広域人事に関する調査の集計と考察―道小まとめ　学力向上・教育課程改善に効果　経済的・精神的サポートの充実が鍵

（関係団体 2016-07-05付）

　道小学校長会（松井光一会長）は、「二十八年度広域人事に関する調査の集計と考察」をまとめた。二十三年度からスタートした広域人事制度が六年目を迎え、三回の戻り人事が行われている。今回の調査では、対象者を戻り人事二年目終了者および勤務校の校長にまで広げ、同制度の課題とともに成果について考察。教職員の適正配置を図ることによって、「地域における学力向上や教育課程の改善を図ることができる」といった成果が挙がっている。一方で、「異動者への経済的・精神的なサポートの充実」「異動元の管内に戻る際の待遇措置を明確にする必要がある」などを今後の課題・改善点に挙げている。

　広域人事制度は二十三年度からスタート。教職員の適正配置を推進することで、地域における学力向上や生徒指導等教育課題の改善に資することで、全道的な教育水準のかさ上げを図るもの。

　平均年齢の高い管内の中堅層の教諭が、平均年齢の低い地域を有する管内の学校に異動し、異動先で教育実践の中核を担ったあと、異動元の管内に戻りその経験を生かす。また、若年層の教諭が平均年齢の高い管内の学校に異動し、異動先で力量を身に付けたあと、異動元の管内に戻り、その知見を還元することなどを目的としている。

　今回の調査は、①三年目終了者本人および異動元校長・異動先校長②一年目対象者本人および異動元校長・異動先校長―の二項目に加えて、新たに、③戻り人事二年目終了者本人およびその学校の校長―を加えた。

　①はそれぞれ二十七人、②は各十六人、③は各十四人の合計百五十七人。そのうち、百五十三人から回答を得た。

　三年目終了者本人に対する調査では、制度に参加して良かったこととして「授業力の向上」と「職場や仲間との交流」が、ともに七三％と高い割合を示している。

　また、参加して大変だったと思うことでは、「精神的な負担」が三五％、「学力の向上」が三一％など。道小では、制度のねらいを達成するために尽力していると評価する一方で、「精神面でのサポート充実」「金銭面での支援などが必要」と分析している。

　三年目終了異動元校長・異動先校長に対する調査では、対象教諭の三年間の様子について、四四％の異動元校長が「大いに貢献した」と答えており、「貢献した」と答えた三三％を加えると八割近くの校長が、制度による効果を肯定的にとらえている。

　今回新たに加えられた、戻り人事二年目終了校校長、本人に対する調査では、教員の活躍ぶりについて、八五％の校長が「授業力の向上」を挙げている。また、本人にどのような変化があったかという問いには、七七％が「授業力の向上」「職場仲間」を挙げている。

　調査全体の考察では、成果として、「教職員の適正配置を推進することによって、地域における学力向上や教育課程の改善を図ることができる」「異動者は、今まで経験のない他管内の教育実践にふれることで、新たな気づきや意欲の向上につながり、実践の幅や視野を広げることができる」などとしている。

　課題・改善点では、「制度の趣旨や期待されていることを丁寧に説明し、意見交換しながら、制度の改善を進める（校長に対する説明、意見交換等）」「異動者への経済的・精神的なサポートを充実させる」「元の管内に戻る際の待遇措置を明確にする」などと指摘している。

(関係団体 2016-07-05付)