Pick Up 2016③上川管内―〝教え〟重視の組織に転換へ 東神楽町「チーム学校」構築 30年度、全小中で本格始動
(市町村 2016-12-20付)

 近年、少子高齢化や情報化が進んだことで社会の様相も急激に変化し、学校現場の業務内容が複雑化している。「日々の業務に手一杯でじっくりと子どもと向き合う時間がない」「部活動の指導で十分な休みが取れないこともある」など、多忙感にあえぐ教員の声も少なくない。

 こうした状況を解消するには、教員以外の専門スタッフを学校に配置して教員の負担を軽減させ、子どもと向き合う時間を確保した上で、学校マネジメント力の強化を図る「チーム学校」が求められている。そこで、文部科学省は本年度、委託事業「チーム学校の実現に向けた業務改善等の推進事業」を始動。そこに名乗りを上げたのが東神楽町だ。

 モデル実践中心校に指定した町立東聖小学校(古木勉三校長)でのチーム学校の構築に向け、教育行政や学校経営を専門とする兵庫教育大学の日渡円教授らに調査研究を依頼した。日渡教授らは、同校職員や校区内の住民、道教委を対象としたヒアリング・アンケート調査を重ね、町に適した業務改善と学校組織の在り方を探ってきた。

 学校が、複雑化した現在の課題に対処しきれていない原因として、ある研究者は、「主任制度による役割の固定化」を挙げる。

 そこにくさびを打ち、学力向上や地域とともにある学校づくりを図るものが日渡教授の提案だ。主任制度から離れた、〝教え〟に重きを置く組織への転換を説く。

 具体的には、教科等あるいは学年を中心とする組織をつくるとともに、地域連携の分掌を新設。加えて、教育委員会と連携し町内の学校事務をサポートする支援室の設置や、学校予算の全額配当・裁量を基本とした環境整備を盛り込んでいる。

 東聖小の現在の学校組織は、教務、文化、研修、生徒指導、保健体育、事務、学年の七部体制。これを、校長、教頭の下に、管理職と支援室長、主幹教諭、主任教諭からなる企画会を構成。その下に学年部と〝教え〟をマネジメントする研究部、支援室を置く形に組み替えるものだ。

 教務および学年主任を置きつつ、主任制度によらない学校改革について、ある管理職は「既存の枠組みからはみ出すことは考えられなかった。(実現することで)硬直した学校現場が変わるかもしれない」と期待を寄せる。

 古木校長は「ハードルは高い。提案を現実に落とし込むにはどうすれば」と頭を悩ませる。「各担当によって仕事の大変さに差がある。重複している業務を削り、一人ひとりが機能し、納得できる組織をつくりたい。保護者や地域、教職員の理解を深めていかなければ」と話す。

 町教委も学校改革に向けた準備に取りかかる。学校管理規則を改め、事務職員の仕事を見直すとともに、町内五校の小・中学校の事務を統括する支援室の設置を見込む。

 学校予算にかかわっては、従来の予算費目ごとの予算配当とは異なり、学校に充てられた総額の範囲内で、費目に拘束されずに自由に予算を運用できるシステムへの移行を検討している。

 水野和男教育長は「支援室の設置場所と時期などは未定」としながらも、「今の段階で、できることから業務改善に着手する必要がある」と意欲を示す。

 今後は、二十九年二月に最終的な組織の在り方を具体化し、「東神楽モデル」として構築。次年度は、文科省の「学校現場における業務改善加速事業」を活用し、モデルを軌道に乗せたい考え。

 こうした事業等を活用しながら、スクールソーシャルワーカーや業務アシスタント、看護師、弁護士など専門性を有した様々なスタッフを学校に配置することで、「チーム学校」を実現。三十年度には町内全小・中学校で本格始動につなげたい方針だ。

 上川教育局は「各種学力調査を分析し授業改善等を進める学力向上推進委員会の新設や、地域連携・学校間連携を担当する係の明確化など、解決すべき課題に対応する校内体制の改善が求められている。その点で、日渡教授の提案は具体的な示唆に富む」と評価する。

 日渡教授は「日本の学校は大規模校も過小規模校も同じ組織体制。各学校の目的に応じた組織に、柔軟に変えていく必要がある」と話す。これまで“当たり前”とされてきた学校組織にメスが入る。町の挑戦は、今後の学校組織の在り方に一石を投じるか、注目が集まる。

(市町村 2016-12-20付)

その他の記事( 市町村)

アスベスト対策に1.5億円を計上 函館市4定補正予算

 【函館発】函館市の四定補正予算が可決した。うち、アスベスト含有断熱材を使用している市内二十一施設の対策に一億五千二百八十万円を充てる。  教育関係施設をみると、中学校七校に七千五百四十万...

(2016-12-22)  全て読む

地域と学校の連携推進 第3次生涯学習推進構想案―札幌市教委

 札幌市教委は、二十日の教育委員会会議で第三次札幌市生涯学習推進構想案を公表した。二十九年度から十年間の生涯学習推進の方向性を示したもの。「市民の学びとつながりが豊かな未来を築くまちさっぽろ...

(2016-12-22)  全て読む

効果的な協調学習追究 「新しい学び」授業研究会開く―東神楽町教委

新しい学び授業研究会全体会  【旭川発】東神楽町教委と東神楽町「新しい学び」研究会(古木勉三会長)は六日、町内で第三回授業研究会を開いた。町立東聖小学校(古木勉三校長)と町立東神楽中学校(飯田勝彦校長)で、東京大学大学...

(2016-12-21)  全て読む

小中男女とも体力合計点が改善 全国体力・運動能力調査結果を公表―札幌市教委

教育版1面表  札幌市教委は二十日、二十八年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果を発表した。小学校男子で二項目、小学校女子で一項目が全国平均を上回ったほか、前年度と比べ小・中学校男女ともに体力合計点の...

(2016-12-21)  全て読む

厚真町教委が全国学力調査結果公表 小中全科目で全国平均超え 家庭学習定着・手厚い指導など

 【室蘭発】厚真町教委は、二十八年度全国学力・学習状況調査結果を公表した。平均正答率をみると、小・中学校の全科目で全国・全道平均を上回った。町教委では、今後も町内四校の連携した学力づくり等の...

(2016-12-20)  全て読む

小中一貫型CS基本構想案 来年3月、白老中校区で―白老町教委

 【室蘭発】白老町教委は、小中一貫型コミュニティ・スクール(=CS)基本構想案をまとめた。小中一貫教育とCSの二つの機能を合わせたもので、来年三月から白老中学校区において導入。義務教育九年間...

(2016-12-19)  全て読む

Pick Up 2016②札幌市教委―普及啓発・制度理解が鍵に 事務職員の事務「共同実施」試行控え 来年4月から50~60人が参加

 学校事務職員―。学校における「ヒト・カネ・モノ・情報」にかかわる事務全般を取り扱い、学校の円滑な経営を縁の下で支えている。学校にとってなくてはならない存在だが、小・中学校では一校に一人の配...

(2016-12-19)  全て読む

東川町学社連携推進協議会 食農教育で農水大臣賞 豊かなむらづくり全国表彰

東川町学社連携推進協農水大臣表彰  【旭川発】東川町学社連携推進協議会(青木哲也会長)は、農林水産省の第五十五回豊かなむらづくり全国表彰部門において、農林水産大臣賞を受賞した。体験農園を活用した「田んぼの学校」などの食農教育...

(2016-12-16)  全て読む

小中いじめ等防止合同サミット―帯広市教委 思いやる心で根絶を 自主制作CMの上映など

いじめ・非行等防止合同サミット  【帯広発】帯広市教委といじめ・不登校・非行等に関する対策委員会は七日、帯広市役所で二十八年度第二回市内小中学生いじめ・非行等防止合同サミットを開催した。市内小・中学校の児童生徒や引率教諭な...

(2016-12-16)  全て読む

いじめに組織的対応を 冬季の指導重点を通知―札幌市教委

 札幌市教委は九日、「命を大切にする指導の充実および冬季における幼児児童生徒の指導について」の通知を市立全学校・園の教員に向けて発出した。冬季における指導の重点を挙げたほか、かけがえのない子...

(2016-12-15)  全て読む