文科省「教育支援センター等設置促進事業」 地域全体で支援体制構築 4市教委の事業計画概要判明―道教委(道・道教委 2016-06-07付)
道教委が本年度から取り組む「教育支援センター等の設置促進支援事業」の委託先となる四市教委における事業計画がまとまった。文部科学省が本年度から実施し、道教委が委託された「フリースクール等で学ぶ不登校児童生徒への支援モデル事業」の事業メニューの一環。苫小牧、岩見沢、小樽、石狩の四市教委が取り組む。小・中学校の不登校児童生徒に対し、学習支援やICTを活用した学習指導のほか、教育支援センターが地域の中核的機能を果たすため、学校への助言・援助を行う人材を配置。地域全体で不登校児童生徒を支援する体制の整備を図っていく。原則一年を事業期間とし、その成果を今後の施策の推進に活用するほか、報告書の配布やホームページへの掲載を通じて広く普及・啓発していく。
本道の不登校児童生徒数は、二十六年度で小学校八百十二人、中学校三千四百四十七人の合計四千二百五十九人。前年度と比べて二百三十四人増加している。また、高校では減少傾向にあるものの、小・中学校では二十四年度から増加傾向にあり、道教委では「憂慮すべき事態」とし、各種調査でその実態の把握に努め、未然防止と初期対応に向け様々な取組を行っている。
教育支援センター等設置促進支援事業は、文科省が全国的にも同様な状況となっている不登校児童生徒数の増加傾向の中、不登校児童生徒一人ひとりの状況に応じて、児童生徒が自らの進路を主体的にとらえ、社会的自立に向けて学習などの活動に取り組むことができるよう、学校や関係機関、フリースクール等の民間施設やNPO等が連携して、不登校児童生徒に対して経済面・学習面の支援が必要との考えから、モデル的な取組を都道府県等に委託。その課題や成果・効果を明らかにし、総合的な教育支援体制の構築を図るもの。
委託先となった都道府県および市町村は、①フリースクール等で学ぶ不登校児童生徒への支援②教育支援センター等の設置促進支援―の二つのメニューから選択する。
事業を行う四市の教委は、事業メニューのうち、②を選択。苫小牧市教委は、同市の適応指導教室に不登校支援員を一人配置。関係機関と連携を図りながらアセスメントとプランニングを行い、不登校などの兆候がみられる児童生徒や保護者に働きかけていく。
岩見沢市教委は、「教育支援コーディネーター」および「登校支援コーディネーター」を各一人配置。教育支援コーディネーターは関係機関との連携の窓口となり、児童生徒・保護者・学校の相談を受け、各関係機関との教育相談をコーディネートする。登校支援コーディネーターは登校支援教室に通うことができない児童生徒の家庭を訪問し、支援していく。
道教委では、これらの取組を通して、課題や成果をまとめ、報告書の配布やホームページへの掲載を通じて、全道に広く普及・啓発していく。
◆4市教委の事業計画概要
【苫小牧市教委】=類型3・教育支援センター等の機能拡充
▼事業の内容
市の適応指導教室に、「不登校支援員」を一人配置し、「不登校支援員」は、不登校児童生徒の学習や進路指導等の支援を行うために、関係機関と連携を図り、学校とともにアセスメントとプランニングを行う。
また、「不登校支援員」は、学校訪問等を通して、不登校児童生徒およびその兆候がみられる児童生徒や保護者に働きかけるなどして、学校適応指導教室の活用を促進する。
▼事業により見込まれる成果、評価・検証方法
▽事業により見込まれる成果
・不登校支援員が関係機関と連携して、学校とともに児童生徒のアセスメントとプランニングを行うことによって、不登校児童生徒および不登校の兆候がみられる児童生徒の早期発見・早期対応が図られることが期待できる
・学校適応指導教室の活用促進を図ることによって、不登校児童生徒の学習機会を保障するとともに、学校適応指導教室における教育相談、適応指導による不登校児童生徒の学校復帰が期待できる
▽事業の評価方法
・不登校支援員の学校訪問回数の累計
・不登校支援員が対応した不登校児童生徒数の累計、およびそのアセスメントとプランニングの結果についての分析・考察
・学校適応指導教室を活用した児童生徒数の累計
・「児童生徒の出席状況に関する報告書」における不登校児童生徒数の推移、および学校復帰を果たした児童生徒数の累計と不登校支援員の学校訪問等の関連についての分析・考察
【岩見沢市教委】=類型3・教育支援センター等の機能拡充
▼事業の内容
市の教育支援センターに「教育支援コーディネーター」および「登校支援コーディネーター」を各一人配置する。「教育支援コーディネーター」は、関係機関との連携の窓口となり、児童生徒や保護者、学校の相談を受け、スクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラースーパーバイザー、医療アドバイザーによる教育相談をコーディネートするとともに、登校支援教室における登校支援指導員による登校支援を行う。
また、「登校支援コーディネーター」は、登校支援教室に通うことのできない児童生徒の家庭を訪問し、児童生徒やその保護者および学校等を支援する。
▼事業により見込まれる成果、評価・検証方法
▽事業により見込まれる成果
・「教育支援コーディネーター」や「登校支援コーディネーター」がスクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラースーパーバイザー、医療アドバイザー等の専門的な視点による教育相談や、登校支援指導員と連携した登校支援を行うことによって、児童生徒やその保護者および学校等の不安や困難さを軽減するなど、学校復帰や社会的自立を促すことが期待できる
▽事業の評価方法
・市の不登校児童生徒の学校復帰率を、三〇%まで引き上げる(二十七年末現在で二十八人中六人の復帰で約二二%)
・二月下旬に開催予定の「教育支援センター運営委員会」で検討し、次年度の事業の改善へとつなげる
【小樽市教委】=類型2・アウトリーチ型支援、類型3・教育支援センター等の機能拡充
▼事業の内容
市教委に「支援員」を一人配置する。市における不登校の児童生徒七〇%(小十四人、中五十六人)のうち、市の適応指導教室へ進級している児童生徒は二十七年十二月末現在で二〇%(小一人、中十九人)である。
適応指導教室に通うことが困難な児童生徒については、市教委に配置した「支援員」が学校と連携しながら、家庭訪問等を通じて、相談、学習支援等を行うアウトリーチ型の支援に当たる。
また、「支援員」は、児童生徒一人ひとりの実態を把握するための調査(アセスメント)を行い、家庭訪問等を通じて、児童生徒およびその保護者と面談等を実施するなどのプランニングを行うなどして、支援体制を整備する。
これらのことについて、「不登校対策連絡協議会」等において、教職員や保護者と協議を行い、全市的な課題の把握に努め、不登校の未然防止、早期発見・早期対応に努める。
▼事業により見込まれる成果、評価・検証方法
▽事業により見込まれる成果
・「支援員」が学校と保護者との連携のもとで、不登校傾向の児童生徒の家庭を訪問し適切な教育相談や学習支援を行うことによって、社会的自立を促す支援を行うことが期待できる
・市内の各小・中学校における不登校児童生徒の状況把握を行い、適応指導教室の専任指導員と連携し支援計画を作成するとともに、スモールステップで対応することによって、不登校児童生徒の学校復帰が期待できる
▽事業の評価方法
・適応指導教室に通うことが困難な児童生徒に対して、どのような支援が必要か把握するため、当該の保護者全員にアンケート調査を実施する
・適応指導教室に通うことが困難な児童生徒に対して、家庭訪問等を通じて教育相談や学習支援等の実施率を五〇%以上にする
・市教委が主催する「不登校対策連絡協議会」において、不登校傾向がある児童生徒の保護者の参加率を一〇%以上にする
【石狩市教委】=類型2・アウトリーチ型支援
▼事業の内容
市教委に「教育相談ケースアドバイザー」を一人配置する。「教育相談ケースアドバイザー」は、学校を拠点として、適応指導教室、地域、関係機関が連携して不登校児童生徒の支援に対応する必要があることから、市のスクールソーシャルワーカー(SSW)がより効果的に機能するよう指導助言を行う。
同事業の普及啓発や地域全体の児童生徒支援の資質向上を図るとともに、「教育相談ケースアドバイザー」には、SSWとして活動できる人材を当てるなどして、自らもアセスメントやプランニングにかかわり、学校には教員研修等を実施するなど、児童生徒支援のリーダーとしての役割を担う。
▼事業により見込まれる成果、評価・検証方法
▽事業により見込まれる成果および事業の評価方法
・「教育相談ケースアドバイザー」が学校や適応指導教室、スクールソーシャルワーカーと連携することによって、個々の児童生徒が抱えるそれぞれの問題やニーズに応じて、教育的側面と福祉的側面による支援が期待できる
・これまで個で対応してきた子どもや保護者、家庭が抱える問題を様々な視点から把握することができ、望ましく効果的な支援を検討することができる
・適応指導教室スタッフおよび教育委員会職員との定例ミーティングにおいて、個々のケースについての支援計画、支援の経過について情報交流し、家庭や子どもの様子の変化や支援の効果について検討、協議を行うことができる
(道・道教委 2016-06-07付)
その他の記事( 道・道教委)
道教委が高校配置計画案(29~31年度)発表 函館西・函館稜北を再編 岩見沢西など6校で学級減
道教委は七日、公立高校配置計画案(二十九~三十一年度)を発表した。三十一年度計画では、函館西高校(三学級)と函館稜北高校(三学級)を再編整備し、新設校(六学級)を設置。岩見沢西高校など六校...(2016-06-08) 全て読む
29年度特別支援配置計画案 高等支援学校2校を新設 障害の程度による学科廃止
道教委は七日、二十九年度公立特別支援学校配置計画案を発表した。知的障害特別支援学校高等部の進学希望者増加に対応し、道南圏(北斗市)に職業学科設置の高等支援学校、札幌市南区に道内初の普通科職...(2016-06-08) 全て読む
道教委が医進類型指定校等連絡協議会開く 進路実現へ学力定着を 鉄緑会・冨田会長が講演
道教委は一日、道庁赤れんが庁舎で二十八年度医進類型指定校等連絡協議会を開催した=写真=。指定校や協力校の担当者など約四十人が参加。鉄緑会の冨田賢太郎会長による講演会や情報交換、研究協議など...(2016-06-08) 全て読む
28年度第1回道私学審議会 8件の認可・了承を答申 日体大附属高等支援設置など
道私立学校審議会(佐藤有会長)は三日、道庁赤れんが庁舎で二十八年度第一回審議会を開いた。日本体育大学附属高等支援学校の設置など八件の諮問事項について審議し、全件の認可・了承を答申した。 ...(2016-06-07) 全て読む
新規学卒予定者の雇用確保へ 生き生きと働ける場を 道教委等4者が経済団体に要請
道、道教委、道労働局、道経済産業局は五月三十一日、新規学卒予定者にかかる求人要請を実施した。道労働局の中村正子職業安定部長らが札幌市内の主要経済団体五ヵ所を回り、来春の新規学卒者における雇...(2016-06-07) 全て読む
道教委が地域の教育力向上推進会議 個別の活動をCSで集約 地域全体で子を育てるために
道教委は一日、札幌市内のかでる2・7で二十八年度第一回道地域の教育力向上推進会議を開いた=写真=。「有機的な連携(地域学校協働活動)をより一層進めるために必要なこと」について協議し、出席者...(2016-06-06) 全て読む
中1ギャップ問題未然防止事業―道教委 岩見沢など5地域で実施 中学校に生徒指導教員加配
道教委の二十八年度中一ギャップ問題未然防止事業推進地域が決定した。岩見沢市立東光中学校区など五地域。各推進地域では、検討委員会を設けるなどして推進体制を整備し、人間関係づくりの能力育成や学...(2016-06-06) 全て読む
道教委が高校・特別支援学校新任教頭研 管理職の〝4つの対応〟を 「メンタルヘルス」テーマに講話
道教委は五月三十・三十一日、札幌市内の道第二水産ビルで二十八年度公立高校および特別支援学校新任教頭研修会を開いた。二日目には、福利課の元田夏紀医療主幹が「教職員のメンタルヘルス」をテーマに...(2016-06-03) 全て読む
道教委がキャリア教育推進会議 CS導入で地域と連携を コーディネーターの育成必要
道教委は一日、札幌市内の道第二水産ビルで二十八年度第一回道キャリア教育推進会議を開いた=写真=。「小中高一貫ふるさとキャリア教育推進事業」の一環。会議では、「コミュニティ・スクール(CS)...(2016-06-03) 全て読む
来場者、1万人に到達!! 「フランス近代美術をめぐる旅」―函館美術館特別展
【函館発】道立函館美術館で開会中の特別展「フランス近代美術をめぐる旅」の来場者が一万人に達した。五月二十七日には、入場者一万人記念式典が執り行われた。記念すべき一万人目となった北出喜代彦さ...(2016-06-03) 全て読む