最前線の思い、取り込んで 道小学校長会第2回理事研で松井会長あいさつ
(関係団体 2016-07-07付)

道小理事研松井会長あいさつ
あいさつする松井会長

 道小学校長会第二回理事研修会における松井光一会長=写真=のあいさつ概要はつぎのとおり。

          ◇          ◇          ◇

 先日の会長研修会では、各地区小学校長会のリーダーの皆さんに集まっていただき、各地区での具体的な課題や問題等を意見交換するとともに、全道の情勢や取組の状況を互いに把握し、道小として進む方向を明らかにしながら、各地区での活動を推進していく研修の場となった。

 会長会で話題になった広域人事については、さっそく六月三十日に、アンケート結果を道教委に資料提供するとともに、「広域人事に当たって、異動元の局と、異動先の局とが密接な連携をもち、異動教員のフォローを含めて、手厚く対応してほしい」などの意見を道教委に直接要望し、しっかりと指導していく旨の回答を得たところである。

 それでは、四点の情報提供をする。

 一点目は、教員の資質・能力の向上についてである。

 教員の資質・能力の向上にかかわって、中央教育審議会が昨年十二月に答申を取りまとめ、教員の養成・採用・研修の一体的改革を示した。この内容や本道の課題を踏まえ、道教委では、国の法制化に先がけ、道教員育成連絡協議会を設け、検討を開始した。

 会は、教育委員会や大学、四種校長会、PTA団体、民間企業などの委員で構成され、まずは核となる、「求める教員像」について協議したところである。

 新聞記事には、手続き的なことが多く書かれていたが、実際には、「求める教員像」についての論議があった。

 道小からは、全連小が全国四十七都道府県に調査した、「若手教員に求められる資質・能力について」の結果を報告した。一昨年までは、ベスト三は、教科指導力、児童理解力、生徒指導力であったが、昨年は第一位に「苦情対応力」が、常連の三つの力を抑えてトップになった。また、「危機管理能力」もベスト五に入るなど、実際に学校が困っている実態が浮き彫りになった。

 同様に、「大学で一番身に付けさせてほしい能力」としては、第一位にコミュニケーション能力が挙がった。民間の委員は、企業でも、コミュニケーション能力が今一番必要だという意見を言われていたが、大学では、コミュニケーション能力を大学の養成段階で身に付けさせることについては、難しさがあるのではという見解も示された。

 今後、ヒアリング調査、アンケート調査を行いながら、「求める教員像」を策定していく予定である。道小としては、現場に負担のないアンケート調査をすることや、最前線の学校の思いやニーズを取り込むことを求めていきたい。

 二点目は、教職員定数のさらなる充実を求める緊急要望書についてである。

 先日の会長研修会でも話したが、先月、道小は、道中学校長会、道PTA連合会とともに、高橋はるみ知事、遠藤連道議会議長、柴田達夫道教育長、さらに道内選出の国会議員に対して、「教職員定数のさらなる充実を求める緊急要望書」を提出した。

 この動きは、財政審議会が発表した「経済財政運営と改革の基本方針2016」、いわゆる骨太の方針に対して、全連小、全日本中学校長会、日本PTA全国協議会がそれぞれ対応し、緊急要望や要請を行ったことに、連動するものである。

 この要望書の骨子は二点である。

 一点目は、「少子化に応じた機械的な加配定数の削減についての議論はもうしないでもらいたい。不登校児童への対応や専科指導の充実、障がいのある児童や外国人児童への対応など、地域学校の実情に合わせて定数は増やすべきである。加配定数をきちんと確保してほしい」ということである。

 二点目は、「少人数学級の速やかな実現、小学校二年から中学校三年まで、三十五人学級を速やかに、かつ、確実に実現するという基礎定数の改善を実行してほしい」ということである。

 本年度、道小の活動として、道中、道P連とともにチーム北海道として一つになって、関係機関への要望活動に取り組んだことは意義深いと考える。

 また、教育関係者だけでなく、新たに首長をはじめとする他部局への要望活動として、道教委の全面協力をいただき、知事部局、道議会に対して直接会って働きかけたことを今後も続けていきたいと思っている。

 三点目は、総則・評価特別部会や小学校部会等の議論の取りまとめ(案)の内容を、道小事務所の西本文男所長が全連小を通じて入手したものである。このように全連小との太いパイプが、文科省をはじめとする早くて正確な情報を皆さんに伝えることができるものとなる。夏までに議論を終え、本年度中の中教審答申発表が目標で、比較的順調であるとの話である。

 総則に前文が記述されるのが今回の特徴である。

 グローバル化は社会に多様性をもたらし、急速な情報化や技術革新は人間生活を質的にも変化させつつあると、「論点整理」でも指摘されていた。グローバル化の進展と言われているが、前は国際化の進展と言っていた。グローバルというのはもう国の際がなくなって、ほとんど自由に行き来する時代になってきているということで使われている。

 一番いい例が、インターネットで何かを調べたり何かを発信したりすると、即座に世界中に広がっていくという時代になっているということである。

 とりわけ最近では、「第四次産業革命」とも言われる進化した人工知能の話題がある。この人工知能の発達はすさまじいものがあって、この前、アルファ碁というソフトが、囲碁の世界チャンピオンに勝ったということがあった。実は、この人工知能が人間に勝利することは、十年後には現実になるだろうとは予測されていたというのだが、十年早く現実になってしまったということである。

 こうした変化は、様々な課題に新たな解決策を見いだし、新たな価値を創造していく人間の活動を活性化するものであり、生活に便利さや豊かさをもたらすものと考える一方で、「人工知能の進化によって人間が活躍できる職業はなくなるのではないか」「今、学校で教えていることは時代が変化したら通用しなくなるのではないか」といった不安の声や未来予測も出されている。

 そのような中、教育界では、変化が激しく将来の予測が困難な時代にあっても、子どもたちが自信をもって、自分の人生を切り開き、より良い社会を創り出していけるよう、必要な資質・能力を育むことが求められているが、社会が求める人材像についても、感性を豊かに働かせながら、どのような未来をつくっていくのか、どのように社会や人生をより良いものにしていくのかを考え、自分なりに試行錯誤し、新たな価値を生み出していくことであるとしている。

 このように、学校と社会が共通の認識をもって連携協働しながら、子どもたちにどのような資質・能力を育成していくかを教育課程において明確にすることが大切であり、新学習指導要領の重要なキーワードである「社会に開かれた教育課程」の実現を主張している。

 この理念の実現のため、すべての教科等において育成すべき資質・能力を明確にし、それに基づき、教育目標や指導内容の構造が整理されていく。学校段階間のつながりも明確にされていくので、各教科等を学ぶ意義が明らかにされていく、いわば縦串を、縦糸を通すことになる。

 一方で、これからの時代に求められる資質・能力は、情報活用能力や課題解決能力なども含め、すべての教科で育まれるものがある。教科等を超えた視点で検討・改善するという、いわば横串を、横糸を通すものがある。中島みゆき風に考え、教科等の縦糸と、教科間の関係性を強める横糸で、織りなす布が教育課程であると考えると分かりやすくならないだろうか。布を縦糸と横糸で織りなす作業が、学校教育の改善・充実の好循環を生み出す「カリキュラム・マネジメント」の実現につながるのではないかと考えるのである。

 各学校の「カリキュラム・マネジメント」の実施に資するための総則の章立ての予想が出ている。

 つぎの六つの観点が総則の章立てとなる。

▽何ができるようになるか(教育目標と育成すべき資質・能力の明確化)

▽何を学ぶか(各教科等を学ぶ意義と教科等横断的な視点を踏まえた教育課程の編成)

▽どのように学ぶか(指導案等の作成と実施、学習指導の改善・充実)

▽何が身に付いたか(学習評価の充実)

▽子どもの発達をどのように支援するか(学習活動の基盤づくり、キャリア教育、特別な配慮を必要とする児童への指導等)

▽実施するために何が必要か(家庭・地域との連携、チーム学校等)

 カリキュラム・マネジメントは教職員が全員参加で学校の特色を構築していく営みであり、校長のリーダーシップのもと、すべての教職員が参加することが重要である。

 このカリキュラム・マネジメントを通じて、子どもたちに「何ができるようになるか」「何を学ぶか」「どのように学ぶか」を組み立てていくことが求められており、このうち、「どのように学ぶか」の鍵になるのが「アクティブ・ラーニング」の視点、言い換えれば、「子どもたちの主体的・対話的で深い学び」をいかに実現するかという視点である。

 そして、深い学び・対話的・主体的というキーワードを、①物事に対する見方・考え方を身に付けて深く理解する②多様な人との対話で考えを広げる③学ぶことの意味と自分の人生や社会の在り方を主体的に結び付けたりしていく―という学びとして説明している。

 こうした主体的・対話的で深い学びとは、これまでの日本の学校の授業研究の貴重な財産であるが、活動あって学びなしといった活動の型をなぞる授業でも特定の指導方法でもない。

▽習得・活用・探究の見通しの中で、教科等の特質に応じて育まれる見方・考え方を働かせて思考・判断・表現し、学習内容の深い理解や資質・能力の育成、学習への動機付け等につなげる深い学びが実現できているか

▽子ども同士の協働、教員や地域の人との対話、先哲の考え方を手がかりに考えること等を通じ、自らの考えを広げ深める「対話的な学び」が実現できているか

▽学ぶことに興味や関心をもち、自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら見通しをもって粘り強く取り組み、自らの学習活動を振り返ってつぎにつなげる「主体的な学び」が実現できているか

 ―この三つに整理されているところである。

 これまで総則には、小学校においてのみ、学級経営の充実が位置付けられ、中高においては位置付けられていなかった。

 今回、学級の重要性が今一度とらえ直され、総則においても小中高を通じた学級経営の充実を図ることが重要とされている。

 また、学校は子どもたちにとって、学習の場であり生活の場である。教員の指導は、学習指導の側面と生徒指導の側面をもつことになり、両者の目指すところは共有されることになる。

 万が一、人工知能に学習指導ができたとしても、人間関係に深くかかわる生徒指導はできない。ここに教員という職業は、未来を迎えてもなくならないという予測が成り立つのかもしれない。

 四点目は、日本教育会の総会でいただいた、「教育改革の動向」についてである。文部科学省初等中等教育局の長尾篤志視学官の講演内容である。

 グローバル化の進展と言われているが、日本の国際的な存在感は低下してきている。一人当たりのGDPが、一九九三年は世界第二位だったのに、今は世界十位に下がっている。世界のGDPに占める日本の割合も今後低下していく可能性がある。

 子どもたちの未来として、「子どもたちの六五%は、大学卒業後、今は存在していない職業に就く」「十~二十年程度で、約四七%の仕事が自動化される可能性が高い(二〇三〇年までには、週十五時間程度働けば済むようになる)」などの指摘があり、現在の職業の多くは今後なくなっていくと予想されている。

 果たして、そうだろうか。仕事の在り様が変わっていくと考えられないだろうか。例えば、医師という仕事で考えると、いろいろなことを調べてデータを入れるとおそらく何%かの割合で、これこれの病気ではないかと判断され、人間が診断するよりは、人工知能が診断する方が正しいのかもしれない。

 ところが、人工知能が診断し、こういう薬を飲んだ方がいいとか言われ、機械の前で、ただ薬だけもらって人間が健康になるかというとそんなものではないと思う。

 やはり医者がいて、これはこういうことだと、原因はこういうことが考えられるとか、それだけに限らない周辺のことなどを含めて、きちんと伝えることが必要になってくるはずである。

 そうすると、医者という仕事は、ただ単にいろいろな医学の知識があるだけではなく、むしろコミュニケーションがきちんとできる方が良いとか、あるいは、みんなの気持ちを和らげて、相談もある程度できるようなそういう方向に変わってくるのではないかと予想できる。

 教師という仕事も、そうではないかと思う。人工知能でかなり正確にいろいろな仕事ができるのではないかと思うが、やっぱり教員の仕事は必要だと思う。子どもたちにとって、前述の医者と同じように、実際に人間が対応していくという、こういう仕事は必要になるはずである。

 このように、職業というより、その仕事の在り様が変わってくると考えられるのである。

 学習指導要領改訂の方向性については、学習指導要領改訂の視点と、育成すべき資質・能力の三つの柱を踏まえた日本版カリキュラムデザインのための概念が発表されている。今までの論議をまとめてあり、「何ができるようになるか」は、新しい時代に必要となる資質・能力の育成であり、それは三つの柱、学力の三要素とも重なって、「何を知っているか・何ができるかという個別の知識・技能」「知っていること・できることをどう使うかという思考力・判断力・表現力等」「どのように社会・世界とかかわり、より良い人生を送るかという主体性・多様性・協働性、学びに向かう力、人間性」などで構成されていることが分かりやすく示されている。

 最後になるが、その他道内の情勢から紹介する。

 先日、道へき地・複式教育連盟の幹部との懇談があり、現状の把握や課題について情報交流を行った。委員長である田中和敏校長は、全国へき地教育研究連盟の会長に就任されており、全へき連の活動を北海道がリーダーシップをもって引っ張っている。

 本道の約三八%がへき地級の指定を受けており、昨年度より三十校も増えている事実を踏まえ、へき地複式における授業指導力を向上させるとともに、中・大規模校における少人数指導にも生かしていかなければならない。

 本道教育の質の向上のため、へき複連の活動は、未来の北海道教育のキーワードになっていくのではないかと思う。

 さて、今回の理事研のあと、八月には、きょう出席の多くの方々に参加していただく、文教施策懇談会・各課懇談会が予定されている。副会長や部長の皆さんには、いろいろと役割をお願いしている。長い時間になるが、道教委もこの会議の必要性を強く感じているので、本道の子どもたちの教育の質の向上のため、どうぞ力を貸していただきたい。

 続く九月には、いよいよ道小教育研究小樽大会が開催される。きょう午後から第二回分科会運営者研修会があるが、副会長・理事の皆さんには、大会の成功に向けて全力を傾けている小樽市小学校長会の努力に応えるためにも、分科会の充実に向けた協議をお願いする。

 また、開会式から閉会式までの完全参加をはじめとする校長としての対応を、地区校長会の研修等の場を通じてあらためて呼びかけるようお願いする。

 道小は、北海道の素晴らしい校長や各地区を大切にする校長会としての役割を自覚し、「未来を見据えチーム北海道として進む道小」としての活動の改善と充実に向け、検討を重ねていきたいと考えている。

 本日は、理事研修会をはじめ、長丁場となるが、どうぞよろしくお願いする。

(関係団体 2016-07-07付)

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