札幌市教委が民族教育研修会開く　教育推進へ在り方探る　講演、実践発表など通し

（市町村 2016-09-06付）

アイヌ民族教育の在り方について考えた

　札幌市教委は八月三十一日、札幌市アイヌ文化交流センター「サッポロピリカコタン」で二十八年度「札幌市民族教育に関する研修会」を開催した。市内小学校や中学校の教職員約三十人が参加。講演や実践発表などを通して、学校におけるアイヌ民族教育の在り方について考えた＝写真＝。

　この研修会は、アイヌ民族の歴史・文化等に関する指導事例について交流を深めるとともに、アイヌ民族教育の在り方について意見交流を行い、さらなる教育の推進に資することを目的としている。

　この日、教育課程担当課の伊達峰史指導主事があいさつした。物事を理解するには、①知った②覚えた③分かった―の三段階があることを説明。「今回は“分かった”の段階まで理解を深めてもらいたい」と求めた上で、「アイヌ協会の会員と話す良い機会。会話を弾ませて楽しい研修会にして」と呼びかけた。

　続いて、札幌アイヌ協会の阿部一司会長がアイヌ民族の歴史や文化、人権をテーマに講演。はじめにビデオを上映し、アイヌの人々が日本とさかんに交易しながら、口承文芸や踊りなどの伝統文化を守りながら生活してきたことを伝えた。

　政府の北海道開拓が急激に進んだ十九世紀からは、言語や生活習慣を禁じて和風化を強制され、明治三十二年策定の「北海道旧土人保護法」をはじめとする不当な差別を受けてきたことを説明。現在も生活の中に差別や格差が残っていることから、互いに存在を認めて理解し、尊重し合える社会をつくる必要性を強調した。

　阿部会長は「学校ではアイヌ民族の年表をほとんど教えない。副読本を活用し、子どもたちに正しい歴史を教えてもらいたい」と切望した。

　このあと参加者は、小・中学校社会科の実践発表のほか、体験学習として民族楽器の「ムックリ」づくりを行った。

(市町村 2016-09-06付)