松野文科大臣がメッセージ発信 「考え、議論する道徳」へ いじめに正面から向き合い( 2016-11-22付)
松野博一文部科学大臣は十八日、メッセージ「いじめに正面から向き合う“考え、議論する道徳”への転換に向けて」を発信した。松野大臣は、現実のいじめの問題に対応できる資質・能力を育むため、「あなたならどうするか、を真正面から問い、自分自身のこととして、多面的・多角的に考え、議論していく“考え、議論する道徳”へと転換することが求められている」と指摘。道徳の授業を行う教師に対し、「道徳の授業の中で、いじめに関する具体的な事例を取り上げて、児童生徒が考え、議論するような授業を積極的に行う」ことを求めた。
松野文科大臣はメッセージで、「子どもたちを、いじめの加害者にも、被害者にも、傍観者にもしないために、“いじめは許されない”ことを道徳教育の中でしっかりと学べるようにする必要がある」と強調した。
これまでの道徳教育について、「読み物の登場人物の気持ちを読み取ることで終わってしまっていたり、“いじめは許されない”ということを児童生徒に言わせたり書かせたりするだけの授業になりがちと言われてきた」と指摘。現実のいじめの問題に対応できる資質・能力を育むため、「あなたならどうするか、を真正面から問い、自分自身のこととして、多面的・多角的に考え、議論していく“考え、議論する道徳”へと転換することが求められている」との考えを示した。
道徳の授業を行う教師に対しては、道徳の授業の中で、「どのようなことが、いじめになるのか」「なぜ、いじめはしてはいけないのか」「どうやって、いじめを防ぐこと、解決することができるのか」など、「いじめに関する具体的な事例を取り上げて、児童生徒が考え、議論するような授業を積極的に行う」ことを求めた。
また、こうした取組は、道徳の特別の教科化の全面実施を待たずにできるとし、学校や児童生徒の実態を踏まえつつ、「できるところから、いじめに関して考え、議論する授業を積極的に展開していただきたい」と呼びかけた。
一方、文部科学省では、道徳教育の充実のための資料などをホームページ上で提供する「アーカイブセンター(仮称)」を設け、「考え、議論する道徳」の授業づくりの参考となる実践事例集(映像資料など)、道徳や特別活動等で活用できる、いじめの具体的な事例から考え、議論する教材などを、順次公開し、各学校の取組を後押ししていく考え。
また、「考え、議論する道徳」への転換の趣旨について、広く周知するため、各都道府県等が行う独自教材作成、研究協議会などへの支援、全国七会場での道徳教育指導者養成研修(独立行政法人教員研修センターとの共催)、道徳の特別の教科化についての保護者向けリーフレットの作成、配布なども進めていく方針だ。
◆松野文科大臣メッセージ
松野博一文部科学大臣のメッセージ「いじめに正面から向き合う“考え、議論する道徳”への転換に向けて」はつぎのとおり。
◇ ◇ ◇
十一月二日、いじめ防止対策協議会から、いじめの防止等の対策にかかる提言をいただきました。文部科学省は、これに沿った取組を様々な角度から総合的に進めてまいります。
その中でも、私は特に、平成三十年度から全面実施となる「特別の教科 道徳」の充実が、いじめの防止に向けて大変重要であると思っています。
いじめられた子どもは、学校に通えなくなったり、心身の発達に重大な支障を生じたり、尊い命が絶たれるという痛ましい事案も発生しています。いじめた子どもも、法律または社会のルールに基づき責任を負わなければならない場合があるとともに、その心に大きな傷を残します。「いじめのつもりはなかった」「みんなもしていたから」ではすみません。また、いじめられている子どもを見ていただけの周囲の子どもも、後悔にさいなまれます。
子どもたちを、いじめの加害者にも、被害者にも、傍観者にもしないために、「いじめは許されない」ことを道徳教育の中でしっかりと学べるようにする必要があります。
▼「考え、議論する道徳」への転換
道徳の特別の教科化の大きなきっかけは、いじめに関する痛ましい事案でした。
これまでも道徳教育はいじめの防止に関して大きな役割を負っていました。しかし、これまでの道徳教育は、読み物の登場人物の気持ちを読み取ることで終わってしまっていたり、「いじめは許されない」ということを児童生徒に言わせたり書かせたりするだけの授業になりがちと言われてきました。
現実のいじめの問題に対応できる資質・能力を育むためには、「あなたならどうするか」を真正面から問い、自分自身のこととして、多面的・多角的に考え、議論していく「考え、議論する道徳」へと転換することが求められています。
このため、道徳の授業を行う先生方には、ぜひ、道徳の授業の中で、いじめに関する具体的な事例を取り上げて、児童生徒が考え、議論するような授業を積極的に行っていただきたいと思います。
いじめやいじめにつながる具体的な問題場面について、例えば、
・どのようなことが、いじめになるのか
・なぜ、いじめが起きるのか
・なぜ、いじめはしてはいけないのか
・なぜ、いじめはいけないと分かっていても、止められなかったりするのか
・どうやって、いじめを防ぐこと、解決することができるのか
・いじめにより生じた結果について、どのような責任を負わなくてはならないのか
―といったことについて、自分のこととして考え、議論して学ぶことが大切であると考えます。
こうした学びは、いじめという問題だけではなく、道徳教育の目標である「自己の生き方を考え、主体的な判断のもとに行動し、自立した人間として他者とともによりよく生きるための基盤となる道徳性を養う」ことそのものにつながるものであると思います。
こうした取組は、道徳の特別の教科化の全面実施を待たずにできることです。学校や児童生徒の実態を踏まえつつ、できるところから、いじめに関して考え、議論する授業を積極的に展開していただきたいと思います。
( 2016-11-22付)