「今ある危機」に抗って 教え子を2度と戦場に送らない 北教組定期大会で小関委員長あいさつ(関係団体 2016-06-22付)
あいさつする小関委員長
北教組の第百二十七回定期大会(十六・十七日、札幌市内道教育会館)の初日における小関顕太郎中央執行委員長=写真=のあいさつ概要はつぎのとおり。
◇ ◇ ◇
大会開催に当たり、私たちが置かれている今日の状況を見回したとき、あらためて冒頭に確認しておくべきことがある。それは、安倍暴走政権の虚偽と欺瞞に満ちた憲法無視の数々の行為を断じて許してはならないということである。
あまりに多くの憲法理念の空洞化「政策」の乱発に、ともすれば「このくらいは」「ここまでなら」と麻痺してしまいがちになる私たち。しかし、私たちがこの現状を唯唯諾諾と容認するということは、次世代を担う未来の主権者である子どもたちを、再び犠牲にすることに間違いなくつながると危惧するからである。
不戦の誓いのもと、平和と民主主義の確立を標榜して結成された多くの労働組合の中で、「教え子を戦場に送ってしまった」猛省と悔恨のもと、教育労働者で結成された私たち北教組・日教組は、その原点に立ち返り、今こそ安倍政権に異議ありを突き付けなくてはならない。
安倍政権には規範意識や道徳意識の徹底を強弁する以前に、自らが憲法の順守規定を含めた立憲主義が何たるかを学ぶこと、民主主義を尊重すること、基本的人権を尊重すること、何よりも子どもたちを含む社会的弱者・いのちを大切にした政治を行うべきであることを行動で突き付けねばならない。
平和・積極的平和主義という耳障りのよい言葉を多用しながら、安倍首相はその実何を進めているのか。隠そうとしても隠しきれるものではない。
強権的弾圧を背景とした辺野古新基地強行建設やオスプレイの政治的利用、武器輸出と軍事大国化への道をひたすら突き進んでいる。輸出した武器によって、世界各地で命を落とす市民・子どもの存在があることをなぜ想像できないのか。
東北はもとより熊本の対策に全力を尽くさなければならないときに、潜水艦売り込みに失敗したとして悔しがる閣僚の姿がテレビ画面に大きく映し出されたときは、無性に腹立たしく、許し難い心情に駆られたのは私だけではないと思う。
真の平和と安定を願う市民の声、生活を無視していいわけはない。
安心・安全という言葉を使いながら、放射線被害の実相を隠蔽しつつ、原発輸出・再稼働にひた走る安倍政権。いまだに避難生活を強いられる人々がおり、除染が追いつかないグラウンドを目の前にたたずむ子どもたちがいる。放射能や甲状腺がんの恐怖と闘っている教え子と保護者がいる。
熊本地震のとき、稼働中の川内原発のある鹿児島県の震度をなぜ報道しなかったのか。なぜ最低でも緊急停止措置を取らないのか。崩壊した安全神話をこれでもかとごり押しする権限はないことを知るべきである。
いまだにアベノミクスの効果をしきりに喧伝している。しかし、私たちはこの喧伝は全く嘘であることを知っている。少なくとも多くの勤労者・市民のものではないことも知っている。安倍首相の放った矢はことごとく市民生活に打ち込まれている。
一部の富裕層が恩恵を受ける陰で、貧困と格差はますます拡大・固定化し、地域間格差・教育格差となっている現実がある。にもかかわらず、最低限のセーフティーネットである労働法制をも破壊しつくし、社会全体をブラック企業化に陥れる政策を強行している。安倍政権が打ち出した「頑張るものが報われる社会」は、弱者切り捨ての政策を隠蔽するものでしかあり得ず、言語道断のキャッチフレーズと言わざるを得ない。
医療・介護・年金など最低限の社会保障さえも踏みにじり、多くの悲惨な状況を生じさせている現実に真っ向から向き合わず、自治体の努力・自己責任・自助を強調する手法は、基本的人権・生存権を奪うものでしかない。
こうした政治姿勢の究極が、違憲の集団的自衛権行使を具体化し、世界的規模で米国とともに戦争を可能とする一連の戦争法を強行成立させるという暴挙に出た。まさに、恒久平和主義を定め、平和的生存権を保障した憲法をねじ曲げ、日本が歩んできた道を大転換し、「戦争する国」に突き進んでいると批判されても致し方ない。
これに異議を唱える者に対しては、「私が最高責任者である」「国民の信を得ている」などと開き直り強弁するに至っては、民主主義に対する破壊者以外の何物でもない。
平和憲法の根幹にもかかわることをいまだに「限定的」と国民を欺き、内閣が代わると憲法解釈も変えるような、立憲主義を否定する行為は歴史的犯罪行為であり、到底許されるものではない。
そう遠くない過去に、結局は侵略戦争に加担してしまった先輩たちの痛苦な反省の上に、それ以降、憲法の理念を社会に、教育に実現しようとしてきた先輩たちを含めた教育労働・教育実践の積み重ねの上に、現在の私たちがいる。私たちがなすべきは、子どもたちに銃を取らせてはならないことである。
座して見過ごすことは、将来に対する極めて無責任な行為である。戦争法の実働化阻止、廃案に向けた意思統一とたたかいの構築を、今一度確認しよう。このたたかいに多くの仲間を結集するときである。「教え子を二度と戦場に送らない」という原点は、私たち護憲勢力の結集という大きな課題を提示している。ならば、組合員相互の努力と知恵と行動で、この課題解決に向けて心血を注ごうではないか。
つぎに、安倍政権の「教育再生」施策に対するたたかいについて申し上げる。
安倍首相の唱える教育再生や教育正常化は、まさに冒頭に言及させていただいた安倍政権の民主主義とは全くかけ離れた思想に基づくものであることは明白である。
格差と貧困の連鎖の中で、世帯年収によって教育の機会に格差があるという現実。子どもの六人に一人が貧困の状態にあり、ひとり親世帯では二人に一人以上の子どもが貧困と過去最悪である。就学援助を受ける子どもが十五年で二倍以上に増加している。
道内に至っては、生活保護受給者が約十二万世帯にのぼっており、北海道の子どもたちの貧困率は二〇%を超えている。生まれ育った家庭や地域などの環境によって、子どもたちの将来が左右されている現実がある。
子どもたちが巣立っていこうとする社会は、不本意非正規を含む非正規労働者が四割を超え、さらに増加しつつあり、保障されるべき勤務労働条件が破壊されている。奨学金という名のローン地獄に陥っている多くの若者たちの存在。こうした社会状況をまともに受けている子どもたちが、私たちの目の前にいる。
増大し続け、ついには五兆円を超えた防衛予算。民主党政権時代に子ども手当に毎年三兆六千億円、高校授業無償化に三千九百億円が、子どもがいる世帯に投入された事実と比較したとき、少なくとも誰を大切にしようとしたかが明らかになる。
未来の主権者たる子どもたちに最善の努力をする政治こそが、教育行政こそが行われてしかるべきなのである。
学力向上を否定しているわけではない。点数学力至上主義に反対しているのである。子どもたち、教職員をどこまで追い込むのか。
私たちは、子どもたちがもっている閉塞感を払拭させ、どの子も等しく教育を受ける権利を享受し、ブラック企業化した社会ではない社会を創り出すことこそが、私たちを含めた大人・市民のなすべきことだ。
検定教科書によって、国が事実を歪曲し、歴史認識はかくあるべしということを押しつけるのではなく、歴史的事実から真摯に学ぶ教育の在り方や考え方が必要。歴史から真実を学ぶ力は、現状を分析する力になり、何をなすべきかの指標ともなり得る。その前提を変えようとする行為は、あってはならない。
道徳の教科化による一方的な愛国心・規範意識などを押しつける前に、憲法の理念を現実に根付かせる取組、様々な価値観をもった一人ひとりを認め合う取組を大切にすべきである。
学校は政治家のいるところではなく、子どもたちの息づく場所でなくてはならない。
機械的な統廃合を行い、地域から学校を奪い、地域から若者を奪い、さんざんに切り捨てておきながらのむなしい「地域創生」、「地域を捨てる教育」は止めよう。地域の中で地域に行き続けられる社会を創ろう。
私たち教職員は、平和で人権が尊ばれる社会の主権者として子どもたちをとらえ、成長を励まし、受け止め、寄り添いながら、科学的な真理・真実に基づく確かな自然観・社会観を育む存在である。そうした教職員を一方的な価値観で人事評価し、過酷な超勤実態に追い込んでいる事実は、結果として教育の有り様を大きく変質させてしまうことに気づくべきである。
憲法の理念を破壊する策動に対しては、私たちは決して妥協することなく、たたかいを進めていかなければならない。教え子を殺す側にも殺される側にも立たせない。教え子が切り捨てられる政策に反対する。ときの政権の思いつきで変更する教育行政やその実現のために教職員を利用しようとする政策にも反対する。
そういった意味で、私たちは護憲・反戦・平和・人権などにかかわる課題について、連合・フォーラム・市民団体などとともに展開する各種の取組にこれまで以上に全力で集中するとともに、総がかり行動などにそのけん引役として力を発揮することを方針化している。
また、学校現場がこれほどまでに社会の劣化と密接につながっている現状を考えたとき、北教組運動は社会を変える運動と密接不可分のものとなっている。であるからこそ、私たちの「学校五日制」「学校を変える運動」の原点に立ち返る自主編成運動の展開に運動の力点を置くことも方針化している。
きょう、あすの定期大会において、多角的な観点から切り込んでいただきながら、「今ある危機」「進行しつつある危機」に抗してたたかう方針の確立と、子ども・地域に寄り添った運動の展開を確立していただきたいと思う。
北教組運動の真髄である未来を切り拓く運動にともに参画していただくことを訴え、執行部としてのあいさつとする。
(関係団体 2016-06-22付)
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