北教組第119回中央委員会 主権者教育の確立目指し 小関中央執行委員長あいさつ概要
(関係団体 2016-03-01付)

小関委員長あいさつ
あいさつする小関委員長

 北教組第百十九回中央委員会(二月二十五日、札幌市内道教育会館)における小関顕太郎中央執行委員長=写真=のあいさつ概要はつぎのとおり。

 ◇  ◇  ◇

 中央委員会は定期大会までの当面する諸課題について議論を行い、集中して取り組む課題を確定する場であるということは言うまでもない。しかし、私たちをとりまく情勢の深刻さを考えるとき、中央委員会という枠組みを超えて、平和・民主主義を確立しようとする組織存立の正念場の闘いを、そして護憲運動の根幹にもかかわるたたかいを、いかに構築し、展開するかということが問われているのだということをあらためてお互いに肝に銘じたいと思う。

 一月四日から開催された国会では「一億総活躍」「挑戦」の言葉が躍っている。しかし、その内容は、多くの生活者が置かれている実態や声を無視し、民主主義とは全く乖離(かいり)した党利党略のみの「政治」方針に徹していることは誠に許しがたいものである。

 さらには「雇用が増えた」「違憲と言われないように憲法を変えよう」「電波停止」などの発言にみてとれるように、国民には「見させない、聞かせない、言わせない」という、「暴走ここに極まる」という政権運営に奔走しているとしか言いようがない。

 安倍政権は私たちを何に向かって総活躍させ、何に対して挑戦させようというのか。

 それは、戦争法制の実働化をめざす動きのみならず、平和・民主主義・基本的人権の尊重に対する破壊的な挑戦が行われていることを、私たち教職員が日常的に学校現場で見聞きしている事実が証明している。あえて教育の現場からの観点で申し上げたいと思う。

 その事実の第一は、貧困と格差の拡大と一言では語られない事態の深刻な進行状況である。

 まもなく四月を迎える。大きなランドセルやバックを肩にきらきらと目を輝かせながら登校する子どもたち。ともに喜び合いたい夢多き新学期の一場面である。私たちは教育にかかわる当事者として、少なくとも学校という空間だけでも希望を胸に大きく成長して行ってほしいと願い、多様な価値観を保障した実践に、剥がれることのない真の学力を身に付ける土台をつくろうとする実践に力を注ぐ。

 しかし、現実はどうなのか。現状の学校現場では、弱者切り捨てと管理統制の施策が渦巻いている。子どもの貧困は六人に一人、ひとり親世帯では五四・六%と二人に一人の子どもが貧困と過去最悪である。三割以上のひとり親の家庭ではお金がなくて必要な食品を買えなかった経験をもっているという報告もある。

 私たちの北教組教育費実態調査でも、本来無償であるはずの義務教育段階での保護者負担は小学校一年生から中学校卒業に至るまで六十三万五千円を超え、中学校三年生における保護者負担の平均は十三万一千円を超えるという実態が明らかになっている。もちろん、この額に塾などの教育費負担は算入されていない。

 高校から四年制大学卒業までに必要な入在学費用は年平均百万円と言われ総額最低でも九百万円が家計にのしかかるといった事態。結果として返還型の奨学金額が一千万円を超えるものも出てくるという状況は容易に想像がつくというものである。決して、学生が贅沢ざんまいをしている結果ではない。

 さらに不登校は二年間で一万人増加。増加する虐待死や居所不明児童。生活保護・就学援助受給者の増大。世界最低レベルの公的支出の割合の教育予算。まさに格差が教育格差を再生産している現状。生まれ育った家庭や地域などの環境によって、子どもたちの将来が左右されている紛れもない現実がある。ここに教育の機会均等という崇高な理念など全く保障されていない現実がある。

 さらには電波停止発言など表現の自由や民主主義の根幹を揺るがしかねない発言が容認される現状の中で、思想統制とも言える教科書の検閲や愛国心の強制。あるいは、「日の丸・君が代」のさらなる強制。道徳の教科化が足音を立てて進行しているのが教育現場の実態である。

 第二の事実として、子どもたちが巣立っていこうとする社会は、四割を超えさらに増加傾向にある不本意非正規を含む非正規労働者が増加している。政権の言う「雇用の増加」の実態はここにある。ワーキングプアの増大もしかり。ブラックバイトやブラック企業における労働法制の破壊。そして奨学金という名のローン地獄に陥っている多くの若者たちと、政権が躍起になって火消しに奔走している経済的困難者に対する徴兵制議論の進行である。

 こうした状況を憂い、少なくとも自らを守る権利としての労働教育をカリキュラムに位置付けようとする実践は、偏向教育、政治教育のレッテルをはり、攻撃の対象としようとする勢力の介入に脅かされているというのが現状。行動規制を排除し、「法・政治・労働・市民・消費者・メディアリテラシー」など幅広い観点からの主権者教育の確立が、私たちに求められているのではないか。

 こうした社会の劣化事例、否基本的人権無視の事例は枚挙に暇(いとま)がない。

 第三には、社会の劣化と同時に進行しつつある憲法理念の破壊は極めて危険な状況である。民意を無視した戦争法の強行、武器輸出をはじめとする軍事大国化への暴走。増加する甲状腺がんの実態を隠蔽しつつ、一ミリシーベルト非科学的根拠発言や測定値を意図的に改ざんする行為など、原発再稼働や輸出などいのち軽視の政策。平和主義・国民主権、立憲主義の破壊は断じて許されるものではない。

 こうした極めて危険な一億総活躍・挑戦に私たちはNOを突き付けなければならない。 

 その運動構築と展開にあたっては、私たちが培ってきたこれまでの運動の積み重ねから、そして直近でいえば安保法制に対するとりくみの中から教訓を導き出しつつ、退職された皆さんとともに、未組織者、教え子、若者、保護者、地域に働きかけるという「結集と拡大」を意識しなくてはならないと考える。

 昨年は戦後七十年、まさに二〇一五年を護憲・反戦・平和への願いを勝ち取るためのスタートの年と位置付け、組織の総力を挙げてたたかってきた。平和が、民主主義が、民主教育がその根本である憲法とともに破壊されようとしている二〇一六年、まさに現代版クーデターを一人の観客として見過ごすのか、立憲主義をとりもどし暴走にストップをかけるのか、正念場の闘いの年であると言える。

 私たち教育にかかわる労働者として、歴史的事実と悔恨から学んだ民主教育推進の担い手として、今こそ、行動を起こそうではないか。

 本日の中央委員会において、中央委員の皆さんにおかれては、多角的な観点から切り込んでいただきながら、「今ある危機」「進行しつつある危機」に抗してたたかう方針を確立していただきたいと思う。

(関係団体 2016-03-01付)

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