28年度オホーツク管内教育推進の重点 知・徳・体の育成目指して 学校・家庭・地域の一層連携(道・道教委 2016-04-13付)
【網走発】オホーツク教育局は八日、網走市内オホーツク文化交流センターで二十八年度管内公立小・中・義務教育学校長等会議を開催した。田中宣行局長=写真=が「確かな学力の育成をめざす教育の推進」「一人ひとりの教育的ニーズに応じた特別支援教育の充実」「豊かな人間性と感性を育む教育の推進」「心身の健やかな成長を促す教育の推進」「地域とともにある・信頼される学校づくりの推進」を柱とする、オホーツク管内における教育推進の重点=表参照=を説明した。
子の自学力高め学力向上を
管内教育推進の重点はつぎのとおり。
【はじめに】
管内公立小・中・義務教育学校長等会議に当たって、本年度の「オホーツク管内教育推進の重点」について説明する。
昨年度を顧みると、校長の皆さんには、二十七年度管内教育推進の重点の趣旨を踏まえ、子どもたちを中心に据えた学校づくりの推進にリーダーシップを発揮していただいた。
とりわけ、学力の向上については、各学校が校長を中心として自校の課題解決に向けた取組を推進し、昨年度に引き続き、すべての学校でチャレンジテストを実施するとともに、約九割の学校で教職員が採点・分析を行い、繰り返し活用するなど、共通の取組を前進することができた。
また、体力の向上についても、新体力テストの全学年・全学級の実施率が九八%に達し、各学校において、児童生徒の体力・運動能力を適切に把握した上で、体育の授業改善や一校一実践の取組が進められた結果、全国体力・運動能力、運動習慣等調査において大きな成果が得られた。
しかし、学力・体力の全国調査の結果から、管内では、各学校の取組が一定の成果として表れてはいるものの、小・中学校ともに、依然として全国平均を下回る状況が続いており、学力・体力の向上が喫緊の課題となっている。
本年度は、オホーツクの未来を支える子どもたちの確かな学力、豊かな心、健やかな体をバランスよく育てる教育の充実と、その基盤となる教育環境づくりに向け、学校・家庭・地域・行政が連携した取組をより一層推進していきたいと考えている。
【国および道の動向】
さて、国においては、これからの厳しい時代を生きる子どもたちの能力や可能性を引き出し、自信を育む教育の実現に向け、「社会に開かれた教育課程」をキーワードとする次期学習指導要領の改訂や、「改正学校教育法」に基づく小中一貫教育の制度化、「障害者差別解消法」に基づく特別支援教育の推進など、教育の内容・方法等を含めた一連の教育改革による大きな転換期を迎えている。
また、道においては、昨年十月に制定された「北海道総合教育大綱」に基づく具体的な施策の推進や道教委が策定した「北海道教育推進計画」において、二十九年度までに目指す数値目標を実現するための確実な成果が求められる年度になる。
このような国や道の動きを踏まえ、二十七年度の管内教育推進の重点の評価結果に基づき、二十八年度の重点を策定した。
【重点について】
各重点項目の詳細については、私からは、重点の実現に向け、特に、校長の皆さんにお願いしたいことを述べる。
重点一の「確かな学力の育成をめざす教育の推進」で特にお願いしたいのは、「子どもが主体的に学ぶ力を高めるため、授業改善や学習習慣の定着など、家庭・地域との連携を図った組織的な取組を徹底する」ということである。
二十七年度の全国学力・学習状況調査における管内の子どもたちの学力の状況は、改善の兆しはみられるものの、全国、全道との差が依然として大きく開いており、取組を一層加速させる必要がある。
管内では、全国学力・学習状況調査の分析に教職員が参画している学校の割合が小学校七五%、中学校七一%にとどまっており、また、平日、家庭における勉強時間が一時間未満の児童生徒の割合が全国と比べて大きく上回るなどの課題がみられることから、学力向上に確実な成果を得るためには、すべての教職員の共通理解のもと、学校・家庭・地域が一体となった取組を推進していくことが大切である。
各学校においては、家庭や地域との協働のもと、学力向上の数値目標と具体策を明確にして、子どもたちが「分かる・できる」を実感できる授業づくりや、生活リズムチェックシートを活用した学習習慣の確立など、子どもたちの自学力を高め、学力向上に結び付く取組をより一層推進していただきたい。
教育局としても、学校教育指導における年間複数回のコンサルティングの実施や、北見市、網走市、大空町、美幌町の四つの市町で取り組んでいただく「授業改善推進チーム活用事業」、紋別市立の小・中学校で取り組んでいただく「地域の学力向上支援事業」などを管内の学力向上策の柱として、確かな成果に結び付く支援をしていく。
重点二の「一人ひとりの教育的ニーズに応じた特別支援教育の充実」で特にお願いしたいことは、「中学校区をはじめとする地域の支援体制を確立するとともに、校内研修の充実により、教員の特別支援教育に関する専門性の向上を図る」ということである。
国が目指す「インクルーシブ教育システム」の理念のもと、各学校においては、個別の教育的ニーズのある幼児児童生徒に対して、自立と社会参加を見据えて、その時点での教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できる多様で柔軟な仕組みを整備するとともに、発達障がいのある幼児児童生徒も含め、一人ひとりに応じたきめ細かな指導や支援をより一層充実させる必要がある。
管内では、特別支援学校教諭免許状を所有した特別支援学校、特別支援学級担当教員がいる学校の割合が小学校三一・一%、中学校四四・二%にとどまっていること、個別の指導計画や個別の教育支援計画の作成を必要とする児童生徒に対して作成率が低いことなどの課題がみられることから、特別支援教育の成果を得るためには、関係機関が主催する特別支援教育に関する講習会への参加や道教委主催の免許法認定講習などに教員が参加し、校内における特別支援教育の充実を図ることが大切である。
各学校においては、市町村が設置する教育支援委員会や特別支援連携協議会を通じて関係機関等との連携を図りながら、域内における早期からの相談・支援体制を確立するとともに、道教委が作成した「校内研修プログラム」および実践事例集を積極的に活用した校内研修に取り組み、子どもたち一人ひとりへの支援の充実に努めていただきたい。
教育局としても、特別支援教育にかかる研修事業のより一層の充実はもとより、管内の関係機関等と連携を図った研修会の実施および関係機関等が開催する研修に関する情報提供、湧別町立上湧別小学校、湧別中学校、湧別高校で取り組む「発達障がい支援成果普及事業」の成果の普及に努めていく。
重点三の「豊かな人間性と感性を育む教育の推進」で特にお願いしたいことは、「“特別の教科 道徳”への移行を見据え、教師が自信をもって心の教育を進め、地域の子どもたちが自らの生き方についてじっくり考える機会をつくる」ということである。
子どもたちのより良く生きるための基盤となる道徳性を養うためには、校長の経営方針のもと、重点を明確にした道徳教育の全体計画および年間指導計画に基づき、子どもの発達の段階に応じた道徳教育を充実させるとともに、いじめの根絶・不登校の解消に向けた予防的な取組や、迅速で適切な対応を組織的に行う体制整備を一層充実させる必要がある。
管内では、参観日や公開研究会などを活用し、すべての学級が保護者や地域住民へ道徳の時間を公開している学校の割合が小学校四六・七%、中学校六九・二%にとどまっていることから、教師一人ひとりが、子どもの心に響く道徳の授業づくりができるよう、学校の体制を整備すること、子どもの心を耕す豊かな体験活動の充実を図ること、そして、子どもたちがいじめの未然防止などについて、自ら考え行動できる環境づくりなどの取組を進めることが大切である。
各学校においては、「地域の子どもは地域で育てる」という共通理念のもと、保護者・地域住民と手を携えながら、子どもたち一人ひとりに規範意識や自律心、他者への思いやりの心などを育む取組を積極的に推進していただきたい。
教育局としても、「道徳教育推進教師研修」および教育局独自の道徳教育事業等の研修事業の充実や、オホーツク地域いじめ問題等対策連絡協議会の協議を踏まえた取組の推進、「どさんこ☆子ども地区会議」をはじめ、網走市立白鳥台小学校、北見市立北中学校で取り組む「道徳教育推進校事業」の成果の普及に取り組んでいく。
重点四の「心身の健やかな成長を促す教育の推進」で特にお願いしたいことは、「児童生徒が運動をしたい、続けたいと感じる環境づくりをはじめとする、学校・家庭・地域が一体となった健やかな心とからだを育む健康教育を推進する」ということである。
二十七年度の全国体力・運動能力、運動習慣等調査における管内の子どもたちの状況は、昨年度の調査との比較で小・中学校、男女いずれも向上し、成果がみられているところであるが、依然として全国を下回っていることや全国学力・学習状況調査の児童生徒質問紙調査において「一日二時間以上テレビゲームをする」児童生徒の割合が全国と比較して、多い結果となっていることなど、体力向上と生活習慣の相乗的な改善を図る必要がある。
管内では、体力向上に向けた数値目標を設定している学校の割合が小学校九二・二%、中学校八八・五%にとどまっていることから、児童生徒の生活習慣の改善や心の健康問題への取組などの健康教育に積極的に取り組むこと、その上で、具体的な数値目標を位置付けた体力向上プランに基づき、体力向上に向けた組織的な取組を推進することが大切である。
各学校においては、子どもたちが望ましい生活習慣を身に付け、意欲や気力の源となる「心と体」を自ら鍛えることができるよう、地域全体が連携した取組を推進していただきたい。
教育局としても、体力向上に関する研修事業の充実や、PTA・関係機関との協働による、「どさんこアウトメディアプロジェクト」など、ネット利用も含めた望ましい生活習慣定着に向けた取組の充実、大空町で取り組んでいる、「体力向上先導的実践事業」の成果の普及に取り組んでいく。
重点五の「地域とともにある・信頼される学校づくりの推進」で特にお願いしたいことは、「家庭・地域と協働した組織、継続的な学校運営組織を確立する」ということである。
学校が地域の方々の信頼と負託に応えていくためには、自校の教育活動についての説明責任と結果責任を果たし、地域の人々と目標やビジョンを共有し、地域と一体となって子どもたちを育む、「地域とともにある学校」へと転換を図る必要がある。
管内では、保護者や児童生徒の学校評価を年間複数回実施している学校の割合が小学校三七・八%、中学校一七・三%にとどまっていることから、評価、改善を循環することによって、個々の教職員の教育公務員としての自覚の高揚を図ること、その上で、ミドルリーダーを中核に据えた組織的な学校運営体制を確立するとともに、学校運営を充実させるための方策として、学校運営協議会制度を導入し、地域総がかりで子どもたちを育てる取組を推進することが大切である。
各学校においては、国においてコミュニティ・スクールの設置が努力義務と規定されたことを踏まえ、教育委員会との連携のもと、導入に向けた準備を進めていただくとともに、学校課題と解決方策を明確にした学校経営に努め、保護者、地域住民の学校運営への参画意識を高め、家庭や地域と一体となった信頼される学校づくりを推進していただきたい。
教育局としても、「学校運営研修会」や「ミドルリーダー養成研修」等のミドルリーダーの育成に資する研修事業の充実はもとより、道教委が実施する「コミュニティ・スクール研修会」をはじめ、「学校力向上に関する総合実践事業」、小清水小学校、小清水中学校で取り組んでいる「小中連携・一貫教育推進事業」の成果の普及に取り組んでいく。
【終わりに】
以上、二十八年度のオホーツク教育の推進に当たり、基本的な考え方や重点的に取り組んでいただきたい事柄を申し上げた。
校長の皆さんには、「管内の子どもたちの学力を事実として受け止め、危機意識をもつこと」「未来のオホーツクを担う子どもたちを、我々の手で、地域全体で育む責任をもつこと」という認識のもと、日本の教育の動向や本道教育の情勢等を広い視野で見極め、学校・家庭・地域が一体となった教育活動の推進と、教育環境の基盤整備に向けたリーダーシップを発揮していただくことを期待している。
教育局としても、各市町村教委や校長会、教頭会、その他教育関係団体等との連携を一層深め、管内教育の充実を図るよう努めていくので、二十八年度の管内教育推進の重点への理解と、その実現に向けた協力をお願いする。
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