道中理事研―赤岩会長のあいさつ
(関係団体 2017-02-22付)

 道中学校長会が十七日に開いた第六回理事研修会における赤岩輝雄会長のあいさつ概要はつぎのとおり。

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 本日は年度末を迎え大変お忙しい中、全道各地から集まっていただいた。校内のことはもとより、各地区校長会の運営・推進に尽力をいただいていることに、あらためて厚く感謝申し上げる。

 道中は本日の理事研修会が年度を締めくくる最終の理事研修会だが、各地区においても、今年度の総括と次年度に向けた諸準備、あるいは事務局の選任等着々と進められていることと思う。

 私自身、今年度は会長として、宗谷地区、上川地区の地区教育経営研修会、道東六地区の五ブロック研修会、また、空知、胆振、日高地区の四ブロック研修会に参加し、それぞれの校長会が抱えている課題に真摯に向き合っている多くの校長先生方と交流させていただいたが、あらためて組織を動かすのは人であり、同じ校長という職責を担う者同士が意見を交わし、心を通わせることが、道中という組織をより確かなもの・強固なものにしていくのだと実感することができた。また、その他の会合等でも多くの校長先生方に声をかけていただき、大変感謝している。あらためて、道中につながり、ともに支え合ってきた皆さんに心より感謝し、お礼を申し上げる。

 私が受け取った道中会長のバトンは、本日をもってつぎの新会長につなぐことになるが、本年度、合言葉にしてきた、「つながり、ひらく道中」に込めた「進んで全道各地区、各会員とつながり、思いを重ねることで、本道の子どもたちの明るい未来の扉を開き、新しい道を拓く」との思いはまだまだ道半ばではあるが、つぎの新会長にしっかりとバトンを渡すべく、本日の理事研修会をつつがなく終えたいと思う。どうぞ、皆さんの理解と協力をお願いする。

 さて、今年度を振り返ると、道内では記録に残る台風被害があり、また、教育界では教育改革の本丸と言える次期学習指導要領の告示に向け最終段階を迎えた一年間だった。まず、この二つについてふれたいと思う。

 昨年八月中旬から本道を襲った四個の台風は、道内に甚大な被害をもたらした。特に、三十日に観測史上初めて岩手県に上陸した10号はその後も北上を続け、三十一日には道内で空知川・札内川の堤防が決壊、芽室川・ペケレベツ川が氾濫するなど、流域の南富良野町、帯広市、芽室町、清水町では浸水や家屋の流失、電気・水道・交通といったインフラの停止が発生した。

 多くの生徒の家庭ばかりではなく、校長を含めた教職員の家庭にも大きな被害があったと聞く。二学期が始まり、授業はもちろんだが、大きな行事や、部活動の新人戦大会、また、各種の研究大会等の取組や準備が進んでいた最中の被災だった。緊急時の対応に追われ、インフラの復旧が十分ではない中での授業や諸活動の調整等に大変な苦労をしたことと思う。あらためて地域・行政と一体となった防災・緊急避難・被災後の情報収集と対応・避難所運営の在り方等について、校長として身に付けておかなければならないことの重要性に気づかされた出来事だった。道中では被災直後から各地区の被災状況を収集し、全地区に配信したほか、道教委や教育関係団体等への情報提供、全日中への被害状況の報告等に努めたが、これらの取組を記録として残し、今後に生かしたいと考えている。

 つぎに、教育界では、次期学習指導要領の改訂に向けて、昨年八月に中教審より「審議のまとめ」が発表され、十二月には答申がなされた。年度内にはいよいよ次期学習指導要領が告示される運びである。

 これから迎える二〇三〇年という少し遠い将来の日本の姿を想像すると、グローバル化、情報化、技術革新の急速な普及・進化に伴い、今まで私たちが経験してこなかった社会の変化が容易に予想される。次期学習指導要領の最大のコンセプトは、先が見通せない変革し続ける社会を生き抜く力を子どもたちに社会総がかりでどう育てるかの「学びの地図」を描くことにあると私は理解しているが、これまでは「社会に開かれた教育課程」「育成すべき資質・能力」「アクティブ・ラーニングの視点からの授業改善」「カリキュラム・マネジメントの確立」といったコンテンツの理解に軸が置かれていたように思う。これらの新たなコンテンツについては各方面で取り上げられ、論じられているところであるが、校長としてはより統合的な視点に立ち、時代や社会の文脈に置くことで見えてくる「学びの地図」としての側面に着目する必要があるのではないかと考える。言い換えれば、グローバル化が進む現代社会を生き抜く力を身に付けた子どもたちが、将来、「持続可能な社会」の担い手として地域を支え、よりよい社会を創るという「地域創生」の視点である。

 地域の教育を担うということは地域の将来に責任をもつということでもあるが、道内では、すでに九十近い市町村に中学校は一校しかないというのが実態である。まさにそうした自治体では学校教育と町の将来を切り離して考えることができない状況にあると言える。

 道内では今後、どの地域でも義務教育に課せられた教育の機会均等・教育水準の維持向上を果たしながら、地域との協働的な交流を通して次代を担う人材を育てるという視点が重視されると考えられる。そのためには、「学びの地図」としての学習指導要領を「ローカル(地域)」の視点から読み解くことで自校の「社会に開かれた教育課程」をビジョン化し、教職員はもとより保護者・地域・行政等に示していく力が必要になる。校長の経営力もこれからは学校への内向きだけではなく、学校の外に向かって積極的に地域や行政と多くのチャンネルをもち、学校の教育活動に必要な専門員や支援をコーディネートするいわば「開き、結ぶ力」が求められると考える。

 先日、全日中の会長・副会長による新春座談会が催され、私も参加してきた。ゲストとして参加された文科省初中局の「ミスター学習指導要領」合田哲雄教育課程課長があいさつの中でつぎのように述べられている。

 「今回の改訂は、一言で申し上げると、わが国の学校教育は浮き足立つことなく、目の前の子どもたちの状況をしっかり見て、子どもたちにとって次代を担うために必要な資質・能力とは何かを見極め、そのような力を確実に育むことに専念していただきたいということに尽きると思っている。グローバル化やAI時代などといわれている、こういう時代だからこそ、わが国の学校教育が大事にしてきた〝不易たるもの〟を一層しっかり固めて前進する必要がある」。

 それに続けて、そのためには条件整備が不可欠であり、その意味では昨年末の政府予算案において義務教育標準法の改正による一部の加配定数の基礎定数化が認められたことの意義を話された。

 また、別に「校長先生方の軸を基盤にした学校マネジメントを支えていただくためであれば、私ども、満身創痍になっても、どんな技を繰り出しても、教職員定数の改善を含む学校の条件整備の充実を行わなければならないと思っている」と述べ、さらに、「永田町や霞ヶ関はもちろんのこと、地方自治体の首長や議会にも働きかけて、今ここで教育に投資をしないと、わが国も地域も立ち行かなくなるということを是非強く訴えていきたい」ともおっしゃっている。

 この新春座談会の内容は全日中機関誌「中学校」二月号に掲載されているので、ご覧いただければと思うが、合田課長が言わんとする二つのこと、一つは、新しい指導方法の導入に浮き足立つのではなく、子どもたちの具体的な状況や実態と、単元において育むべき資質・能力の双方を踏まえながら、習得・活用・探究の学習サイクルをどのように回すかをデザインすることにしっかりと軸足を置くこと、もう一つは、校長として学校の条件整備に向けて自治体を巻き込むマネジメント力を高めること、この二つを貴重な示唆として受け止め、道中の今後の活動に生かしていきたいと思っている。

 本日はこのあと、本年度の活動の総括、さらに新年度の運営の方針等審議していただく。中でも、組織検討にかかる二十九年度以降の道中の在り方について古谷事務局長から提案があるが、この間足かけ三年にわたり、歴代のそして現在の副会長の校長先生方には組織検討委員会の委員として粘り強く、そして真摯に協議をいただいた。ここに厚く感謝を申し上げる。本日提案する内容はいわばこの三年間の集大成と言える。

 組織検討委員会において最も重く、また、大切にした基本理念は、二十九年度の政令指定都市札幌市への税源等の移譲後も「オール北海道」で円滑な組織運営を進めるということだった。特に、二十七年度以降の協議では何度も厚い壁に遮られそうになりながらも、副会長の皆さんの「オール北海道」の運営体制は崩さないという強い思いに支えられながら乗り切ることができた。

 本日の提案内容にはまだまだ調整の必要な課題が含まれているが、次期会長に後を託したいと思う。どうぞ、皆さんの温かい理解と、心からの支援をお願いする。

 結びになるが、二十九年度は、本会の創立七十周年に当たる。研究基本主題「社会を生き抜く力を身に付け、未来を切り拓く日本人を育てる中学校教育」による四ヵ年継続研究も二年目となる。昨年の第五十八回道中研究大会上川・旭川大会の確かな成果の上に九月二十二・二十三日の両日、千歳市で第五十九回道中研究大会石狩・千歳大会が開催されるが、七十周年を祝う記念式典・記念祝賀会と併せて、全道各地区校長会の実践の交流と地区を越えた校長同士の交流を通して、北海道の中学校教育の振興に果たしてきた本会の足跡・役割を再認識し、新しい時代の展望を内外に示す大会となるよう大いに期待している。

 今後とも皆さんの理解と協力を重ねてお願い申し上げてあいさつとする。

(関係団体 2017-02-22付)

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