教科ごとの作業部会がかなりの回数で開催されている。

 また、ことし一月中旬からは、学校段階ごとの部会も開催され始めた。各教科の作業部会が、各学校種を通して該当の教科について審議する縦串だとすると、学校段階ごとの部会は、該当の学校種で指導する教科等を横断的に審議する横串になる。

 小学校部会は、一月二十日に第一回が開催され、その後、月二回ペースで開催されている。

 小学校部会における検討事項としては、五点ある。

 一点目は、「社会に開かれた教育課程」の視点に立った小学校教育の改善についてである。これからの社会の在り方を見据えた、小学校教育の改善の方向性や、低・中・高という発達段階を踏まえた学習・指導の在り方、特別支援教育の在り方、幼児教育や中学校教育との円滑な接続の在り方、家庭、地域・社会との連携の在り方などについて検討を行っていく。

 二点目は、小学校教育全体を通じて育成すべき資質・能力についてである。

 児童を取り巻く現状や社会の変化を踏まえ、小学校教育を通じて育成すべき資質・能力の在り方や、資質・能力の育成と、各教科等の充実の方向性、学習や生活を支える「言語」の役割を踏まえた言語に関する能力の育成について検討していく。

 三点目は、小学校における「カリキュラム・マネジメント」の在り方について。カリキュラム・マネジメントの意義と効果的な実施の在り方や、短時間学習の実施など、効果的で柔軟なカリキュラム・マネジメントの在り方について検討していく。

 ここまでの三点については、本年度内に検討を行い、特に、小学校の英語教育の時数等にかかわって、一定の方向を決める予定である。

 続いて四点目は、「アクティブ・ラーニング(=AL)」の三つの視点を踏まえた、資質・能力の育成に向けた小学校の指導等の改善充実の在り方についてである。

 そして、五点目は学習評価の在り方についてである。

 この四点目と五点目については、来年度に入ってから検討する予定である。

 以上のような検討を経て、二十八年度中に答申をまとめる予定である。

 さて、現在、ちまたでは、ALについて、様々な解釈がなされている。「ある指導の特定の型がALという解釈がある一方で、小学校ではすでにALを行っているのだから、あらためて取り組む必要はない」という考えまである。

 ここのところに十分留意していく必要があると考えている。「授業の中に討論を取り入れているからALである」とか、「グループ学習を行っているからALである」というとらえ方だけでは、真のALとは言えないと思う。

 今回の学習指導要領の改訂は、変化を見通せないこれからの時代において、新しい社会の在り方を自ら創造することができる資質・能力を育むことにある。それを踏まえて、私たちは今、自分の学校における子どもたちの学びの姿がどのようになっているのかを確かめ、改善していくことが必要である。

 新しい学習指導要領が全面実施されてからでは間に合わない。今できることに着手しておくことが必要になる。

 中教審の論点整理の中では、ALにかかわって、三点に立って学びを改善することが重要だと記されている。

 一点目は、習得・活用・探究という学習過程の中で、問題発見・解決を念頭に置いた深い学びの過程が実現できているかどうか。

 二点目は、他者との協働や外界との相互作用を通じて、自らの考えを広げ深める対話的な学びの過程が実現できているかどうか。

 三点目は、子どもたちが見通しをもって粘り強く取り組み、自らの学習活動を振り返って、つぎにつなげる主体的な学びの過程が実現できているかどうか。

 この三点に留意しながら、指導の仕方や学習環境を改善することによって、子どもたちが積極的に学び、より深い理解を得ることができ、必要な資質・能力を身に付けていくことができると考える。

 私たちはまず、自分の学校における各教員の授業を、このような視点から見直し、改善し、指導力を向上させていくことが必要であると考える。このことが教員の授業に対する意識を変え、新しい学習指導要領の趣旨に基づいた指導が円滑に行われ、かつ充実したものになると考える。

 また、ALとカリキュラム・マネジメントは独立したものではなく、互いに関連したものであるととらえることができる。

 ALを充実したものにしていくためには、カリキュラム・マネジメントを適切に行っていく必要があるし、カリキュラム・マネジメントを行う際には、先ほど申し上げたALの三つの視点から、「各教科等の内容を横断的な視点で配列していくこと」「教育課程におけるPDCAサイクルを確立すること」「学校内外の人的・物的資源を活用することを考慮して行うこと」が、新学習指導要領の全面実施に向けて、必要ではないかと思う。

 二十八年度中に新しい学習指導要領が告示される予定である。そして、一年おいて、二年間の移行措置の期間があり、三十二年度から全面実施となる。

 学校の教育課程や教育目標の見直しなどを含めて、全面実施までの工程表を作成し、教員に理解させることが求められる。

 全連小では、調査研究部に特別委員会を設置し、このための資料づくりを行っている。

知識活用できる力の育成へ

▽国の来年度の教育予算編成、特に教職員定数について

 基礎定数については、少子化の進展に伴い、三千百人の減。そして統廃合の進展によって九百人の減、合わせて四千人の減となっている。このうち、少子化の進展に伴う、三千百人の減については、夏の概算要求の段階で織り込み済みのものだったが、統廃合の進展に伴う九百人の減は財務省から示されたものである。

 財務課長は「この基礎定数の部分はあくまでも現時点での見込みであり、実際に義務標準法に基づき学級数によって教員数が決まるので、少子化や統廃合が見込みより少ない場合は、教員の減はこの数より少なくなる」「このことは法で定められたものであるから、国が借金をしてでも実施しなければならない」と話していた。

 一方、専科指導の充実やいじめ不登校等への対応など教育課題に対応するための加配定数については、五百二十五人の増となっている。財務省はこれまで、加配定数についても、児童生徒数に対する加配定数の割合を常に本年度と同一の割合で考え、児童生徒数が減少した場合、これにのっとって機械的に削減すると主張していた。この点からは、五百二十五人の加配定数が得られたことは、道小も含め、全連小が要望活動を展開してきたことの成果であると考えている。

 しかし、加配された人数を概算要求と比べてみると、例えば、専科指導の充実では三百五十人の概算要求に対して百九十人の加配、いじめ不登校での対応は、百九十人の概算要求に対して五十人の加配というように軒並み低い数値となっている。また、基礎定数と加配定数を合わせた教職員定数全体でみると、三千四百七十五人の減となり三年続けての純減となっている。

 そこで今後、教育現場の厳しい状況を知ってもらう活動を、財務省をはじめとする関係の省庁や国会議員だけではなく、ほかの教育団体にもさらに働きかけ、世論を喚起していく必要がある。

 また、文部科学省は、チーム学校との関係で、当分の間、加配定数の増を実現する方向で進む方針のようであるが、加配定数についてはその年度ごとに、そのときの課題によって変化をするので、基礎定数そのものを改善するために、義務標準法を改正する動きをつくっていく必要があると考える。

▽学校と連携協働の在り方と今後の推進方策について

 コミュニティ・スクール(=CS)については、小・中学校の普及率でも、いまだ消費税以下であり、評判の悪い制度であるといわれている。

 しかし、CSをやったあとに、どういうところが「良くなったか」「悪くなったか」を問うと、「悪くなった」ということはあまり聞かない。今までより地域と情報が共有できたとか、クレームが減ったといわれる。先生方の頑張りが地域に伝わるようになったというデータもある。

 ということは、この制度は、「失うものは何もない制度である」のではないか。あと九三%の学校は、今まで以上に良くなるのではないかという考え方である。

 昨年末に、中教審答申が出されたが、大きな背景の一つは、教育再生実行会議の六次提言で、CSを必置にしようとしたことである。今までは任意であるから、地域や学校の実情に応じて、CSにするもよし、しないもよし、置いても置かなくても良いことになっていた。

 これではだめではないか。「今、もう二千数百校が取り組んで、きちんとした成果が出ているのだから、これはすべてがCSになったほうが良いのでは」ということが、必置の考え方だった。

 中教審の結論としては、それはまだ消費税率以下であること、さらに、国からこうしろと言われて、地域とともにある学校をつくっていくのではなく、地域それぞれで事情に応じて、次第にそちらへ移行しようと、そういうことを努力していただく義務としたわけである。

 学校教育でいうと、学校関係者評価は努力義務である。でも、ほとんどの学校が学校関係者評価をやっているわけである。

 改善のポイントを三点話す。

 一つ目は、学校や教育委員会がもつ権限を弱めるのではないかといわれ、混乱してきたが、この制度は学校を応援するという役割であり、「一緒に工夫してやりましょう」という提案と考える。

 二つ目は、校長のリーダーシップについてである。法律上は委員の任命権は教育委員会にあるが、実際は、学校の校長からの推薦で行われている例がほとんどである。実際に明記して、校長がリーダーシップを発揮できる制度であると理解できるようにしたわけである。

 三つ目は、最も評判の悪い任用について。任用に関することは、学校運営協議会制度の必須の事項ではないということをまず、押さえなければならない。

 学校運営協議会制度で絶対やらなければならないのは、学校長の基本方針の承認である。承認といっても、「子どもをこう育てるんだ」ということを、保護者や地域の方々にきちんと理解していただき、必要であれば意見をいただくということである。

 答申には、具体的には書かれていないが、先生個人の任用に関することは、学校運営協議会においては話し合えないことにするわけである。Aという教諭がいいとか悪いとか、学校運営協議会の会議の場で議題として上らせてはいけないという風にしたらどうか、こういう議論があったのである。

 三点目は、「成熟社会にふさわしい教育と学習指導要領改訂について」と題した文科省・合田哲雄教育課程課長の話についてである。

 「産業バルーンチャート」という経産省がつくったものがある。縦軸に、世界市場、横軸に日本企業のシェアを取っている。

 これをみると、日本の産業のどこが強いかが分かる。

 たった六年間の間に産業構造が大きく変わっていることが分かる。例えば、二〇〇六年には、自動車の前に電子部品デバイスという日本の誇るべきエレクトロニクス産業の大きな塊があるが、二〇一二年では、自然分裂している。日本の社会構造は読めない、これだけ六年間で変化するので、予測しがたいということになる。

 予測しがたいから、逆算して子どもたちに授けるべき知識を特定できないとか、教育は無力かという人がいる。しかし、これからの子どもたちには、今の社会が必要とする知識を習得するにとどまらず、つぎの時代をつくっていく力が必要である。ただ、その力はとんでもない高度な力ではなく、日々先生方が学校で教えている一つ一つの知識、これは、日本の義務教育百三十年の歴史の中で練り上げられたものであるが、これをきちんと子どもたちが自分の血肉として活用できることが大切である。

 最後になるが、本年度、「未来を見据え、チーム北海道として進む道小」を掲げ、全道二十地区の校長会の皆さんと思いを一つにして様々な活動に取り組むことができたことに、心から感謝申し上げる。これからも、本道の子どものために、すべての学校が日々の授業の質を高め、子どもの成長の姿で各学校の教育活動を評価し、改善していきたいものである。

 そのためにも、「正論をもって正道を歩む」という道小の基本理念を、心に深く刻み込み進んでいかなくてはならないと思っている。

(関係団体 2016-03-03付)

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