人権尊重が教育の生命線 五十嵐会長あいさつ概要―道特別支援学校長会総会・春季研
(関係団体 2016-05-18付)

特別支援学校長会総会あいさつ
あいさつする五十嵐会長

 道特別支援学校長会の二十八年度総会・春季研究協議会初日(十日、ホテルライフォート札幌)における、五十嵐利裕会長=写真=のあいさつ概要はつぎのとおり。

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 九州では、四月十四日に発生した熊本地震で、多くの方が被災され、今なお避難生活を余儀なくされている方たちがいる。

 特別支援学校の被災状況については、全特長から情報をいただき、会員にも伝えた。この状況に際し、事前に各障がい種に諮ったが、道特長会としてお見舞いをしたいと考えているので、のちほど提案させていただく。被災された皆さんには、心からお見舞いを申し上げる。

 また、私たちも危機管理の対応に、あらためて気を引き締めたい。

 本日の総会では、昨年度の活動の総括とともに、本年度の活動計画について協議いただくが、十九年の特別支援教育への転換から十年を迎える中、特別支援教育を取り巻く課題は山積している。

 国の障害者施策をみると、障害者差別解消法がこの四月からいよいよ施行となった。施行に当たっては、新聞、テレビ等でも取り上げられ、「障がいによる差別」や「合理的配慮」などについて、広く社会に対して話題提供がなされている。

 このことに関して、本道でも動きがみられるケースがすでに出ており、道特長会としても、様々な状況に対応できるよう、組織的に取り組まなければならない。

 次期学習指導要領改訂に関しては、教育課程企画特別部会等における議論を踏まえ、本年度内に中教審として答申がなされると聞いている。三十二年度の小学校から、中学校、そして、高校の年次進行と、順次実施予定となっている。

 各校においてはすでに、カリキュラム・マネジメントやアクティブ・ラーニングに関する研修等も取り組んでいると思うが、特に、企画特別部会の論点整理で示された「学校を、変化する社会の中に位置付け、教育課程全体を体系化することによって、学校段階間、教科等間の相互連携を促し、さらに初等中等教育の総体的な姿を描くことを目指す」という考えは、幼稚部から小中、高等部、さらには専攻科を有する特別支援学校として、大変重要なこと。実施に向けてしっかりと準備を進めていきたい。

 本道では、昨年十月に「北海道総合教育大綱」が発表され、「すべての子どもたちに、社会で自立するために必要な学力を身に付けさせる取組を進める」として、「学校・家庭・地域の連携のもとで子どもたちを育てることが大切であり、その具体的な推進方策として、コミュニティ・スクールを全道的に広める」としている。

 このことは、特別支援教育においても同様であり、重要な視点と考えている。全国でも同様の取組が求められているが、特別支援学校では、まだごく一部の学校に限られている。通学区域の広さ、そのための運営委員選出の難しさ、特別支援学校に在籍する児童生徒に対する地域の方の理解、「障がいに関する専門的な学校」としての認知の状況など、特別支援学校ならではの課題はある。

 しかし、だから特別支援学校はできないということではなく、その趣旨にかんがみ、実現に向けた方策を検討しなければならない。

 本道の特別支援教育については、道教委の二十八年度の教育行政執行方針で、共生社会の形成に向け、幼小中に加え高校等においても、発達障がいを含む障がいのある子ども一人ひとりの教育的ニーズに応じた指導や支援の充実が述べられている。

 高校については、調査研究協力者会議から三月三十一日に「高校における通級による指導の制度化および充実方策について」報告がまとめられた。三十年度の制度運用開始ということであるが、本道においても、高校のモデル校の実践を踏まえ、後期中等教育における連続性のある学びの場について、道特長会として施策の充実にかかわっていきたい。

 本道の特別支援学校は、「特別支援教育に関する基本方針」を踏まえ、本年度新たに四校の知的障がい教育校が開校し、分校九校を含めて国公立六十九校となった。二十五年度に策定された基本方針改定版も終盤に入る。

 特別支援学校の在り方では、新しい形の知的障がい特別支援学校高等部への移行に向けて、昨日、「入学者選考在り方研究協議会」の第一回目の会合がもたれた。この会には、道特長会から五人の校長が委員として参加するなど、本道の特別支援教育の一層の充実のために、次期基本方針の策定も踏まえ、道教委に対して学校現場の状況と、道特長会としての考えを十分に伝えていきたい。

 また、学校経営上の課題として、本年度新たに実施される道立学校職員人事評価制度やストレスチェック制度がある。教職員が百人、百五十人を超える大規模校も多い特別支援学校として、課題を整理し対応方策の共有も必要と考えている。

 最後に、特別支援教育のセンター的役割を担う、信頼され安全・安心な学校であるために、幼児児童生徒の人権尊重について、あらためて意識を高めたい。

 ことし二月に、「特別支援学校教職員の皆さんへ」という緊急アピールを道特長会、校長一人ひとりの思いとして発信した。しかし、体罰事故がいまだに生じている。

 特別支援教育課から、「不適切な指導の防止について」メールで指導をいただいたが、「不適切な指導」ということに問題の根深さがあると思う。このことは、私たちの教育の根幹にかかわることであり、今回、二月に発信した緊急アピールを再度用意した。

 すべての学校で、「人権尊重は特別支援教育の生命線」という認識のもと、信頼される安全・安心の学校経営に当たり、確かな成果を上げるようお願いする。

 本年度も様々な課題はあるが、組織として、迅速かつ効率的・効果的に取り組み、解決に当たっていきたい。

(関係団体 2016-05-18付)

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