新しい時代を見据えて 函館市教委が合同校長会議開く 山本教育長説明(市町村 2016-04-11付)
幼・小・中・高の校園長など約百人が出席
【函館発】函館市教委は一日、函館市民会館で、第一回定例合同校長会議を開催した=写真=。市教委職員のほか、函館市立の幼・小・中・高の校園長など約百人が出席。本年度の教育行政執行方針を踏まえ、子どもたちにとって、充実した学校運営が行えるよう理解を深めるとともに、意識を共有した。
はじめに、山本真也教育長があいさつ。市全体の教育の充実と、子どもたちの明るい未来に向けて、学校関係者だけではなく、地域全体が力を合わせていく必要性を強調。「教育政策を一つ一つしっかりと進め、函館の教育充実を図りたい」と述べた。また、今回、転入・採用された校長たちに向け、「新たな力として期待したい」とし、新しい戦力への期待を表した。
続いて、転入・採用校長を代表して大船小学校の鈴木敏文校長があいさつに立ち、「学力だけではなく、心と体力の向上に向けた取組や、保護者や地域から信頼される学校づくりを行っていきたい」と、今後の抱負を示した。
最後に、山本教育長が、二十八年度市義務教育基本計画について説明。本年度の重点的指導事項などを紹介し、理解の深化とともに、意識の統一を求めた。
説示の内容はつぎのとおり。
【はじめに】
いよいよ各学校とも新しい体制となり、二十八年度の教育活動が始まる。間もなく、夢と希望を胸に抱いた新入生・入園生が入学してくる。各学校や幼稚園においては、大変緊張した中で準備作業に追われていることと思う。
校長・園長には、市の教育充実のため、より一層の尽力、協力をお願いしたい。
とりわけ、市外から転入された校長、あるいは採用された校長には、新たな環境で戸惑うこともあろうかと思うが、市内各地域の実情、子どもの実態はもちろんのこと、学校と地域の関係の在り様や、保護者の皆さんの学校への期待などを的確にとらえるとともに、変化の著しい教育課題に対して、先見性をもって取り組み、教職員の指導・助言に当たるなど、子ども一人ひとりの人格形成を目指すという教育の本質を決して見失うことなく、力強いリーダーシップを発揮し、学校経営にまい進してほしい。
言うまでもないが、学校の社会的役割は、地域づくり、国づくりを担う人材育成を担っていることを考えると、ことのほかその責務は重いものであることは当然のことであるが、教育効果を十分に発揮し、その責任を果たすためには、保護者や地域住民の信頼が何より重要である。
その信頼は、校長の立ち居振る舞いに影響されるところが極めて大きい。子どもや教職員はもとより、地域住民も含め、学校にかかわるすべての人が、校長の言動に関心をもち、影響されるのである。激務ではあるが、ここにいる七十三人の校長・園長が結束し、そうした信頼のもとに、市の教育を進めていってほしい。
また、昨年度から市においても、教育委員会制度の改革によって、総合教育会議が始まった。この改革によって、教育の動向に対する知識や住民の意向といった情報をきちんともっているか、さらには、こうした情報をいかに分析し、そこから構想を企画して実行するかという応用力が、教育長である私自身にも求められていると考えている。
市町村教委の裁量で、課題のかなりの部分を解決していくことができ、そういった主体性・独自性を十分に発揮し、学校と協働し、函館の子どもたちの生きる力を育んでいきたい。
さて、市においては、学校規模の適正化を図り、望ましい教育環境を提供する観点から、学校再編にかかる取組を精力的に進めており、本日、「函館市立五稜郭中学校」が開校される記念すべき日である。
正式には六月一日を開校記念日とし、開校式典を行う予定であるが、閉校した桐花中学校ならびに五稜中学校、大川中学校の前校長はじめ、教職員、また、PTAや評議員等の地域の方々には、閉校ならびに開校に向けて、その苦労は並大抵のものではなかったと思う。この場を借りて心から感謝申し上げたい。
今後も、こうして閉校ならびに開校を繰り返し、新しい函館の学校が誕生していくわけであるが、これまでも申し上げたとおり、子どもの数が少ないから統合するということではなく、新しい函館の教育を創造していく、つまり、新しい町づくりを進める大切なプロセスであると理解してほしい。
また、市は市町村合併により市のエリアが広がり、それぞれに個性のある地域によって構成されている。
すべての地域に言えることではあるが、とりわけ、戸井地区、恵山地区、椴法華地区、南茅部地区は、地元住民の意志を十分汲み取り、地域コミュニティーの中心としての役割を果たす必要がある。どの地域の学校も、何より、心のこもった地域住民とのかかわりが大切である。
また、市立函館高校においては、これまでの揺るぎない学校経営によって、この春の進路状況においても、生徒の自己実現に大きな成果を上げている。
今後、中学校卒業者数の減少によって、大きな転換点を迎えることから、より一層、地域に根ざし、特色ある学校づくりが求められる。
市立幼稚園については、子ども・子育て支援の新制度によって、幼稚園や認定こども園の形態が変化するなど、幼児教育にかかわる環境が大きく変化しており、すでに報道等で承知のことと思うが、現在、市立幼稚園のあり方検討協議会において協議を進めているところである。
一方で、今後も、市における幼児教育の重要性に変わるところはないわけであり、これまで培ってきた小学校と幼稚園や保育園との緊密な連携はぜひ継続していただきたい。
いずれにしても、学校経営にかかわっては、社会情勢、教育改革の動向等を踏まえ、何より、確固たる経営理念が求められる。
揺るぎないリーダーシップはそうした経営理念の実現に向けた具体的な行動であり、校長としてしっかり努めてほしい。
【市義務教育基本計画について】
二十八年度の市の学校教育の推進について申し上げる。
すでに承知のとおり、本年度予算によって、新規にコミュニティ・スクール推進事業費のほか、アクティブ・ラーニング推進事業費や部活動地域支援者活用事業費、学力向上非常勤講師配置事業などを実施予定である。教職員がこれまで以上に子どもとふれあう時間を確保し、教育の質の向上に向けて、取り組んでいきたい。
さらに、山積する学校課題に対して、その解決を図るためには、安定した学校運営、活力ある学校づくりが必要であり、校長の学校運営に対して指導・助言を行う学校教育指導監を二人配置することとした。校長におかれては、指導・助言を受けつつも、積極的に活用してほしい。
それでは、「アプローチ」の概要を説明する。
市義務教育基本計画の推進期間が残すところ二年となり、いよいよ評価・検証の段階となった。
アプローチは、基本計画の理念の実現に向けて、取組の指針として学校に示しているわけであるが、特に、市外から転入された方々は、市義務教育基本計画を熟読していただくとともに、あらゆる機会を通じて、これまでの本市の教育の取組について理解してほしい。
基本的な考え方から申し上げる。
現在、国においては次期学習指導要領の改訂に向けた動きが急ピッチで進んでいる。昨年八月には、「論点整理」が示され、次期学習指導要領の基本的な考え方が示された。
昨年夏、南北海道教育センターが主催した教育フォーラムに、講師として出席していただいた文部科学省初等中等教育局の合田哲雄教育課程課長は「今まで受け身であった学校に、改訂内容の土台を示すことで、今後の教育の在り方をともに考えていきたい、という国の意志である」と、述べている。
また、先ほど申し上げたとおり、現在の市義務教育基本計画の推進期間が間もなく終了し、ことしから次期計画として「市教育振興基本計画」(三十年度開始予定)の策定に向けた作業を進める予定である。
学校においては、そうした状況を勘案し、何より大切なことは、論点整理にあるように、授業改善および組織運営の改善に一体的・全体的に迫ることのできる組織文化の形成を図り、「アクティブ・ラーニング」と「カリキュラム・マネジメント」を連動させた学校経営を展開することである。
従って、校長にはそうした経営者としての力量を発揮することはもとより、教員には、学級経営や幼児・児童・生徒理解等に必要な力に加え、教科等を越えた「カリキュラム・マネジメント」のために必要な力や、「アクティブ・ラーニング」の視点から学習・指導方法を改善していくために必要な力や学習評価の改善に必要な力等が求められる。
教員一人ひとりが社会の変化を見据えながら、これからの時代に必要な資質・能力を子どもたちに育むことができるよう、研修を通じて改善を図っていくことが必要である。
また、先ほど申し上げたとおり、市義務教育基本計画の推進期間がいよいよもって残り二年となった。各学校においては、市立学校として、この理念の実現に向けて、最終段階であることを自覚し取り組んでいただきたい。そうしたことから、二十八年度は「一層の充実と検証」、そして二十九年度を「総点検と計画」(仮称)とし、本年度は、「最後までやり切る指導の一層の充実を目指して」を学校教育推進の重点として定めた。
これまでも、市立学校は基本計画の理念の実現を目指すため、「対話と協働」を基調とした信頼される学校づくりに取り組んできた。
このたび、五稜郭中はコミュニティ・スクールとして指定されたわけであるが、市立学校がこれまで以上に、「対話と協働」を大切にし、カリキュラム・マネジメントに反映させ、具体的な成果を生み出すことができる教育活動の展開を期待している。
そうしたことを念頭に、とりわけ、小学校学習指導要領の移行期間がスタートする三十年に向けて、二十八・二十九年度は、新しい時代を見据えた教育の形づくりにしっかり取り組んでいく。
【二十八年度の学校教育推進の方針】
▼重点指導事項Ⅰ
一点目は、「粘り強さを育む組織的な学習指導の一層の充実と検証」である。
冒頭、申し上げたように、これからの社会を生き抜いていく子どもたちに必要な資質・能力を育むために、主体的・協働的な学習、いわゆる、アクティブ・ラーニングが有効であり、学校の授業がこうした考え方で変わり、各教科等における学習の充実はもとより、教科等間のつながりをとらえた学習を進める観点から、教科等間の内容事項について、相互の関連付けや横断を図る手立てや体制を整える必要がある。
そうしたことを前提に、一時間一時間の授業の在り方を吟味する必要があると考えている。
昨年度は授業改善の方策として、「探究型の授業」を示し、問題解決的な学習の充実を図ってきた。各学校においては、校内研究などで十分吟味されたことと思う。
本年度は、この「探究型の授業」をさらに充実することを目標としており、これこそがアクティブ・ラーニングにつながるものと考えている。
(当日配布資料では)「“探究型の授業”(アクティブ・ラーニング)を目指して」として、一単位時間の授業構想について、あくまで一単位時間の指導過程(プロセス)を示しているものであり、あらためて、「探究型の授業」の基本である「問題解決的な学習」の指導過程のポイントを押さえて、確実に実施してほしい。
従って、この指導過程で授業を行えば、アクティブ・ラーニングということではない。
「アクティブ・ラーニング」は、形式的に対話型を取り入れた授業や特定の指導の型を目指した技術の改善にとどまるものではなく、子どもたちの質の高い、深い学びを引き出すことを意図するものである。
指導法を一定の型にはめ、教育の質の改善のための取組が、狭い意味での授業の方法や技術の改善に終始するのではないかといった懸念に結び付いているようであるが、決してそのようなことではない。
だからこそ、学校においては、なぜ、アクティブ・ラーニングが必要なのかという議論が必要であり、プロの教師としての真価が問われると考える。
今後は、特に高校において、義務教育までの成果を確実につなぎ、一人ひとりに育まれた力をさらに発展・向上させることが求められる。
▼重点指導事項Ⅱ
二点目は、「組織的な支援を目指した特別支援教育の一層の充実と検証」である。
昨年度から、市の特別支援教育の推進体制を大きく改善し取り組んできた。学校には十分に体制整備の内容について伝え切れていない面もあったように思うが、協力いただき、本当に感謝申し上げる。
当然、今後も見直すべき点が多くあった。
二十七年度については、教育支援委員会において、とりわけ、就学指導部会で判断した子どもの数は百八十九人(前年度比四十五人増)であり、就学時児童八十七人(前年度比十五人増)、在学児童生徒百二人(前年度比三十人増)となっており、予定していた部会開催回数が五回から八回となった。
一昨年度から、三者(学校・保護者・検査者)一致のケースは、可能な限り書類審査としてきたが、それでも、対象児童生徒が増加し続けている状況があり、特に、在学児童生徒の取扱いが多くなっている。
何より大切なことは、特別な教育的配慮が必要な児童生徒に対して、『はこだて子どもサポートシート』などに基づき、確実に支援することである。
当然、保護者の理解を得るために時間を要することがあることは理解している。しかしながら、年度末になり、就学指導部会の判断を求めるケースが多く、特別支援学級の設置や教員配置に支障を来す場合が少なからずあることも事実である。
ぜひ、校内支援委員会を年度当初から計画的に機能させ、学校としての取組を充実するようお願いしたい。
また、市の特別支援教育をリードしていく人材を引き続き育成し、市内をいくつかのエリアで構成し、支え合う「サポートエリア・ネットワーク」の構築に向けて取り組んでいく。
▼重点指導事項Ⅲ
三点目は、「支持的風土を築く学年・学級経営の一層の充実と検証」である。
主体的・協働的な学習(アクティブ・ラーニング)を充実したものとするためには、支持的風土のある学級づくりが必要不可欠である。
教師と子ども、子ども同士が親和的な学級風土の中でこそ、主体的・協働的な学びはその効果を高め、一人ひとりの子どもの能力が最大限に引き出される。
教師であれば誰しもが経験していることと聞いているが、やはり、学級経営が充実・安定している中では、子どもが能力を発揮し、学力にも好ましい効果があるし、豊かな心の成長を図ることができる。
今後ますます、学校ぐるみで、個々の教員の良さが引き出され、相互に影響し合い、より良い学年・学級経営が推進される学校体制が重要である。
例えば、小学校においても、少しずつであるが、教科担任制の考え方で学校運営をしている学校がみられるようになってきた。
そうした工夫をぜひ進めてほしい。
また、道徳教育にかかわっては、すでに、新しい学習指導要領による移行期間ではあるが、道徳科の教科書による授業は小学校が三十年、中学校が三十一年開始の予定である。
そこに向けて、すべての教員が年間三十五時間の「道徳の時間」をしっかりと取り組んでいく必要がある。間もなく、道徳の指導資料を届けるので、大いに活用してほしい。
いじめ問題にかかわっては、すべての学校において「学校いじめ防止基本方針」に基づき、未然防止、早期発見・早期対応に向けて、取り組んでいる。
未然防止の基本となるのは、児童生徒が、周囲の友人や教職員と信頼できる関係の中、安心・安全に学校生活を送ることができ、規律正しい態度で授業や行事に主体的に参加・活躍できるような授業づくりや集団づくり、学校づくりを行っていくことである。
そうした未然防止の取組が着実に成果を上げているかどうかについては、定期的に検証し、どのような改善を行うのか、どのような新たな取組を行うかを定期的に検討するとともに、『学校いじめ防止基本方針』の見直しなどを精力的に進めてほしい。
▼重点指導事項Ⅳ
四点目は、「今日的な教育課題の解決を図る取組の一層の充実と検証」である。
このことについては、学校が取り組むべき今日的な教育課題は数多くあるわけであるが、とりたてて、
・体力向上
・ICT機器の活用
・食に関する指導
・情報モラル教育
・キャリア教育
―の五点について取り上げている。
体力向上については、子どもを取り巻く環境が影響しているわけであるが、少なくとも学校生活において、体育の授業はもとより、子どもが体を動かす場面を意図的・計画的に設定することが大切である。これもまた、カリキュラム・マネジメントの考え方である。
ICT機器の活用については、本年度中にすべての普通教室に、実物投影機を配置する。すでに、教室に常設することによって、大きな成果を上げている学校がたくさんあるわけであるが、すべての子どものために、日常的な活用が積極的に図られるよう、ぜひ研究を進めてほしい。
【おわりに】
以上、本年度の学校教育推進の方針について、アプローチに沿いながら、説明させていただいた。
冒頭で話したが、国が示した論点整理は、二〇三〇年の社会と、そして、さらにその先の豊かな未来を築くために、教育課程を通じて初等中等教育が果たすべき役割を示すことを意図している。
このところ、よく聞く言葉であるが、「子どもたちの六五%は将来、今は存在していない職業に就く」あるいは、「今後十年~二十年程度で、半数近くの仕事が自動化される可能性が高い」などという言葉が現実味を帯びてきている状況は誰もが感じていると思う。
また、函館の街も、少子高齢化や若者の市外への流出などがよく話題になる。
こうした状況を乗り越えていくためには、生き抜く知恵やたくましさを備えた人材の育成が重要であることは言うまでもない。
つい先日、念願の北海道新幹線が開業したばかりでもあり、われわれはこの町の発展を支える人材の育成に最大限の努力をしなければならない。
教育は、いつの時代も、未来を創り上げる意志を示すことが大切であり、函館の学校が、子どもはもとより、市民の負託に応え、明るい未来を期待させる存在になるよう、校長にはそうしたリーダーシップを期待している。
二十八年度の学校教育を進めるに当たって、本年度も、校長会と市教委の緊密な連携のもと、市の学校教育を力強く前進させていきたいと考えているので、よろしくお願いする。
(市町村 2016-04-11付)
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