道議会文教委の質問・答弁概要(28年2月2日)(道議会 2016-04-06付)
道議会文教委員会(二月二日開催)における佐野弘美委員(日本共産党)の質問、および杉本昭則学校教育監(当時)、土井寿彦総務課長(当時)、馬橋功教職員課長(当時)、赤間幸人高校教育課長(当時)、阿部武仁生涯学習課長(当時)の答弁の概要はつぎのとおり。
◆道立学校の学校図書館
佐野委員 学校図書館は児童生徒の読書活動や豊かな学校教育にとって不可欠なもの。また、単に図書の管理業務や読書センター、情報センターなど、図書館の役割だけではなく、学校の教育課程や児童生徒の発達段階を理解したかかわりなど、学校図書館独自の役割と専門性が求められる。
これまでも、学校図書館の充実を目指して法改正が行われてきたが、二〇一二年の学校図書館法改正では、学校司書の配置が努力義務となった。この改正を学校図書館の取組の充実に生かす立場で順次伺っていく。
改正学校図書館法において、司書教諭、学校司書がどのように位置付けられたのか、自治体の義務や財政措置の在り方はどのように定められているのかを伺う。
阿部生涯学習課長 司書教諭の配置等について。学校教育における学校図書館の重要性が、一層高まっていることに鑑み、近年、学校図書館法の改正が順次行われてきており、司書教諭については、学校図書館の中心的な役割を担い、専門的職務をつかさどらせるため、教諭等をもって充てることとし、それまでの任意設置から十五年度以降は十二学級以上の学校への配置が義務化されている。
学校司書については、児童等による学校図書館の利活用の一層の促進に資するため、専ら学校図書館の職務に従事する職員であり、本年度からすべての学校に置くよう努めるとともに、国および地方公共団体は、学校司書の資質の向上を図るため、新任研修の実施その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならないとされた。
また、国においては、学校図書館図書整備五ヵ年計画に合わせ、学校司書の配置を促すため、二十四年度以降、市町村が設置する学校司書について地方交付税措置を講じているが、都道府県が設置する学校司書については措置されていない。
佐野委員 道立高校および特別支援学校における司書教諭の発令状況と、発令された司書教諭が週に何時間程度、学校図書館の業務に携わっているのか、全国の比較と併せて伺う。
馬橋教職員課長 司書教諭の発令状況などについて。高校については、学校図書館法およびその政令において、全日制・定時制合わせて十二学級以上の学校に司書教諭を配置することとされており、二十六年度においては、全道立高校二百六校のうち百十二校が該当し、該当校すべてに配置している。
なお、全国の配置率は九八・三%となっている。
また、特別支援学校については、小・中・高の学部別に十二学級以上の場合に、それぞれの学部ごとに配置することとされており、小学部のある全道立特別支援学校三十四校のうち八校、中学部のある三十三校のうち六校、高等部のある四十三校のうち二十二校が該当し、該当校すべてに配置している。
なお、全国の配置率は八三%となっている。
司書教諭が学校図書館業務に従事する時間については、二十六年度の調査によると、高校においては、週当たり、全国一・七時間に対し、本道四・三時間、特別支援学校においては、全国〇・四時間に対し、本道は〇・六時間となっている。
― 再質問 ―
佐野委員 十二学級以上の学校についての答えのみであったので、十一学級以下の道立高校および特別支援学校における司書教諭の発令状況についても伺う。
該当校すべてに配置しているとのことであったが、十二学級以上という国の基準では少ないのではないでか。そのことについての道の認識も併せて伺う。
馬橋教職員課長 十一学級以下の学校における司書教諭について。二十六年度においては、全道立高校二百六校のうち九十四校が十一学級以下の学校に該当して、うち七校に司書教諭を配置しており、配置率は七・四%となっている。
なお、全国の配置率は二九・五%となっている。
また、特別支援学校においては、小学部のある全道立特別支援学校三十四校のうち二十四校、中学部のある三十三校のうち二十七校、高等部のある四十三校のうち十九校が十一学級以下の学部に該当して、小学部二十四校のうち一校、中学部二十七校のうち一校、高等部十九校のうち二校に司書教諭を配置しており、配置率は五・七%となっている。
なお、全国の配置率は二三・八%となっている。
学校図書館法およびその政令において、十一学級以下の学校および学部には当分の間、司書教諭を置かないことができるとされているが、学校図書館における司書教諭の職務の重要性に鑑みて、今後とも、学校図書館司書の資格を有する教諭の確保に努めていく。
― 意 見 ―
佐野委員 広い地域に小規模校が点在する本道では、特に配置の充実を求められるのではないか。ぜひ、答弁したとおり、司書教諭の確保に努めるよう強く求める。
佐野委員 道立高校において、授業時間の軽減など、司書教諭への配慮はどのようにしているのか伺う。
赤間高校教育課長 司書教諭への配慮について。道教委としては、道立学校の司書教諭が、学校図書館の資料の選択・収集・提供や生徒の読書活動に対する指導など、学校図書館の専門的職務に携わることができるよう、当該教諭の担当教科・科目の授業時数等の軽減を図ることなどに配慮することは大切であると考えているが、授業時数の軽減を行っている学校の割合は、二十六年度の調査では、全国七・一%に対し、本道〇・八%となっている。
多くの学校では、図書館の運営にかかわる業務を図書・視聴覚部等の校務分掌に位置付け、司書教諭を含め、図書館の運営に当たる教諭については、校務分掌内におけるほかの業務について軽減を図るなどの工夫がなされている。
佐野委員 授業時間軽減について、道立高校が全国平均を大きく下回っているが、この要因をどう分析しているのか。司書教諭が「学校図書館の専門的職務をつかさどる」とされていることにふさわしく対応をすべきと考えるが、見解を伺う。
赤間高校教育課長 本道の状況などについて。司書教諭については、担当教科の授業時数等の軽減を図ることが望ましいと考えているが、授業など、教育課程を実施する上で、課題が生じることもあり得ることから、図書館業務を校務分掌に位置付け、司書教諭を含め、教職員で分担して行っている。
道教委としては、学校図書館の一層の充実のためには、司書教諭の定数措置が必要と考え、これまでも、国に対して要望してきており、今後も引き続き、働きかけていく考えである。
― 要 望 ―
佐野委員 授業時数の軽減は全国を下回っており、週当たりの従事時間では全国を上回っているとは言えるが、それでも高校で四・三時間、特別支援学校で〇・六時間ではあまりにも少なく、これでは、学校図書館の取組の充実には足りないのではないかと思うので、国への要望はもちろんであるが、道でも充実に取り組むよう求める。
佐野委員 道立高校は、「専ら学校図書館業務を行う職員」はゼロと承知している。全国平均では、六六・五%、三校に二校は配置されているが、ほかの都府県と本道の違いはどこにあるのか、認識を伺う。
赤間高校教育課長 学校図書館担当職員について。「専ら学校図書館業務を担う職員」の配置について、他の都府県の状況は把握していないが、今回の文部科学省調査では、教諭やボランティアを除き、「専ら学校図書館業務を担う職員」が調査対象とされており、道立学校では、複数の職員で協働して学校図書館の業務に当たっていることから、「専ら学校図書館業務を担う職員」の配置割合としては、低い状況にあるものと考えている。
― 指 摘 ―
佐野委員 学校司書の専門性の高さからも、定数配置されている学校図書館担当職員は専任で置くべきであり、業務分担だから良いということにはならないと指摘したい。
佐野委員 図書館法改正を受けて、道教委が二十七年度から開始した「学校司書実務研修」の目的と実施概要、市町村立小・中学校および道立学校、特別支援学校の研修受講実績について答えていただきたい。
また、道立高校については、十二学級以上の学校に図書館担当事務職員が定数配置されていると承知しているが、事務職員の参加数は何人か伺う。
阿部生涯学習課長 学校司書実務研修について。学校司書の配置の促進や専門的・技術的な知識・技能の基本の習得などを目的に、二十七年度から新たに小・中・高校、特別支援学校の学校図書館業務を担当する教職員などを対象に、道内三ヵ所で研修を実施した。
受講者の内訳については、小学校は四十五校四十六人、中学校は三十六校三十三人、道立高校は五十四校五十五人、道立特別支援学校は十三校十四人が参加し、全体で百四十八校百四十八人となっている。
また、道立高校のうち、十二学級以上の百八校からは二十六校二十七人が参加し、その内訳は、教諭・実習助手が二十六人、事務職員が一人となっている。
佐野委員 十二学級以上の道立高校百八校のうち、事務職員で研修を受けたのはわずか一人だった。道教委は、こんな残念な状況について、どう認識し分析しているのか、今後、「学校司書実務研修」をどのように生かして行くのかを伺う。
また、「専ら学校図書館業務を担う職員」の配置を促進するために、道教委として、今後、どのように取り組んでいくのかを併せて伺う。
土井総務課長 学校司書実務研修などについて。研修受講者のうち、事務職員が一人にとどまったことについては、旅費の措置が各学校一人分のため、学校長が、直接、生徒の指導に当たる教諭の参加を優先したことなどが考えられる。
今後も、学校図書館業務に携わる、より多くの職員が受講することによって、その成果を学校に持ち帰り、学校図書館の運営の改善・向上や、児童生徒等の利活用が進むよう研修内容の充実を図っていく考えである。
また、配置に関しては、全日制十二学級以上の高校に図書館担当事務職員を置いており、学校では、校内体制や校務分掌を工夫しながら、司書教諭等と連携して、学校図書館の業務に当たっている。
国では、二十六年の学校図書館法改正において、学校には、学校司書を置くよう努めなければならないと規定するとともに、学校司書としての資格やその養成の在り方等について検討を行い、必要な措置を講ずることとしており、道教委としては、今後、こうした国の検討状況などを見極めながら、適切な配置に努めていく考えである。
― 指 摘 ―
佐野委員 学校図書館の役割や担当職員の専門性を高めるために、学校司書の配置を努力義務とされた。その内容を保障する学校司書の資格要件は今後の課題とされ、規定されてはいないが、その充実は現場関係者の切実な願いでもある。現場の声をしっかりと受け止めて、支援を強めていただきたい。
佐野委員 十八歳選挙権導入に伴い重要視されている主権者教育においては、学校図書館への新聞の配備は重要である。新聞を学校図書館に配備している道立高校の比率が、全国平均より三〇ポイントも低い要因について、道はどう考えているのか。
また、多面的に物事をとらえ、考えるためにも、複数の新聞の配備が望ましいと考えるが、予算措置などについて、どう考えるか伺う。
赤間高校教育課長 新聞の配備状況について。二十六年度、学校図書館に新聞を配備している公立高校の割合は、全国平均が九〇・〇%であるのに対し、本道は六〇・五%となっており、本道が全国に比べ、およそ三〇%低い要因は、学校で購入している新聞の配備場所を、学校図書館以外としている学校が多いためであると考えている。
新聞などの定期刊行物購入のための予算措置は、すべての道立高校・特別支援学校に対して行っており、具体的な購入品目の選定は、各学校の判断によって行われているが、道教委としては、定期刊行物購入にかかる予算の効果的な運用等によって、学校図書館への新聞配備が十分に図られるよう、各学校に対し指導・助言していく考えである。
― 要 望 ―
佐野委員 児童生徒が、いつでも気軽に新聞を手に取れるように、図書館に新聞を配備することは重要だと思う。主権者として学び、社会参加するために必要な整備が十分に図られるよう求める。
佐野委員 道教委が直接責任を負う道立学校の図書館の位置付けを高め、それにふさわしい対応が求められる。児童生徒にとって、より楽しく、ためになり、より活用しやすい図書館としていくために、どのように取組を進めるのか伺う。
杉本学校教育監 学校図書館の充実について。道教委では、これまで、各教科・科目の授業における資料の収集・選択や探究活動、また、総合的な学習の時間における課題解決学習、さらには、生徒会活動において、図書局等が外部講師による読書会や、地域の図書館との連携など、学校図書館を積極的に活用している事例について、『教育課程編成・実施の手引』に取り上げ、教育課程研究協議会において指導・助言を行ってきているが、今後においては、生徒が自ら学ぶ学習・情報センターとしての機能と、豊かな感性や情操を育む読書センターとしての機能が一層高まるよう、学校図書館の環境の充実と指導・助言に努めていく考えである。
― 要 望 ―
佐野委員 学校図書館の機能が高まるよう、環境の充実と指導・助言に努めるとの答えであった。そのためには、安定した雇用で、研修などもしっかり受けながら、専門性を高められる学校司書を専任で配置することは大変重要だと思う。
道教委においては、市町村教委を指導する立場からも、率先して学校司書、司書教諭をはじめ学校図書館の充実、整備に取り組むことを強く求める。
(道議会 2016-04-06付)
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