権利としての教育充実 國田委員長あいさつ概要
(関係団体 2016-11-02付)

道高教組中央委國田委員長あいさつ
あいさつする國田委員長

 道高教組の第二百三十二回中央委員会兼第三回支部代表者会議における國田昌男中央執行委員長=写真=のあいさつ概要はつぎのとおり。

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 昨日、核兵器禁止条約について交渉する国連の会議を来年に招集するという決議案を、圧倒的な賛成多数で採択したと報じられた。国際社会が核兵器の禁止に向け、歴史的一歩を踏み出したことに、心から拍手を送りたい。北海道からも多くの高校生が今、ヒロシマやナガサキに見学旅行に行っていると思うが、彼らにとって最善の贈り物になったことと思うし、人類にとって多大な恩恵をもたらす決議となることを期待せずにはいられない。

 さて、今日の子どもと教育をめぐる課題は多岐にわたるが、「子どもの貧困」は早急な対策が求められている。ニュース番組が、ひとり親家庭に育った女子高校生が経済的理由から専門学校への進学を諦めたことを取り上げた。それにかかわって、「貧困ではない」「捏造だ」などの悪意に満ちた中傷が広がっていることが話題になった。新聞は、この問題を社説で取り上げて、「卑劣極まりない」「まず貧困の実態をきちんと理解すべきだ」と強調し、「生活保護の不正請求をたたくような感覚で、子どもの貧困に厳しい目を向けるのは間違っている」と指摘した。

 OECDによる子どもの貧困ランキングは、国際的にみても深刻さを増す日本の状況を映し出している。厚生労働省が公表している直近の数値は一六・三%で、最も低いデンマーク三・八%の四倍である。中でも、ひとり親家庭の貧困率は五四・六%にも達し、働いているひとり親のもとでの相対的貧困率は世界一。「日本は、仕事をすることが貧困率を下げることにならない唯一の国」である。

 こうした状況に自衛隊リクルートを結びつけて、防衛省は、予備役将校訓練課程(ROTC)と呼ばれる米軍の制度を参考に、自衛隊入隊者を前提にした奨学金などが目玉の、新たな募集制度を検討している。

 「子どもの貧困」を深刻化させてきた背景には、歴代政府が進めてきた雇用、福祉、社会保障の切り下げがある。安倍政権になって、とりわけ目につくのが、経済原理を人権に優先させる施策である。TPPしかり、原発しかり、年金しかり。そして、辺野古や高江の基地建設・固定化など、何を言っても聞く耳をもたない姿勢、強権的な手法は、国民的な怒りをかっている。安保法制による新たな任務が課されようとしている南スーダンへの自衛隊派遣は、PKO参加五原則の根底条件さえ欠いている。まさに民主主義の蹂躙と言わざるを得ない。

 こうした状況を目の当たりにして、教職員組合ができることは何だろうと考えない日はない。

 貧困の連鎖を断ち切るための、教育の充実は論を待たない。とりわけ、貧困ビジネスと揶揄される「奨学金」は借りる生徒・保護者も、それを紹介する教職員も、どんな生活状況になっても返済を免れないという現実を考えれば、暗澹たる気持ちになる。

 教育予算増額によって、「子どもたちが安心して学べる学校」を目指し、ゆきとどいた教育をすすめる署名が今、各地で行われている。こうした運動を励ますように、香川県や長野県では、地元に就職したり、地元の大学等に進学したりした場合に、返還免除とする実質的な給付型奨学金が創設され、年々拡充している。私も加わった「高校生の修学・進路保障を求めるキャラバン」では、青森県、秋田県、山形県で大学入学一時金等の返還免除の実質的な給付型奨学金が創設されたことが紹介され、こうした動きが今、他県にも広がりをみせている。

 北海道でも、多くの自治体や企業が、子どもたちのために修学支援をしているし、ニュースは、市民の寄付三億円で給付型奨学金創設をした恵庭市の話題を報じた。

 多くの道民、国民は、「子どもの教育環境」を何とか良くしたいと願っていて、その具体化を様々な方法で試みている。

 この思いと私たちがつながって、「学校の今」を語りながら、子どもを中心にした議論と運動が展開されているし、今夏の台風等の被害で修学困難になる生徒が出ることが予想される現状においては、その広がりは、なおのこと期待される。

 新自由主義の本質は、自己責任論をとことん追求すること。しかし、私たちの運動は、この考えを排し、誰でも、どこでも、等しく教育を受けることができる、いわば、「権利としての教育」を充実させることである。学校教育は今、教職員の「自助」と「共助」によって支えられている。教育行政の本旨は、教育内容に口を挟むことではなく、教育条件整備である。教職員が置かれている勤務実態も議論しながら、部活動の在り方については、新たな提案に基づく議論をしていきたいと思うが、それも含めて、「権利としての教育」を充実させる運動に大いに勤しもうではないか。

 ことし七月の参院選挙から、十八歳選挙権が実現した。それに伴って、学校へは新たな期待が生まれている。子どもの人権を尊重した活動が求められるのは当然である。その際に、私たち教職員の人権意識、権利意識の高揚も求められる。私たちの発想の大元は憲法であって、その三原則は誰もが知っている。しかし、自民党改憲草案による新三原則を知っている人は多くはないであろう。

 それは、「国民主権の縮小」「戦争放棄の放棄」「基本的人権の制限」である。重大なのは、この三原則に沿うように今、政治が方向付けられていること。そのことを私たちは理解しておくことが必要であるし、職場で知らせる、議論することは、もっと必要である。

 新しい学習指導要領の「審議のまとめ」を中教審が出したが、子ども一人ひとりの成長と学びの保障につながる内容なのか、甚だ疑問と言わざるを得ない。今回の「まとめ」は、指導方法や評価にまで言及し、より一層、グローバル人材育成を推し進める内容である。

 併せて、「政治的中立性」を盾に、教育内容への政治介入がみられるが、一つ一つの事態に、憲法に照らした判断を突きつけていくことが求められるし、何よりも、私たちが憲法を実生活に活かしていくことが、その対抗軸になる。

 教員の地位勧告から五十年のことし、子どもの状況をよくみて、理解している教職員組合が、学校でも、社会でも、その姿を現すことが今、どんなに求められているであろう。教育研究集会や賃金交渉、教育予算交渉が控えるこの時期は、教職員組合がその姿を現わす好機。秋の教育運動を大いに進めるに当たって、職場や地域の状況を出し合い、どうすれば権利としての教育が実現されていくか、活発な議論が展開され、そのことを通して議案が補強されることを期待する。

(関係団体 2016-11-02付)

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