Pick Up 2016②札幌市教委―普及啓発・制度理解が鍵に 事務職員の事務「共同実施」試行控え 来年4月から50~60人が参加(市町村 2016-12-19付)
学校事務職員―。学校における「ヒト・カネ・モノ・情報」にかかわる事務全般を取り扱い、学校の円滑な経営を縁の下で支えている。学校にとってなくてはならない存在だが、小・中学校では一校に一人の配置が基本で、「一人職場」ならではの課題がかねてから指摘されてきた。「事務職員の経験によって、各校ごとの業務内容が異なる」「人材育成上の制約がある」など、複数の学校関係者が口をそろえる。そうした課題を解決しようと、事務職員の在り方をあらためて検討しようとする動きがある。
来年四月に県費負担教職員の給与負担等が移譲される札幌市では、学校事務職員の給与負担等も市費となり、一般事務職員と差がなくなる。この変化を、「(課題解決に)取り組むことができる状況になった」ととらえた市教委は本年度、学校事務職員の在り方を検討。来年四月から小・中学校の事務職員がグループで事務を行う「共同実施」の試行を決めた。
試行は三年間を計画。区ごとに五~六人程度のグループをつくる。各グループでは、教職員の住居手当や通勤手当、年末調整など経理・給与関係等について共同事務処理に当たることを見込んでいる。内容を検証しながら取り組み、業務の効率化・精度向上を目指す。
市教委は事務の効率化によって事務職員が校務へ一層参画し、また、教員がこれまで以上に教育活動に専念できることで学校運営の一層の向上につながると期待する。
しかし、当の事務職員からは、「移動に要する時間や、グループ会合の準備など、実質的な負担が増えてしまうのでは」「グループとして全体の事務を行うことで自分の所属する学校の事務がおろそかになってしまう」など、取組を不安視する声が上がっている。
ある校長は、「一人で仕事をするのが当たり前だった中で、人と協力して仕事することに抵抗感があるのでは」と、事務職員の胸中を察する。
こうした不安感は、〝新たな取組〟に伴いがち。そうした中、市教委には、すでに実施している類似の事例がある。「用務主任制度」だ。市教委が二年間の試行期間を経て二十八年度から本格実施しているもので、小・中学校の全用務員がグループに分かれ、草刈やワックスがけなどを協力して取り組んでいる。
試行前には、用務員の間で不安の声が多かった。しかし、いざスタートを切ると、「自身のスキルの底上げになった」「横のつながりができるなどメンタルヘルスにつながる」「共同で仕事を達成し、励みとなった」など、成果を実感する声が相次いだ。
ある学校では、教育実践発表会の際、自校の用務員が学校内の業務に当たり、グループ内の用務員が駐車場の案内を行うといった取組もみられたという。「共同による成功体験によって地域の一員としての自覚をもち、学校のために何ができるかと考える人が増えた」と、意識改革への効果を示す声もある。
事務職員における共同実施にも高い効果が期待される。一方で、用務主任制度が全員参加での試行だったのに対し、共同実施は十区十グループ計五十~六十人でのスタートとなる。全事務職員の約八割に当たる約二百七十人は、試行を見守る形だ。ある用務員の「制度に反対していた人も実際に取り組むことで、その効果を感じていた」という指摘を踏まえると、試行を“見守る立場”の職員に対するフォローが欠かせない。
市教委は、月に一度、区ごとに開催している学校事務定例会で、職員や共同実施参加者による説明を計画するなど、制度に対する周知を進めたい考えだ。
四月からの「共同実施」試行においては、事務効率化といった成果の実現はもちろん、その成果の普及啓発を行い、取組への理解を十分に図ることが求められそうだ。
(市町村 2016-12-19付)
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